第1四半期米国GDP

米商務省が26日に発表した第1・四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率換算で前期比3.2%増だった。

事前予想の2.3%を上回る結果となった。在庫と純輸出が全体を押し上げ、個人消費と企業設備投資の減速を補った。

予想を上回る結果を好感し、NYダウは80ドル程度上昇したが、一方で長期金利は小幅に低下した。伸びが主に在庫で押し上げたことや個人消費や企業設備投資が減速したことで逆に利下げ観測が強まったことから、債券市場は株式市場と異なる反応を示したようである。

では、いつものように、内容を確認してみる。

個人消費

米経済の約7割を占める個人消費は1.2%増加、前期の2.5%からさらに減速したが、ほぼ予想のどおりとなった。

前期の2.5%は、より大きな減速を想定していた中では、概ね堅調であるという評価であったが、今回の水準は大きな懸念を抱く水準。

固定投資

固定資産投資は1.5%増。前期の3.1%から大きく低下した。

設備投資も2.7%増と、前期の5.4%から大きく減少。構築物投資が3期連続でマイナス、機器投資は0.2%増と2016年以来の小幅な伸び。

住宅投資は2.8%減、5期連続のマイナス。住宅投資は、関連消費に大きく影響を与えるために個人消費へのネガティブな要因となっている。

輸出入

輸出は、3.7%増、前期の1.8%から増加。輸入は、3.7%減。

結果として純輸出は、大きくプラスにGDPに寄与した。

政府支出

政府支出は、2.4増と、前期の0.4%減から回復。2017年以降で最大の寄与。

まとめ

  • 米国GDPは予想を上回り、数字としては素晴らしい結果。
  • 変動の大きい純輸出、在庫投資を除けば1.5%程度の成長。景気拡大の持続には疑念が残る。
  • 個人消費の減速は、大きくないものの徐々に減速している印象。
  • 住宅投資は、5四半期連続でマイナス成長。
  • 企業設備投資も前期の反発から反落。

前回、設備投資が反発し、個人消費が底堅さを見せたことで、「米国経済はしぶとい」と書いたが、今回は、予想を上回る結果であるGDPの伸びほど評価できない。内容が持続可能なものではないためだ。これを受けて利下げ観測が強まり、金利が低下したということも納得できる。

一方で株式市場の反応には違和感がある。昔から株式関係者は楽観的で債券関係者は慎重なものが多く、そして最終的には債券関係者の方が正しい。もしくは株式関係者も利下げ期待により株式を強気に見たのかもしれないが、今のFEDは、株価が下がらない限り利下げを行わないだろう。

5/1にFED(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合を開き、政策金利を2.25%から2.5%のレンジに維持することを決定したが、決定自体は事前の市場予想通りであり、サプライズはない。パウエル議長は今回の会合後の記者会見で「緩和側と引き締め側のどちらにも動く強い理由は見当たらない。」とし、中立の姿勢を強調した。

しかしその一方で、金融市場は昨年末の株安を受けてハト派に転換したパウエル議長の姿勢を過大評価しており、年内の利下げを期待している。利下げが行われ、企業業績が拡大するなば、短期的には現在の株価水準は維持できるかもしれないが、為替市場はドル安に向かうことになろう。

リスク資産(株式、ジャンク債、etc)はすでにバブル的な水準にあると考えているため、なんらかの調整が行われると思うが、そのきっかけや時期は、やはりわからない。だたし危険な水準だということはわかる。なるべくキャッシュポジションを高めておこうと思う。

 

第4四半期米国GDP

米商務省が29日に発表した第4・四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率換算で前期比2.6%増だった。

事前予想の2.2%を上回る結果となった。個人消費は鈍化したものの、企業の設備投資が拡大した。

通年のGDPは3.1%増となり、トランプ大統領が目標とする3%をかろうじて上回った。予想を上回る結果にドル高に反応し、長期金利も2.7%台へと上昇したが、株価は小幅に下落した。

では、いつものように、内容を確認してみる。

個人消費

米経済の約7割を占める個人消費は2.8%増加、前期の3.5%から減速し、予想の3%を下回った。

12月小売売上高の大幅マイナスを受けて、より大きな減速を想定していた向きもあり、概ね堅調であるという評価。

固定投資

固定資産投資は3.9%増。前期の1.1%から回復した。

設備投資も6.2%増と、前期の2.5%から大きく回復。中でも機器投資は6.7%増、知的財産投資は13.1%増と高い伸びを見せた。

住宅投資は、-3.5%と4四半期連続のマイナス。住宅ローン金利に影響を与える超長期債の金利上昇が大きな圧力となっている。

輸出入

輸出は、1.6%増、前期のマイナスから回復。輸入は、2.7%増。

輸出に関しては対米報復関税を睨んだ発効前の輸出前倒しの剥落が一巡した結果。

政府支出

政府支出は、0.4%増と、小幅ながらプラスを維持した。

まとめ

  • 米国GDPは予想を上回り、底堅さを見せた。
  • 個人消費は、減速しながらも底堅さを維持している。
  • 住宅投資は、4四半期連続でマイナス成長。金利上昇の影響が大きく現れている。
  • 企業設備投資が驚くべきことに回復。前期急増した在庫投資も縮小した。

