老後資金2000万円問題

最近話題の金融庁の報告書、いわゆる老後資金2000万円問題についての雑感であるが、どうして、こと年金の話になったら、メディアも政治家も大騒ぎになるんだろう。

メディアは、「年金以外にも2000万円必要ですって、聞いてません」みたいな反応、これを受けて与党は、「報告書は受け取りません」ってなるし、野党は「年金は100年安心だったんじゃないですか!きりっ」って喚いてる。

私自身は、以前に「老後の資金を考える」と題して相当程度の資金を用意する必要があるという記事を書いている身ですから、今回の金融庁のように相当に世間様から反感を買うようなことをしているんでしょうか。

今回の報告書を読みましたが、至極まっとうで常識的な話だと思います。年金なんとか便とかで将来の受け取る年金の概算や今の生活費から考えれば、年金だけで生活するのは苦しいことは自明です。

当たり前のことを年金不安をあおる材料にしている旧民主党勢力(2番じゃだめなんですかさん)を見ると、むしろ生き生きとしているように見える。今の政治家は民衆の様子を見ながら、大衆迎合的なふるまいをしているので、変な政治家のふるまいは、逆に我々がそそのかしているのかもしれない。

自分自身の将来の収支を自分でしっかり考えることが何よりも重要だと思う。

 

貧乏になっていく日本人

先日、衝撃的な記事を見つけてしまった。日本人の給料が90年以降ほとんど上がっていないという記事だ。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、1990年の平均給与は425万2000円(1年勤続者、以下同)であったが、2017年は432万2000円となり、27年間で平均給与はわずか7万円しか上がっていないということらしい。

ひどい日本人の給与

バブル崩壊や深刻なデフレの影響、少子高齢化による国内需要の減少が原因とも言われているが、それにしてもひどいものである。さらにグローバル比較してみるとより深刻さがわかる。その記事(東洋経済オンライン:日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因、3月2日)によると

1997年=100とした場合の「実質賃金指数」で見た場合、次のようなデータになる(2016年現在、OECDのデータを基に全労連作成)。

・スウェーデン……138.4
・オーストラリア…… 131.8
・フランス……126.4
・イギリス(製造業)……125.3
・デンマーク……123.4
・ドイツ……116.3
・アメリカ……115.3
・日本……89.7

本当にひどいものだ。たまに海外旅行に行くと年々、日本人が貧乏になっていることを実感する。我々が国内で実感する円の価値よりも海外の価値は年々低くなっているからだ。海外の人から見れば、自国通貨の価値が高いわけだから、そりゃインバウンドも増えるだろうと思う。これを為替レートで調節するとすれば、例えばアメリカドルであれば、ざっくり80円くらいになる。

かつて米系投資顧問で働いていたとき、年に一度、報酬の更改をするのだが、ベース給与は、たとえ日本がデフレでも、本国アメリカのインフレ率が考慮されて数パーセントずつは上がっていた。もちろんファンドマネージャーという職種から、成果報酬の要素が大きいため、ボーナス次第で年収が左右されるわけだか、ベースとなる給与の昇給は大きい。このため上記のような実質給与の低下などは実感していなかったが、あらためて数字をみると日本の給与の特異性が際立つ。

いびつな利益配分

企業の利益配分の観点でいうと、企業のステークホルダーへの配分をどう考えるのか重要である。つまり株主、従業員、顧客へどう利益を分配するのかという点だ。株主には配当で、従業員には給与で、顧客には価格で分配するわけだが、配当・自社株買は順調に伸び、サービス価格はデフレの影響で下がって顧客利益は上がっているものの、給与だけが、大きく下がっているということである。

企業の従業員は本当に怒っていいと思う。一方で上記のステークホルダーには含めていないが、企業自身(経営者)は、内部留保という形でため込んでいる。その額なんとGDPに匹敵する500兆円。さらに役員報酬だけは、外資系にならってウナギ登りになっている。日産のゴーン前会長ほどでは無いにしろ、経営成績に見合わない巨額報酬を受け取る経営者は多い。

