一般教書演説

2月28日のトランプ大統領の一般教書演説(就任初年度は議会合同演説というらしいです)に注目が集まっています。焦点は、驚くべき減税策の内容や国境税でしょう。しかもこの演説が、日本時間で3月1日(水)の午前11時から始まるということです。Brexitも大統領選挙も同じ状況でしたね。最初に日本市場が試されるというのは勘弁してもらいたいものです。

減税・国境税

トランプ大統領が言っている法人減税15%が本当に実現できるのか?ですが、税制を決めるのは議会ですから、トランプ大統領がいくら言っても、実現できるかわからないのです。

ただ、大統領が明確に方針を決めて、閣僚に共和党主流派を取り込むなど議会対策も行っていることから、何もできないと決めつけて冷めた視線を向けるのはリスクがあると思います。たぶん演説では、具体的な数字の入った内容は出てこないと思っていますが、大まかなアウトラインを示すに留まるのではないでしょうか。

減税の財源として、国境税を導入することが考えられます。消費税のない米国では国境調整税と呼ぶのかもしれませんが、輸入に課税、輸出は非課税ということになりますので、米国消費者には増税、インフレ要因になりますし、貿易赤字縮小ということから、ドル高ということになります。つまり法人税減税は、企業業績を伸ばすことから株高となり、国境税はドル高をもたらすと考えられます。

米国株はこれを期待して上がっているのですが、長期金利の上昇は途中で止まっています。市場はトランプ政権の政策について疑問視しながらも企業にはプラスと考えているということでしょうか。昔から株式投資家は楽観的で債券投資家は慎重な人が多いので、こういうことがたまにあります。大体において債券投資家の方が正しいのですが、今回はどうでしょうか。

いずれにしても、米国の金利動向が、為替、株の動向を決めると思われます。現在の金利水準は、米国株にとって高過ぎる水準ではないと思います。演説の内容にもよりますが、材料出尽くし、期待はずれで大きく株式が下落するようであれば、買い向かってもいいかなと思っています。

超長期債の発行は株式にとってはリスク?

しかし、大きなリスクとなり得るのが、ムニューチン財務長官が言及した超長期国債の発行です。この低金利を利用してインフラ投資、減税の財源として発行することは、非常に合理的で正しいことだと思いますが、発行した場合の利回り水準次第では、株式のバリュエーションとの比較から、株式からの逃避が始まるトリガーになるかもしれません。

発行に際し、当初、株式はインフラ投資、減税の実現可能性の向上から、上昇すると思いますが、その後大きな下落が待ち受けているかもしれません。これには今後も大きな注意を払っていきたいと思います。

対ロシア政策

2月13日に、大統領補佐官で国家安全保障問題を担当していたマイケル・フリン氏が辞任しました。その後、国務省ティラーソン長官、国防省マティス長官、マクマスター新大統領補佐官らが、相次いでロシアに対する強硬的な発言を行っています。

当初、トランプ大統領は、対ロシア経済制裁解除を示唆し、親ロシア政策を実行するものとみられておりました。これを根拠にロシアルーブルの上昇、金利低下に賭けてロシア国債への投資を行っています。

しかしながら、上記の政権内でのロシア強硬論の広がりを見るにつけ、トランプ政権の親ロシア政策が揺らぎはじめています。同時に減税政策に関してトランプ大統領の発言とムニューチン財務長官の発言のかい離から想像するに、困難な問題へのトランプ大統領の実行力に疑問を持ちはじめました。

したがって、残念ではありますが、ロシア国債への投資を一旦終了したいと思います。為替では若干の利益ですが、金利がやや上昇したためにローカルベースでは若干のマイナスです。トータルはプラス・マイナスゼロといったところです。一か月足らずでの撤退ですが、前提が変化してきている以上仕方ありません。

トランプ大統領自身は親ロシアの意欲は失っていないようなので、今後も米国の対ロシア政策に注視し、再度エントリー可能かを探っていきたいと思います。

 