予想を上回る結果であったが、何よりも驚いたのは、懸念していた在庫調整のマイナスの効果を補って設備投資が伸びたことである。個人消費も株価の大幅な下落にも関わらず、堅調さを維持しており、正直、米国経済はしぶとい。

これを受けて金利上昇となったが、この内容では順当な動き。利上げ再開とまではいかないが、資産圧縮停止も不透明になっただろう。

このまま経済が底固く推移した場合には金利上昇、減速した場合には資産圧縮の停止、利下げとなるが、現在のマーケットは、金利上昇には目をつむり、減速しても利下げで景気を支えてくれるという都合の解釈をしている状況だ。いつまでこの状況が続くのか見ものである。

中央銀行の資産圧縮の停止に至る株価下落、ドル安を見越してポジションをとっているが、かなり含み利益を失った。しかしながら、こういうときの市場は一瞬で悲観に変わることが常なので、悲観も落胆もせずにフラットに市場を見て行こうと思う。

 

パウエル議長と中立金利

世界同時株安が続いている。

米国株式(S&P500)

米中貿易戦争、ブレグジットと材料に事欠かないが、本質は世界的な量的緩和の修正が原因である。欧州、日本は未だ緩和を継続しているが、米国は一足先に金融引き締めへと舵を切った。欧州・日本の緩和余地は少なく、将来の政策手段を確保するために米国のように早く金融正常化に向かいたいところではないか。米国にとっては欧州・日本が緩和を継続している隙に正常化させたいと考えているはずである。

しかしながら米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は11/28日、ニューヨークで講演し、景気を過熱も冷やしもしない「中立金利」を「わずかに下回る」との認識を示した。10月には金融政策について「中立まで長い道のりがある」と警告していたが、金融引き締め姿勢を大きく後退させた。

傍から見ると、トランプ大統領からの金利が高すぎるとのプレッシャーに屈したと見られるが、そうみられても仕方がない状況で、変節をみせるのは大したものではないだろうか。経済学者ではない実務家の議長であるところを見せたと言えるだろう。

では政策金利は中立金利をわずかに下回る程度なのだろうか。中立金利といえばテーラールールが有名であるので参考にしてみたい。アトランタ連銀が親切にもテーラールールに基づくレートを提供してくれており、過去の実際の政策金利との動きを見ることができるために、現状の政策金利の水準感をつかみやすい。

パウエル議長が言うように「わずかに下回る程度」には見えない。寧ろ、将来の景気に対する不透明感を議長自身が示してしまったものと捉えられる。

今後の方針

このパウエル議長の認識の変化は、来年の「利上げ停止」のシナリオに沿ったものであり、戦略の継続に変更はない。反発局面でさらにポジションを上乗せしたために、ほぼ株式の売り建てポジションは完成した。ドル円レートが思いのほか円高に進んでいないのは、ブレグジットの混乱と武田薬品のシャイアー買収(6兆円!)の思惑が原因と考えているが、徐々にドル安圧力が高まるのではないかと期待している。

第3四半期米国GDP

米商務省が26日に発表した第3・四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率換算で前期比3.5%増だった。

事前予想の3.3%を上回る結果となった。輸入関税の導入に伴い大豆輸出が減少したものの、個人消費が大幅な伸びとなったほか、在庫投資も大幅に増えた。

米経済成長は9年連続で続いており、潜在成長率とされる2%を超えた。為替は予想を上回る結果にややドル高に反応したが、株安を嫌気し、円高に向かうこととなった。

では、いつものように、内容を確認してみる。

個人消費

米経済の約7割を占める個人消費は4.0%増え、2014年第4四半期以来、約4年ぶりの高い伸びとなった。雇用拡大と大型減税で可処分所得が増え、自動車など耐久消費財の消費が6.9%増加した。

トランプ政権による減税の効果や好調な雇用状況が金利上昇の悪影響を抑えた格好だ。

固定投資

固定資産投資は0.8%増。前々期の11.5%、前期の8.7%からさらに減速した。

設備投資も0.4%増と、前々期の8.5%、前期の4.6%から大きく減速。金利上昇に加えて、貿易戦争への懸念が企業の投資計画に影響を与えたと考えられる。トランプ政権による保護貿易政策の負の側面が現れたものだ。