先進国並みの豊かさ

こうした企業の行動が、日本人を国際的に貧しくしているのだと思う。成果のあげられない経営者への報酬を減らし、従業員給与を引き上げ、サービス価格を適切なものへ引き上げることで、先進各国並みの豊さをとり戻すことができるのではないか。

政府は、企業寄りの姿勢を改め、内部留保課税などを通じて傲慢な経営者の姿勢を変えるような政策を促してほしい。この状況が続けば、先進国のなかでより貧しくなっていくのは間違いないだろう。その過程で為替市場での調整(円高)も起こるだろうが、日銀にはもう手はないように思う。

国内景気のはなし

3月 7日に、政府は 1 月の景気動向指数の一致指数の基調判断を「下方への局面変化」に下方修正した。これは前回 2014 年の消費増税以来のこと。

普段あまり国内景気の報告をしていないが、決して手を抜いているわけではなく、日本経済のものづくり経済という特性から、世界景気のドライバーである米国経済、中国経済の動向を見ている方が、正しい判断ができるという考えからだ。

残念ながら一党独裁国家である中国経済の統計は到底信頼に足るものではないため、ほとんど無視している。かわりにかかわりの深い米国、オーストラリア、カナダ経済の動向をもって代替としているが、結局のところもっとも比重が高い米国経済の分析に時間をかけているわけだ。

中国経済の失速は、オーストラリア経済の失速をもたらしているが、今週から始まった全人代では、目標とする成長率を 6.0~6.5%と低めに定め、大型減税(2 兆元=33 兆円)や社会保険料削減を打ち出した。しかし、過去行ってきた固定投資は行わないようだ。過剰設備による財政の悪化を招く政策は行わないということだろう。

さて国内景気を見る上でのポイントだが、人口減少にあえぐ国内においては消費よりも輸出、ひいては生産の状況に注意を払うべきだろう。

2月28日発表の1 月の鉱工業生産は前月比▲3.7%低下と大幅な低下となった。生産のマイナス寄与度が大きかったのは自動車工業、電機・情報通信機械工業など日本の輸出の基幹産業である。

対中国の輸出比率は約20%で米国向けとほぼ同程度ある。さらに中国と関連の深い国(香港、台湾、シンガポールなど)を合計すると15%程度あることから、中国経済の影響をまともに受けるわけである。

結局のところ、日本経済は、中国経済の動向ひいては米国経済の動向次第ということになる。米中貿易協議の結果に大きな影響を受けることになるが、かといって協議が伝えられているように合意に至っても、中国の過剰設備・債務が解決するわけではないので楽観はできないのではないか。

第1四半期日本GDP

2018年1-3月 日本GDP速報

内閣府が2018年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値を発表しました。

GDPは、9四半期ぶりのマイナス成長のマイナス0.6%(前期比年率換算)。事前予想(マイナス0.1%)を下回りました。

内需である消費、設備投資、住宅投資が振るわず、輸出の伸びも低下したことが響きました。

個人消費は、0.0%と前期のプラス0.5%から反落し、設備投資も、0.0%とプラス0.4%から低下。輸出は、プラス0.5%となり、前期のプラス1.5%から減速しました。政府支出や住宅投資は、それぞれ0.0%、マイナス0.3%になりました。

個人消費は、やはり野菜価格の高騰の影響を受けたようです。引き続き、実質賃金の伸びが明確に見られてくるまでは、個人消費の高い貢献は期待できないと考えています。

設備投資、輸出は、減速感のある半導体生産や米国自動車販売の前年割れの影響がが出てきたものと思われます。足元3%水準を超えてきた米国の長期金利上昇による影響が、米国の個人消費や生産活動にさらに影響を与えるのか、今後も注意が必要だと思います。米国のGDP統計には徐々に影響が出ているように見えます。

