アップル下方修正を考える

1 月 2 日にアップル社のティム・クック CEO が株主宛てに送った書簡によると、昨年 10-12 月期の売上が、2 か月前の見通しの「890~930 億ドルから 840 億ドル程度になりそうだ」と下方修正を伝えた。要因は中国市場の弱さで、中国経済の減速が予想以上に深刻だという見方は、この後に中国人民銀行の大幅な預金準備率の引き下げに裏付けられる。

さらにiPhone の需要が予想以上に弱いということが背景にある。やはり高価格化に対する消費者の嫌悪があるのではないだろうか。登場から10年が経過し、低価格な製品も登場、市場が成熟してきたということである。

また、対中国貿易戦争は、トランプ政権が仕掛けたという構図で語られることが多いが、本質は米国の対中観の変化してきたことだろう。トランプ大統領ということではなく、国家の意思に基づくものではないか。かつて西側諸国は、中国が豊かにになれば、民主化が進み、市場が開放されると想定していたのだろうが、豊かになっても一党独裁は続き、軍事的にも脅威を与える存在になっている。従って単なる貿易の不均衡の是正ということが目標ではなく、5Gに代表されるような次世代の技術の優位性を維持するために、技術・情報の機密を確保するための交渉が目的である。

先週、米中は北京で次官級の通商協議を行い、トランプ大統領は 「中国との協議はとてもうまく行っている!」とツイートしたが、あまり期待を抱かない方がいいのではないか。この対中強硬姿勢はトランプ大統領というよりも、議会がリードしているし、安易にディールすることは無いだろう。

かくして、アップルの業績を支えてきた「高品質だが安価な製品を作る」という「グローバリズム」のビジネスモデルも変更を余儀なくされる。

市場の成熟は、株式バリュエーションの低下を促すために、業績の悪化以上に株価の下落を大きなものになるだろう。

APPLE株価

日本には多くのアップル関連企業が存在するが、 これまではアップルによって大きな恩恵を受けてきたが、アップルのビジネスモデルの変更によっては、大きな影響を受けることになるのではないか。

今後のアップル社の動向に注目していこうと思う。

パウエル議長と中立金利

世界同時株安が続いている。

米国株式(S&P500)

米中貿易戦争、ブレグジットと材料に事欠かないが、本質は世界的な量的緩和の修正が原因である。欧州、日本は未だ緩和を継続しているが、米国は一足先に金融引き締めへと舵を切った。欧州・日本の緩和余地は少なく、将来の政策手段を確保するために米国のように早く金融正常化に向かいたいところではないか。米国にとっては欧州・日本が緩和を継続している隙に正常化させたいと考えているはずである。

しかしながら米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は11/28日、ニューヨークで講演し、景気を過熱も冷やしもしない「中立金利」を「わずかに下回る」との認識を示した。10月には金融政策について「中立まで長い道のりがある」と警告していたが、金融引き締め姿勢を大きく後退させた。

傍から見ると、トランプ大統領からの金利が高すぎるとのプレッシャーに屈したと見られるが、そうみられても仕方がない状況で、変節をみせるのは大したものではないだろうか。経済学者ではない実務家の議長であるところを見せたと言えるだろう。

では政策金利は中立金利をわずかに下回る程度なのだろうか。中立金利といえばテーラールールが有名であるので参考にしてみたい。アトランタ連銀が親切にもテーラールールに基づくレートを提供してくれており、過去の実際の政策金利との動きを見ることができるために、現状の政策金利の水準感をつかみやすい。

パウエル議長が言うように「わずかに下回る程度」には見えない。寧ろ、将来の景気に対する不透明感を議長自身が示してしまったものと捉えられる。

今後の方針

このパウエル議長の認識の変化は、来年の「利上げ停止」のシナリオに沿ったものであり、戦略の継続に変更はない。反発局面でさらにポジションを上乗せしたために、ほぼ株式の売り建てポジションは完成した。ドル円レートが思いのほか円高に進んでいないのは、ブレグジットの混乱と武田薬品のシャイアー買収(6兆円!)の思惑が原因と考えているが、徐々にドル安圧力が高まるのではないかと期待している。

ようやく株安、円高、それでも戦略はかわらず

ようやく株価が下落してきた。特に何も新たな材料がない中での急落であったため、市場関係者は、中国との貿易懸念やすでに高くなっていた金利に原因を求めている。然るに「ファンダメンタルズは堅調であり、急ピッチの上昇の調整の範囲内」などと解説している。

日経平均

米国株式

市場関係者が言うように、2月と同じように急ピッチな上昇の調整となる可能性もあるが、これまでのバブル崩壊のパターンと同じように、ある日何事もなく株価が調整を始めたと考えるのが妥当ではないか。

2月の急落では3%を超えた長期金利も同時に低下したが、今回の急落ではそれほど低下していない。これが株価の急落にかかわらず、ドル円レートが大きく円高に向かわない理由でもあるが、長期金利が低下しない以上、株価の調整は続くのではないか。

