第1四半期米国GDP

米商務省が27日に発表した第1・四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率換算で前期比2.3%増となりました。

事前予想の2.0%を上回る結果となりましたが、個人消費が5年ぶりの低い伸びとなりました。予想を上回ったことで、為替はややドル高で反応し、個人消費の弱さや前期から減速したことを受けて徐々にドル安方向に動きましたが、総じて金融市場には大きな動きをもたらしませんでした。

では、いつものように、内容を確認してみましょう。

個人消費

米経済の3分の2以上を占める個人消費ですが、1.1%増と前期の4.0%から大きく減速しました。これは2013年第2四半期以来の小幅な伸びになっています。自動車や食料品の伸びが鈍化しましたが、雇用環境は完全雇用に近く、第1四半期の雇用コスト指数統計では、賃金・給与の伸びが11年ぶりの大きさとなっており、違和感があります。GFC(グローバル・フィナンシャル・クライシス)以降、季節調整の影響で第1四半期に鈍化する傾向がありますので、正確に経済実態を表していない可能性もあります。今後現れるであろう減税の効果と金利上昇の影響を勘案してみていく必要があると思います。

固定投資

設備投資は6.1%増。前期の6.8%から減速しました。これもまた金利上昇の影響を受ける項目です。また原材料価格の上昇もマイナスに作用することになります。企業減税による効果とのせめぎあいになると思います。

住宅に関しても、0.0%と横ばいです。用地と熟練労働者のボトルネックから住宅供給不足となっているようです。これも自動車などの耐久消費財と同様に金利の影響を大きく受けます。

輸出入

輸出は、4.8%増、輸入は、2.6%増。堅調な世界経済の成長とドル安に支えられて輸出は5四半期連続のプラス寄与。また、輸入は個人消費の減速を受けて鈍化しました。この結果、輸出増が輸入増を上回り、GDPの押し上げに働きました。

政府支出

政府支出は、1.2%増。前期の3.0%から減速しました。議会による債務上限の引き上げが行われたので、今後は増加するものと思われます。はたしてトランプ政権によるインフラ投資が政策の俎上にのって大きく貢献することができるのでしょうか。

まとめ

  • 米国GDPは予想を上回ったが、個人消費、設備投資に減速がみられる。
  • 減税の効果と金利上昇の影響の見極めが大事。
  • トランプ政権のインフラ投資の進展によっては、景気減速を浮上させるかもしれない。
  • 雇用環境は年3-4回の利上げを後押し、GDP統計からは利上げを妨げる要素は見られない。

 

今回の個人消費の減速が、単なる季節調整の影響なのかわかりませんが、金利上昇の影響もある程度あるのではないでしょうか。さらに足元では長期金利が3%を超える水準まで上昇してきており、金利上昇に米国経済が耐えられるのかが焦点になると思います。

減税の効果の発現や良好な雇用環境により、金利の影響は限定的とエコミストらは言いますが、低金利環境に慣れた経済にとっては、金利上昇の影響は大きなものになるのではないでしょうか。おそらく耐えられないのではないかと考えています。

3月FOMC

米国FED(連邦準備制度)は、3月20日から21日までFOMCを開催し、0.25%の利上げを決定いたしました。これにより政策金利は、1.5%-1.75%となります。

利上げは事前に想定したとおり。問題は、今後の利上げ方針ということですが、これも想定したとおり、ややタカ派(引き締め)なものとなりました。

今後の金利の方向性を示すドットチャートも、年4回の利上げを想定する委員が増えました。ニュース速報等では、ややハト派(緩和)な結果からドル安に動いたとか報じていますが、はっきり言ってタカ派です。ただし、事前に市場が織り込んでいただけの話だと思います。