住宅投資は、いよいよ賃貸住宅に陰りが見えてきたようです。もともとバブルのような状況になっていたので、今後も減速が続くのではないでしょうか。

やはり、弱い内需のため、景気は外需だのみという構図に変化は見られないと思います。その外需は、米国の金融引き締めがどの程度影響を与えるのかという点が、一番のポイントであると思います。

 

運用戦略

3%水準を超えた米国長期金利にも関わらず、米国株式は大きく調整することもなく、大きなボックス圏での推移となっています。為替がドル高(円安)に動いているため、日本株式は徐々に値を戻す動きとなっています。

米国、日本とも決算発表シーズンを終えました。総じて前期は堅調、今期予想も想定内の減速ということで、株価を支えています。

より金利上昇による株式の調整を期待していた一部ヘッジファンド(私も)の買戻しの動きも株式の上昇を促したようです。

一方で、債務の多い新興国通貨は大きく調整しており(アルゼンチン等)、徐々に米国金利上昇の影響が広がっているように思えます。まだ、一部の国にとどまっているため、リスクオフの動きにはつながっていませんが、予兆として警戒すべきと考えています。

 

第4四半期日本GDP

2017年10-12月 日本GDP速報

内閣府が2017年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値を発表しました。

GDPは、8四半期連続のプラス成長の0.5%(前期比年率換算)。事前予想(0.9%)をやや下回りました。

前期マイナスに転落した個人消費が持ち直し、好調な輸出、設備投資が下支えしました。

個人消費は、1.0%と前期のマイナスから回復し、設備投資は、0.4%、輸出は、1.6%となり、プラスを維持しています。政府支出や住宅投資は、それぞれ▲0.1%、▲0.3%とマイナスになりました。

個人消費は、前期の夏場の天候不順の影響がなくなったため、回復しましたが、賃金の伸びが見られない中、足元の野菜高騰の影響が響いてきそうです。賃金の伸びが明確に見られてくるまでは、個人消費の高い貢献は期待できないと考えています。

好調な設備投資、輸出は、米国を中心とした世界景気の拡大の恩恵を受けたものと思われます。米国の長期金利上昇による影響が、米国の個人消費に影響を与えるか、今後には注意が必要だと思います。

好調な米国のGDPから、より高い輸出、設備投資の寄与を見込んでいましたが、少し物足りないものになりました。

基本的には、緩やかな拡大基調が続くと思っていますが、これまでと同様に国内の市場に影響を与えるような数字は出てこないと考えています。

運用戦略

今後の市場への影響は、引き続き米国株式市場、為替市場の動向次第でしょう。米国の長期金利の上昇に端を発した株式の調整ですが、第2段階の投資家のリスク調整(リスクオフ)の段階にきているとみています。

この場合、調達通貨である円は還流することになりますので、株価下落と円高がセットになりやすいです。株価下落→円高→株価下落というジョージソロス氏が唱えている再帰理論がさく裂することになる気がします。

震源である米国市場では、第2段階のリスク調整の株式売却のフェーズの中、FRBの政策金利の動向に目が向くのではないでしょうか。従来どおりのタカ派的な姿勢が維持されれば、緩和姿勢の催促として株価が下落に向かう可能性もあります。3月のFOMCは要注目ですね。

最終的には、長期金利の上昇が、金利の上昇の影響を受けやすい自動車や住宅の分野に悪い影響を与えてくるかがポイントでしょう。むしろ”いつ”影響が出てくるかではないでしょうか。

この影響による株式の下落が第3段階だと思っています。年後半になるかもしれませんね。

現在のリスクオフポジション(バリュー株のロング+グロースの株ショート、ハイイールド債のショート+資源株のロング)のうち、資源株のロングを手仕舞い、よりショートバイアス(売り持ち)を高めていこうと思います。