2017年2月FOMC

トランプ占い

トランプ大統領が、ツイッターで何を発言するかわからないことから、それを占うってことでこのような言葉がはやっています。ほんとに困ったことです。

しかし「難民もしくはテロ懸念国を対象にした入国禁止措置」はいけませんね。なぜ7か国なのかという一貫性もないです。はやく減税と財政出動を具体化させてくださいって思います。この大統領の国と付き合っていかないといけないのかと思うとストレスが溜まります。

ブログをトランプ大統領の就任期間より長く続けるという目標を掲げましたが、弾劾とかで短命に終わるかもしれないので意外と楽勝だったりして。もちろん、その場合は、直ちにポジション解消し、見通しの変更を行います。

政策金利維持

米連邦準備制度理事会(FRB)は、1月31、2月1日にかけて連保公開市場委員会(FOMC)を開催し、現状の政策金利維持を決定しました。決定は全会一致。

政策声明はわずかながらにタカ派的で、11月と12月に声明に比べるとややタカ派色は弱くなったように感じます。

具体的なトランプ大統領の財政政策がまだ見えない中では、様子見といったところではないでしょうか。

ISM景況感指数やADP雇用統計など、強い経済指標が示されていますが、トランプ政権が選挙期間中に言っていた財政刺激策を実行できるのかどうか、懐疑的な見方が広がっているため、ドルの上昇は抑えられていると思います。円ドルに関しては少し辛抱は必要なようです。

第4四半期米国GDP

米商務省が27日発表した2016年10~12月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、前期比年率換算で1.9%増。もともと事前予想も2.2%と前四半期の3.5%から鈍化する見通しでした。予想を下回る結果となりましたが、為替市場に大きな変動もありませんでした。

トランプ政権が大型減税や財政出動の方針を掲げていますので、今後の期待からか、若干の未達は見逃してくれたようです。

個人消費

大きなウエイトを占める個人消費ですが、2.5%増となりました。前期の3.0%増から伸びがやや鈍りましたが、及第点でしょう。懸念していたモノ消費も5.2%増と好調でした。

固定投資

設備投資は2.4%増。原油価格の回復により関連投資が増えたためです。3四半期連続となり、底堅さを見せる結果でした。住宅投資は10.2%増と大幅なプラス。金利の下げ止まりの影響からか、2四半期ぶりにプラスに転じました。まずまずの結果ではないでしょうか。

輸出入

輸出は、4.3%減、輸入は、8.3%増。輸出は、前期の気候要因による大豆輸出の急増の反動ということですが、大統領選後のドル高の影響も考えられるでしょう。トランプ政権の為替牽制の材料にされなければいいのですが。

まとめ

・米国GDPは、1.9%増。コンセンサスを下回ったが大きな懸念はない。
・個人消費は及第点。モノ消費が増加。
・設備投資もまずまず。住宅投資は上振れ。
・輸出の減少が懸念材料。

1月24日にエントリーしたドル円ロングですが、当初は、予想を下回る結果が出る可能性もあると考えて、少し警戒していましたが、この内容だと問題はなさそうですね。来週はFOMCですが、利上げ見送りとなるのではないでしょうか。多少、タカ派的なニュアンスを出すと思います。

2017年市場見通し メインシナリオ

世界経済の予想
今年の経済予測は非常に難しい。世界経済を牽引する米国経済が、トランプ政権によって、どのように推移するのかが読めないためだ。トランプ大統領の掲げる減税、大規模財政支出、規制緩和、移民規制、保護貿易政策の効果をそれぞれ考えてみたい。

トランプノミクスその1・・大規模な減税、規制緩和、インフラ投資
これらの財政資金のばらまきは、一時的な成長率のかさ上げに寄与するだろう。金融規制の緩和は、中小企業や起業家の資金調達に寄与し、減税と相まって設備投資を後押しすることになる。特に減税は、停滞していた企業収益を引き上げ、高値で推移する株価の支えになりえる。2018年半ばまでは政策効果が続くのではないか。
ただし、こうした財政支出は、本質的には将来の需要の先食いなので、潜在的な成長率を大きく改善する可能性は低い。米国経済の雇用状況は非常に堅調であるため、財政で景気を刺激すると金利の上昇に見舞われることになる。