ドル円レート

米国のバランスシート圧縮と利上げは、確実にリスクの高い資産から資金を還流させている。

2018年2月株式急落後の市場動向概観

2月の株式市場の急落後、大きなボックス圏での推移を予想していましたが、3か月経過した現在の状況を確認してみたいと思います。まずは株式市場から

日経225

S&P500

3月23日を底に、2018年度3月期の決算発表をこなし、反発してきた株式市場ですが、ここにきて再度売られる展開となっています。きっかけは、イタリアでの政治不安といわれていますが、個人的には、それは単なる口実で、米国の長期金利が3%を超える水準で推移していたことが原因と考えています。3%超える長期金利の水準は、世界の先進国が超低金利を余儀なくされている状況では、非常に魅力的であるので、何かをきっかけとして株式などのリスク資産から債券へのシフトが起こるわけです。

リスクオフの動きと同時に円高となるのは、円が安全資産であるわけでもなく、世界の通貨でもっとも調達金利が低いために、リスク資産への投資のために円で調達された資金が還流するために円買いが起こると考えた方が自然です。実際にそうした動きが必ず出るわけではないですが、市場参加者がそのように考えるために、”パブロフの犬”のような行動となるのではないでしょうか。

円ドル

さて、現在最も重要な米国長期金利の動きです。

米国国債10年

5月の後半には、3%を大きく超えて推移していた金利ですが、北朝鮮問題、イタリア問題をきっかけとして急落しました。長期金利が3%を超える状況になれば、何かをきっかけとしていつでも急落する状況が続くと思います。

では、今後の金利の見通しですが、次回FOMCでは予想通り利上げが行われると思っています。問題は年何回の利上げになるのかというところでしょう。

ただし、一番金利上昇圧力をかけているのは、バランスシート圧縮の効果だと思います。巨大な引き受け手を失った米国債券の入札は常に金利上昇圧力を加えています。またいずれ金利は3%を超えてくる状況となるのではないでしょうか。

経常赤字国の新興国通貨が暴落するなど、静かに影響がでてきています。株式への投資の警戒を継続します。

世界同時株安後の動向と今後の方針

これまでリスク資産に対し弱気な立場を取っていますが、今後の方針について考えてみたいと思います。

2月初旬に始まった世界同時株安の動きですが、想定通り急落後大きなボックス圏をつくってきているように思います。

SP500

NK225

日本の株式については、為替が円高に振れており、米国に比べて下値を切り下げていますが、日本の経済にとって自力で上向くほどのドライバーがない現状からは、仕方ないのかもしれません。

麻生大臣ではないですが、TPP11発動よりも”もりかけ”問題にクローズアップするマスコミや知識人のピントのぼけた対応が象徴的です。

日本固有の問題としては、北朝鮮問題、消費増税が今後控えていますが、どれも世界経済を牽引するような話ではなく、むしろ劣後させるようなものなので、まだ当面は世界経済を念頭に置いた考えでいいのではないでしょうか。

さて、急落のきっかけとなった米国長期金利の動きですが、ここにきて低下してきております。株式の下落を受けて債券を買う動きがでたためです。

では、長期金利が低下しているので、リスク資産を今後も買っていけるのでしょうか?

基本的には米国経済は順調に推移しており、金利上昇の影響が住宅や自動車などの耐久消費財の消費行動にでてくるのはまだ先だと思います。従って、FEDは予定通り年3-4回の利上げを敢行していくものと思われます。

こうした状況では、政策金利に近い短期金利の上昇により長期金利へと上昇圧力が加わってくるのではないでしょうか。

したがって景気後退時によく現れる逆イールド(短期金利が長期金利を上回る状態)の状況はまだ先であると言えます。株式はまだ積極的に買えないと思っています。

今後の方針としては、

  • 長期金利が3%を超える状況。
  • 米国の消費動向に金利上昇の影響が現れ、FEDの引き締め策が緩和される状況。
  • 株式の大幅な下落により、FEDの引き締め策が緩和される状況。

以上のいずれかの状況までは、現状のリスクオフポジションを維持したいと思います。今後3-6か月後を想定していますが、リスクオフポジションでのリターンはそれほど大きくとれるとは思っていないので、ある程度利益が出てきたら、順次利益確定したいと考えています。大きくリターンを取るのは、その後の金融緩和ポジション(リスクオンポジション)でと期待しています。

確定拠出年金のポジション

昨年の7月にお伝えした確定拠出のポジションですが、すでにリスク回避的なポジションにしているため、変更はありません。

確定拠出年金の運用

少しリスク回避のタイミングが早かったことが反省点です。次のリスクオンのタイミングに集中して、挽回したいと思います。

GPIF基本
ポートフォリオ
自分の平常時
ポートフォリオ
現状の
ポートフォリオ
国内債券 35% 20% 10%
グローバル債券 15% 20% 10%
新興国債券 5% 0%
国内株式 25% 25% 15%
グローバル株式 25% 25% 15%
新興国株式 5% 0%
短期資産 0% 0% 50%

注1)GPIF基本ポートフォリオ:GPIF(Government Pension Investment Fund 年金積立金管理運用独立行政法人)が策定しているポートフォリオ。
注2)自分の平常時のポートフォリオ:私、オーバーフィフティが、現在想定している基本ポートフォリオです。

個人の主観によるものですから、あくまでもご参考に。今後も変更のたびにお伝えしていこうと思います。