ジャクソンホール直前の雑感

株式市場がやや頭打ちとなっています。

ジャクソンホールでのイエレン議長、ドラギ総裁の発言を見極めたいとする向きが多い中で、トランプ政権の混乱や北朝鮮問題などの懸念材料があふれているためです。トランプ政権の混乱は、ステーヴ・バノン主席戦略官の辞任、ヴァージニア州のシャーロッツビルでの白人至上主義者と反対派との衝突によるトランプ大統領の発言、米国の債務上限問題と盛りだくさんで、政権の政策進展が懸念されます。

トランプ大統領はなかなか一筋縄ではいかないですね。ただし、熱烈な支持者であるラストベルトの人々の支持を失わないように行動するというところは一貫しています。

さて最近の投資行動について振り返ってみると

5月中旬 FA関連株ロングと自動車株のショートをクローズ
5月末  米国AI関連株ロング、半導体関連株のロング、自動車株のショートをクローズ
6月下旬 米ドルのロング開始
7月初旬 確定拠出年金の株式アローケーションの引き下げ
8月初旬 電気自動車関連ロング、先物ヘッジを開始

自動車株とFA・半導体製造装置関連株
6月の利上げはあるか?
米国バランスシート圧縮下での投資戦略
確定拠出年金の運用
電気自動車関連

これらの投資行動の背景は、目標に達したということもありますが、基本的には株式に弱気で米ドルは強気というとこからきていました。

バランスシート圧縮に伴う金利上昇というシナリオに沿った行動と言えます。しかし、実際には、冒頭のトランプ政権の混乱やインフレ率停滞のために、金利は低下しています。

 

このために現在米ドルのロングポジションは評価損を抱えているわけですが、FRBのバランスシート圧縮の姿勢は変わらないと思いますし、来年以降の利上げ姿勢も変更ないと考えています。

やっぱり中央銀行は、次の景気後退局面での手段を確保したいでしょうからね。またインフレ率についても、強い資源価格の動向から上昇圧力がかかるのではと思っています。

みんなが注目しているジャクソンホールでの発言ですが、むしろ「金融の安定」というテーマからすると、むしろ金融正常化に向けた姿勢を示すかもしれません。金利の上昇、少しだけ期待してみたいと思います。為替はどう動くでしょうかね。

8/26追記 金融政策への言及はありませんでした。そんな中で金利が低下したのは私みないなのが多かったからなのか? まだ暫く我慢といったところでしょうか。 

米国インフレ率の低迷

現在のポジションは、長期保有のバイオ株のロング、ペアトレーディング型のロング・ショートと打診的にとった電気自動車関連のロングと先物ショートポジション、ドルのロングポジションとなっています。電気自動車関連は、目標の20%程度のポジションでこれからチャンスを見て増やしていこうと思っています。

問題はドルのロングポジションですが、目標の半分程度買って様子見しています。米国のバランスシート圧縮のシナリオから、米国金利上昇、株式の調整を睨んで、ドルの買い入れ、米株の売却を行ったわけですが、裏目に出ています。最大の誤算は、米国長期金利が低下していることです。

これは最近のインフレ率が低下してきているためです。このインフレ率の低下により、バランスシート圧縮開始が予想されているにもかかわらず、物価の安定を目標とするFEDが利上げの手を緩めるのではないかといった見方から、金利が低下しています。7月には半々であった利上げの予想確率も40%程度まで下がっています。

利上げについては、バランスシート圧縮を開始するために年内の利上げが見送られる公算が高いと想定していましたが、市場の利上げ期待は維持されるものと思っていました。問題は「インフレ率の低下は今後も続くのか」ということでしょう。

クリーブランド連銀のメスター総裁によると「処方箋や携帯電話の契約プランなどの分野におけるインフレ率の低迷は、数か月居座るだろうが、こうしたものは通常、消費者物価全般におけるダウントレンドを示唆するものではない。」ということで、一時的なものであるとFEDは認識しているようです。

結論

他の経済指標や原油価格の動向との整合性から、個人的にも同意したいと思います。大きな上昇はないにしても、今後も継続して、これほどインフレ率が低迷するとは思えません。

従って、現在は北朝鮮問題によるリスク回避の円高とECBの量的緩和政策の転換期待からドルが売られやすい状況となっていますが、ドルロングの残り半分のポジションは、9月FOMCでバランスシート圧縮が開始されたときに実行したいと思います。

また米国の株式ですが、企業収益の伸びはまずまずであることから、大きな急落はないと考えています。しかしながらトランプ政権の減税、インフラ投資政策の遅れから、まだ暫くは調整が継続するものと思っています。

電気自動車関連

イギリス政府は、7月26日、大気汚染対策のため、23年後の2040年から、全てのガソリン車とディーゼル車の新車の販売を禁止する計画を発表しました。また、トヨタ自動車は、2020年までに電気自動車(EV)の量産体制を整え、EV市場に本格参入するとの発表し、日本電産の永守社長は、7月26日の決算発表時に「自動車はすべてEVになっていくだろう。」と話しています。米国では、電気自動車のテスラモータースの時価総額がGMのそれを上回り、電気自動車の将来に対して高い期待がかけられている状況です。