また、トランプ政権による保護貿易政策による世界景気の減速を懸念したドル安(円高)の影響が大きかったのではないでしょうか。

こうしたインフレ圧力につながる政策のもとで、パウエル議長(FED)の政策実行は困難なものとなっていくと思われます。

引き続き、株式は買えない状況です。リスクオフポジションは継続し、バイオ株のヘッジとして先物を売り建てしました。

ポジション 状況 方針
バリュー買い・グロース売り 維持
ハイイールド債の売り 維持(資源株の買いを終了)
バイオ株の長期投資 ヘッジを実施

3月FOMCの事前想定

米国FED(連邦準備制度)は、3月20日から21日までFOMCを開催し、21日に新たな金融政策を公表します。

今回は新議長に就任したパウエル議長にとって初のFOMCとなります。就任時にNYの株式下落による世界同時株安に見舞われ、そのかじ取りが注目されています。

パウエル議長自身は、イエレン前議長と同様な姿勢と思われており、若干ハト派(緩和姿勢)と目されています。前回公表されたドットチャート(将来の政策金利の想定)からは、本年3回の利上げを予想する委員がもっとも多く、金利先物市場が9割以上の確率を織り込んでいることから、今回の利上げはほぼ確実と言っていいのではないでしょうか。

今回の注目点としては、年3回と思われていた利上げの回数が、4回となる可能性をどれほど示すかにかかっていると思います。

最近の経済指標(GDP速報、雇用統計、etc)からは、順調な景気状況が示され、トランプ減税による景気浮揚効果も考えると、教科書的な知識からは、よりタカ派(引き締め)なニュアンスにシフトするということが考えられます。

パウエル議長は、イエレン前議長と違い経済学者ではありません。実業界の出身で、専門はプライベート・エクイティです。どちらかというと、その専門性というよりも銀行規制の緩和においてトランプ大統領の意をくみそうというところで、任命されたのではないかと思っています。したがってバリバリの高度なマクロ経済を得意とするメンバーの中にあっては、独自の色を出しずらいのではないでしょうか。

予想としては、ややタカ派的なニュアンスを出してくるのではないかと予想します。ただし、その場合でも、市場はある程度織り込んでいるので、大きな動きにはならないと思います。

暴走するトランプ大統領

とうとうコーンNEC担当補佐官の辞任に加え、ティラーソン国務長官も解任されてしまいました。
ペンシルバニア補欠選挙のために、地元の主要産業である鉄鋼・アルミニウムに関税をかけるという荒業のために、コーン氏が去ったのですが、その選挙も接戦で、民主党が勝利宣言をする始末。

その敗戦をけむに巻くために、ティラーソン長官を解任したんだと思います。まあ、ティラーソン長官は、「いずれ切られる」と思われていたので、大きなショックはありませんでしたが、まさにトランプ劇場です。

こうした状況から考えられることは、

  • 回りを固める人員が小粒になって、YESマン(ウーマン)ばかりになっていく。
  • コーン氏がさり、ゴールドマン人脈は、とうとうムニューチン長官だけになってしまった。
  • → 保護貿易のブレーキがなくなる。
  • → 対北朝鮮問題も曖昧な決着が難しくなった。対中間選挙対策でなんらかの軍事行動をとっても不思議ではない。

資本市場にとっては、リスクが増大する局面になったように思います。

保護貿易は何をもららすか?

まず第一に保護貿易の敗者は、消費者ということです。結局のところ製品価格の上昇により、インフレ圧力が加わり、ひいては長期金利に上昇圧力を加えることになります。

一方で、昨年末に決まった減税により、景気拡大期待からもインフレ懸念が高まりやすい状況です。問題は、大きな財政赤字の拡大です。貿易収支も赤字であることから、資本収支の黒字、つまり米国債を中国、日本などに引き受けてもらう必要があります。