住宅投資も、-4.0%と3四半期連続のマイナス。住宅ローン金利に影響を与える超長期債の金利上昇が大きな圧力となっている。

輸出入

輸出は、-3.5%減、輸入は、9.1%増。輸出に関してはトランプ政権の関税拡大への対米報復関税を睨んだ発効前の輸出前倒しが剥落したものだ。

輸入は好調な個人消費にみられるように、消費財や自動車の輸入が牽引したもの。

政府支出

政府支出は、3.3%増と、16年以降で最大の伸びを見せた。議会による債務上限の引き上げが行われた影響が継続している。

まとめ

  • 米国GDPが予想を上回った主因は、個人消費、在庫投資。
  • 個人消費は、減税・好調な雇用環境の効果が引き続き金利上昇の影響を抑えている。
  • 一方で、住宅投資には金利上昇の影響が大きく現れている。
  • 貿易戦争の影響が確実に輸出に現れた。
  • 同様に、貿易摩擦を懸念した企業設備投資にもブレーキがかかる。

見かけ上、予想を上回る結果であったが、内容は個人消費だのみ。在庫の増加は前向きな投資ではなく貿易戦争による値上げを嫌った駆け込みの可能性が高い。いずれ在庫調整という形でGDPにマイナスの影響を与える。また最近の株価下落も負の資産効果として個人消費にマイナスの影響を与えよう。

好調な個人消費、貿易戦争によるインフレ圧力から、FEDは想定通り年内もう一度利上げを行うものと思われるが、FEDの想定する来年3回の利上げは、実現不可能となるだろう。

第2四半期米国GDP

米商務省が27日に発表した第2・四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率換算で前期比4.1%増となりました。

事前予想の4.2%を下回る結果となりましたが、個人消費が前期から大きく回復し、輸出も牽引しました。予想を下回ったことや事前にトランプ大統領が良い結果を示唆していたために、織り込まれていた模様で、為替はややドル安に反応しましたが、総じて金融市場には大きな動きをもたらしませんでした。

では、いつものように、内容を確認してみましょう。

個人消費

米経済の3分の2以上を占める個人消費ですが、4.0%増と前期の0.5%から大きく回復しました。昨年まで好調な伸びを記録していましたので、前期の停滞から前年末並みに回復したことになります。

前にも述べましたが、GFC(グローバル・フィナンシャル・クライシス)以降、季節調整の影響で第1四半期に鈍化する傾向があり、正確に経済実態を表していない可能性もあると指摘しましたが、その可能性が高いのではないでしょうか。

内容では、自動車、医療費、公益費、食品、宿泊の支出が増えた模様です。減税の効果や好調な雇用状況が金利上昇の悪影響を抑えているのだと思います。

固定投資

固定資産投資は7.3%増。前期の11.5%から減速しました。

設備投資も3.9%増と、前期の8.5%から大きく減速しました。金利上昇に加えて、貿易戦争への懸念が企業の投資計画に影響を与えたのではないでしょうか。保護貿易の影響が大きいのは、企業経営者へのマインドに与える影響が大きいのだと思います。

住宅に関しても、-1.1%と前年比マイナスです。用地と熟練労働者のボトルネックから住宅供給不足が継続しているようです。これも自動車などの耐久消費財と同様に金利の影響を大きく受けます。

輸出入

輸出は、9.3%増、輸入は、ほぼ横ばいの0.5%増。トランプ政権による関税拡大による対米報復関税を睨み、発効前に輸出が前倒しされたようです。この好調な結果をそのまま鵜呑みにするのは危険だと思います。

政府支出

政府支出は、2.1%増。前期の1.5%から拡大しました。主な要因は軍事費。議会による債務上限の引き上げが行われたので、増加したのではないでしょうか。

まとめ

  • 米国GDPは予想を下回ったが、個人消費、輸出がけん引い、高い伸びを見せた。
  • 個人消費は、回復。減税・好調な雇用環境の効果が金利上昇の影響を抑えている。
  • 貿易戦争の影響から、輸出の駆け込みが見られ、持続的であるとは考えられない。
  • 同様に、貿易摩擦を懸念した企業設備投資の陰りがみられる。

 

金利の上昇に加えて、貿易戦争という悪手が加わりました。減税の効果と良好な雇用環境とのせめぎあいになると思います。

FEDは年内2回の利上げを実施するものと想定しますが、金利の上昇・保護貿易の影響から、来年前半には、GDPにも影響が現れてくるものと考えます。したがってFEDの想定する来年に3回の利上げは、実現不可能なのではないでしょうか。