内燃機関からモーターへ

EVといっても色々な種類がありますが、何がスタンダードとなるのかが問題です。世界的な覇権争いが起こっている状況なので、現時点での予測は困難です。しかしながら、いずれの場合でも重要なパーツは、モーターと電池ではないでしょうか? 幸いにもこれらの要素技術では日本企業が高い技術力をもっています。一方で、内燃機関部品関連の企業にとっては、死活問題となってきますね。テーマとしては長いものになると思いますので、多数の関連銘柄から徐々に絞り込んで投資していくことが良いのではないでしょうか。小型株の中から面白そうな銘柄をいくつか紹介します。

モーター関連

  • 7726 黒田精工 モーター回転部の「モーターコア」の供給メーカー
  • 6966 三井ハイテック 「モーターコア」の供給メーカー

電池関連

  • 4080 田中化学研究所 リチウムイオン二次電池の正極材 住友化学との共同開発、同社株を追加取得している。
  • 6619 ダブルスコープ リチウムイオン二次電池用セパレータの製造・販売が主たる事業。日本、韓国、中国及び米国に拠点を置いている。
  • 7271 安永 リチウムイオン電池の正極に微細な加工を施し、リチウムイオン電池の寿命を約12倍向上させることに成功したと発表した。

上記を含めて、タイミングを見てポジションをとって行こうと思います。

オバマケア改廃再び

18日、米上院共和党による医療保険制度改革(オバマケア)改廃への取り組みは、新たに党内から2人の造反が出たことで頓挫しました。

減税、インフラ投資といったトランプ政権が掲げる成長戦略の実施についても不透明感が高まったことで、トランプ政権の政策実現能力に再び疑問が生じ、金利低下、ドルが売られる展開となりました。

共和党のマコネル上院院内総務は、代替法案の可決が見込めなくなったことで、まずオバマケアを廃止する法案の採決に踏み切る構えを示しましたが、これも反対する議員が出てきたことで困難な状況にあります。オバマケアの廃案は共和党の悲願であるにもかかわらず、こうした状況になるのは本当に問題だと思います。

先日のイエレン議長の議会証言でのハト派な態度、弱い物価指数、小売り売上高と米ドルにとってはネガティブな状況となっています。一方で、株式市場は利上げの遅延期待から高値を更新しています。株式が上昇しているということは、トランプ政権の政策実現能力のなさについては、株式市場参加者は織り込んでるということなのでしょうか。

米国のバランスシート圧縮に伴う、金融引き締めを警戒して、株のポジションを落としたわけですが、本当に売り場は難しいですね。今回も早く下車してしまったようです。ドルもFOMC後の水準近くまで下がってきました。ほぼ買コストの水準です。

2017年6月FOMC

米国バランスシート圧縮下での投資戦略

ただし、弱いインフレ指標、強い株価の組み合わせには違和感があります。またFRBは、年内の利上げを見送るかもしれませんが、バランスシート圧縮は進めるのではないかと思っていますので、現状のポジションを維持していきたいと思います。

 

FOMC後の金融市場

6月15日に報告したように、バイオ株のロング以外のポジションをクローズいたしました。その後、マーケットリスクを抑えたロング・ショートポジションを若干増やしていますが、中々投資アイデアが浮かんできません。待つのも相場ではありますが、しばらくは我慢といったところでしょうか。

各資産のその後の動きを確認してみます。

米国長期金利

FOMC以降にわかに上昇してきました。現在2.3%の水準です。利上げ継続とバランスシート圧縮の開始を行うということで、反発しています。トランプ政権のインフラ投資・減税期待で大きく上げた長期金利ですが、政権の混乱に伴う期待の剥落で低下してきましたが、マネタリーベースの縮小に向かって上昇してきました。

株式

いまだに高値圏にありますが、ここ数日調整しています。ハイテク銘柄の多いNASDAQや欧州市場の調整はさらに大きなものとなっています。ここにきて不穏な動きですね。長期金利の上昇は株式にとっては基本的にはマイナス。企業業績の大幅の上昇が見込めるような景気拡大期の長期金利上昇は、業績期待で株価上昇もありえますが、はたして企業業績の拡大が金利上昇に打ち勝つことができるでしょうか?

円ドルレート

こちらもFOMC以降ドル高に振れています。金利上昇を警戒した株安のときには、リスクマネーの巻き戻しで円高にふれますが、トレンドで見た場合は、長期金利に沿った動きになるのではないでしょうか。米国マネタリーベースの縮小とともにドル高が進むとみています。

まとめ

今のところ、FOMC後に想定した動きになってきいます。今後もFEDが政策を変更しない限りは長期金利は上昇していくのではないでしょうか。雇用が良くても賃金が伸びない状況にも関わらず、賃金上昇による消費拡大を警戒した金融引き締めは、行き詰まるとみています。

為替も基本的には、株式の大幅な調整が起こるまでは、ドル高が進むのではないでしょうか。長期金利がさらに上昇していった場合には、最終的に株価の大幅な調整もあり得ると思います。その前にFEDが引き締めを緩和するように方針転換することを望んでいます。

米国の経済状況とFEDの姿勢を確認しながら、戦略を考えていきたいと思います。