中国などが、米国債の売却をちらつかせば、米国の長期金利は急騰することになり、世界景気にとってはダメージが大きくなります。

保護貿易圧力を米国がかければかけるほど、金利の上昇圧力がますというチキンゲームに突入していくことになります。

ドル相場も、対外債務拡大を受けて、ドル安指向を高めることになるのではないでしょうか。

米国長期金利とリスク資産

2月初旬の株式の下落は、米国長期金利の上昇がきっかけでした。現在は、予想通りボックス圏での動きとなっていますが、金利の水準は変わりなく、取り巻く状況も変わりなく、むしろ上昇圧力を増す方向です。

景気が大きく減速しなければ、よりリスクの高い資産(ハイイールド債など)の調整にとどまるかとも思っていましたが、先進国株式の大幅な調整も考慮に入れざるをえなくなりました。

株式はいまだ買えないと思っています。

 

株式の調整は一時的か?

米国長期金利の急騰に端を発した世界同時株安ですが、一旦の落ち着きを見せています。そもそも下落率でみれば、それほど大きくはないのですが、長らく低い変動性で推移していた中での、急落は大きなショックを与えました。

恐怖指数と呼ばれる投資家の想定する株式の変動率は、一時的に50%を超える水準となり、10%以内で推移していた状況から、大きなジャンプとなりました。40%を超えると大きなショックと言えるので、恐怖指数の面からでは立派な急落と言えます。

米国:恐怖指数(VIX)

さて、株価ですが現在このように推移しています。

S&P500指数

日経平均

急落の要因

そもそも株価はなぜ調整したのか? 米国長期金利の急騰が原因と言われていますが、これは金利が上がれば、株式よりも債券に投資する投資家が増え、株式の下落、金利の低下を促すからです。

事前に長期金利が2.7%-3%を危険水準としていたのは、株式の配当利回り、ハイイールド債、国債金利、経済の潜在成長率を比較し、設定したものでしたが、まさにこの水準で急落が起こったことになります。

今後の金利の動向

アメリカ経済は、前回の世界金融危機以降、順調に回復し、景気拡大局面が長く続いています。そうした中で、徐々に利上げを慎重に行い。昨年後半には、FEDはバランスシート圧縮を開始しています。サイクルとしては、景気拡大の終盤と言えます。

中央銀行は、インフレ率をコントロールするために、政策金利を上げていくわけですが、長期金利が上がりすぎて経済を失速させないようにすることが必要です。イエレン前議長は非常に慎重に行動し、市場の信認も厚かったために、株式は、適温相場(ゴルディロックス相場)を形成していました。

適温相場というのは、高すぎない金利のもと、経済の拡大を享受し、株価が上昇するという相場を意味しているわけですが、長期金利の水準が高くなってきたことや、FRB議長の交代によるFEDに対する信頼感の低下から、このタイミングでの調整になったものと思われます。

今後の金利動向ですが、インフレ動向に直結する雇用状況(低い失業率、高い賃金の伸び)から、年3-4回の利上げは不可避ではないでしょうか。バランスシート圧縮は、長期債の入札通じて、長期金利に上昇圧力をかけていくと思われます。景気の失速回避と適度なインフレ率の維持をバランスシート圧縮下で行うのは、中央銀行にとって困難なものとなると思います。パウエル議長の腕の見せ所ですね。個人的には悲観的にみていますが。

今後の株式相場の動向

暫くは、好調な企業業績、景気指標のもとで、金利との綱引きによるレンジの広いボックス相場を基本的には想定しています。

今回の急落により、株式のリスクを再認識した投資家による株式から債券へのシフトも起こるために、一本調子の上昇は考えにくいです。

一方でトランプ政権によるインフラ投資が、株式にカンフル剤を打つかもしれませんが、長期金利の上昇にも同様にカンフル剤を打つことになります。この場合には、株式投資家は楽天的なので先に株式が大きく上昇するかもしれません。絶好のリスクオフタイミングになる可能性がありますね。

目先のポイントは、3月のFOMC(金融政策決定会合)になると思います。まずはパウエル議長に注目です。