トランプノミクスその2・・移民規制、保護貿易
停滞している世界経済の中で、唯一、堅調な経済を持つ米国の強みは、比較的良好な人口動態にあるだろう。移民規制を強化することによって、この人口動態に変調をきたす可能性がある。
また、保護貿易政策により、生産拠点が米国に回帰する。米国内で生産が増えると、景況感は大きく改善しよう。ただし、結果的に割高な商品が増えることによって、インフレが加速することになるだろう。もちろん、家計にとってはマイナス。保護貿易は長期的に経済には良くない。

トランプノミクスその3・・財政赤字・エネルギー
財政赤字については、当面は拡大が避けられないだろう。しかし、インフラ投資銀行の設立等により、極力抑えることになるかもしれない。環境・エネルギーについては、温暖化対策計画撤廃、石油の国内生産拡大の方針。だがOPECの減産合意もあり、原油価格の大幅な下落はないのではないか。景気拡大による需要増は、米国シュール企業にとってプラス。

2017年のトランプノミクス
こうしてみると、2017年から2018年にかけては、非常に力強い経済指標が出てくることが予想される。企業業績も停滞から脱出し、株価に見合ったものとなるだろう。米国連邦準備理事会(FRB)も、年2~3回の利上げを行うに違いない。財政支出と金融引き締めは、レーガノミックスの初期と同様にドル高圧力を増すことになる。
これらのことから、日本独自の経済成長要因は今のところ無いに等しいため、日本経済は好調な米国経済に牽引される形で推移しよう。結果的に年内の市場環境は良好に推移するのではないだろうか。

為替:17年後半にかけて125円に向かう。
米国金利:10年国債金利で3%程度まで上昇。
米国株価:金利2.8%程度までは、堅調に推移する。
日本金利:ゼロ金利政策継続により、低位安定。
日本株価:米国株式×ドル円レートに連動。
と予想する。

リスク要因
欧州では、極端な金融緩和による銀行業や年金などへの悪影響の広がりで、ECBへの批判が強まっており、ECBが緩和縮小に動けば、世界的な長期金利上昇のリスクとなろう。春にはフランス大統領選、秋にはドイツの総選挙が予定されている。世界的な反グローバリズム、ポピュリズムの流れの中で、移民規制、保護貿易、拡張財政が唱えられ、新たな地政学リスクとして捉えられる。

さらに新興国については、資本流出圧力にさらされるだろう。トランプノミクスによる拡張財政のため、ドル上昇とともに、中国からの資本流出圧力がさらに強まる。資本規制、元買い介入が予想されるが、中国当局は大幅な元の切り下げに追い込まれるかもしれない。元の大幅な切り下げの結果、新興国通貨も大幅に減価するだろう。一時的なリスクオフによる円高・株安のショックがあるかもしれない。

長期的なリスク要因
長期的には、先進国の人口動態に基づく、または債務の長期サイクルによる、恒常的な低成長トレンドからの脱出は困難に思える。もともと、米国経済の景気拡大局面は成熟局面にあり、良好な雇用による消費の回復が見られるものの、自動車販売や設備投資などはすでに減速していた。トランプノミクスによって一旦回復するが、積極財政は需要の先食いであり、大きく潜在成長率を改善させることは困難だろう。むしろ移民規制や保護貿易は、潜在成長率の低下を招く。金利上昇とドル高の継続によって、トランプ景気は長く続かないのではないか。恐らく18年中に何らかの変調をきたすかもしれない。

問題は、マーケットがこのトランプ景気の終焉をどこで織り込むかであろう。見るべき指標は米国長期債金利の水準。米国長期債金利が3%程度まで上昇した場合に株価が高値圏にあれば、一旦リスクオフを考えてみるべきなのだろう。