2017年6月FOMC

6月14日、FED(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利の0.25%の引き上げを決定しました。この引き上げは、ほぼ予想どおり、むしろ関心は「バランシートの圧縮」であったと言えるでしょう。これに関して、イエレン議長は年内のバランスシートの圧縮に着手する方針を明らかにしました。最近の弱い経済指標と比較するとタカ派的な発言です。また将来の利上げを示すドットチャートは変更なく年内1-2回の利上げを見込んでいます。

反応しない長期金利

長期金利は、FOMC前に発表のあった弱い小売売上高と消費者物価指数の影響で急落し、FOMCでの利上げの発表後の戻りも限定的なものになり、2.138%(15日17時現在)で推移しています。FRBのタカ派的な行動に対して、市場はトランプ政権の経済政策の遅れに注意を払っているようです。一方で、株式市場は経済政策の遅れよりも低金利持続に注目し、高値を更新しています。前にも書きましたが、「債券の運用者は悲観的で、株式の運用者は楽観的。しかし最終的に債券運用者の方がたいてい正しい」ということでしょう。

そしてFRBもイエレン議長の任期を2018年2月3日に控えており、後継者(再任の可能性もある)のために、難しい仕事をやっておこうという動機にとらわれていると思っています。バーナンキの時もそうでした。イエレン議長は、金利正常化に固執し、経済の判断を読み違えているのではないでしょうか。いつまでこのタカ派的な姿勢を維持できるでしょうか。

バランスシート圧縮のシナリオ

さて、タカ派的なFRB、経済に悲観的な債券市場、楽観的な株式市場、このような組み合わせの結末はどうなのでしょうか。やはり株式市場の調整しかないと思っています。年後半にバランスシート圧縮をスタートさせれば、長期金利に上昇圧力がかかってきます。2008年以降の国債の買い入れによって膨らんだ残高を減らすということは、満期を迎える金額以上は買わないということなので、明らかに市場での買い手が減るわけです。トランプ大統領の当選で沸いた2.7%程度までは上昇する可能性があると思っています。一時的にドル円はドル高局面を迎えることになるのではないでしょうか。

株式市場は、トランプ政権の経済政策の遅れに目をつむって、金利低下を支えに株価を維持しています。与党共和党の同意の得られやすい法人減税の実現を期待している面もあると思います。

しかしながら、長期金利が再び上昇してきたら、さすがにもたないのではないでしょうか?また、オプションの売り(ボラティティーのショート)が大変多く、一時10%を割るところまで売られています。あまりに相場の変動に無警戒な状態です。このポジションの特徴は、下がれば下がるほどアンワインド(巻き戻し)のために売りヘッジを行うことが必要になります。これが下げを加速し、下落幅が大きなものにするわけです。

投資戦略は?

個人的には株価下落にかけるのは好きではありません。FRBが思い直して、かつてのようにハト派な姿勢に戻る可能性もあるわけですし、法人減税も、ムニューチン財務長官が示唆するように8月頃に実現性が見えてくるかもしれません。個人的にはこのシナリオを望んでいます。

従って、市場に大きな動きがあった時に収益化しやすい、逆張りのロング・ショートポジションの構築に努めようと思っています。また、ロングポジションのヘッジを長期金利の水準(2.7%を目途に)を見ながら、入れていきたいと思います。

現在、バイオ関連のロングポジションのみ保有してます。米国AI関連株のロング、日本半導体関連株、日本FA関連株のロング、日本自動車株のショートはいいタイミングでクローズできました。つきがありますが、あくまでもご参考までに。

自動車株とFA・半導体製造装置関連株

6月の利上げはあるか?

6月の利上げはあるか?

6月13日~14日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が行われますが、4回目の利上げの確率は依然高いと言われています。しかしながら米国長期金利は中々上昇してきません。

FOMC議事録で、「1~3月の経済の落ち込みが一時的だとわかる証拠が出るまで利上げに慎重になるべきとの意見が多く出ていたこと」などが背景だと思われます。

個人的には今週の雇用統計がある程度の水準であったなら、FEDは利上げに踏み切るのではないかと思います。この一連の利上げは、景気・物価よりも金利正常化を目指したものであるからです。

長期金利が3%程度になるまで、または超長期債の発行が具体化するまでは、株式市場に大きな急落はないと考えていました。しかしトランプ政権のロシアゲートによる不透明感に伴う減税・インフラ投資の進展の遅れから、市場の期待を支えるのは困難になるのではないでしょうか。

仮に利上げが見送られても、景気減速に対する警戒感が高まり、現在、高値圏にある株式市場は調整を余儀なくされる可能性があります。

市場が調整した場合には、大きく上昇している銘柄の下落が大きくなるものです。そうした理由から、半導体関連ロングと自動車株のショート、米国株式のAI関連のロングを手仕舞いたいと思います。

人口知能(AI)

そうしたわけで現在のポジションは、日本株のロングだけとなってしまいました。これはバイオ株なので、もちろん市場の影響は受けますが、個別の材料がいつ出てくるかわからないため、長期の成長に賭けて保有していきます。

しばらくは、年後半の戦略についてじっくり考えていきたいと思います。またご報告します。

2017年5月FOMC

5月3日、FED(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利の維持を決定しました。政策の維持は予想どおりです。問題となるのは現状の景気の認識がどうのようなものかということでしょう。70%程度織り込まれている6月の利上げを示唆するものになっているでしょうか。

第一四半期GDPどおりの声明文

発表された声明文の内容は、「実体経済は減速したが、労働市場は改善を続けており、失業率は減少している。個人消費の勢いは強くないが、消費を支えるファンダメンタルズは強固。企業投資は強まっている。」となっており、第一四半期のGDPの結果をほぼなぞったものとなっています。6月のFOMCでは、今後何もなければ利上げをしますよっというニュアンスではないかと思います。この結果を受けて市場はやや金利上昇、為替はややドル高へと動きました。

ファンダメンタルズは強固?

GDPでの高い雇用コストの伸びが、消費を支えるファンダメンタルズは強固と言わしめていると思われますが、金利上昇の悪影響による自動車販売の鈍化にみられるように、それほど強固だとは思えません。GFC(グローバル・フィナンシャル・クライシス)によってゆがめられた季節調整のアヤがどの程度影響しているかわかりませんが、それほど楽観していられるものではないと思います。第一に企業の投資活動の上昇は、原油価格上昇の影響が大きいと思われるます。原油相場は現在50ドルあたりで安定していることから、さらなる投資活動の活発化は期待できないのではないかと考えています。

市場は利上げを織り込みに

昨日、オバマケア代替法案が下院で可決したというニュースがありました。これにより減税策が前進するという期待も盛り上がることになるでしょう。また、フランス大統領選挙の討論会の結果、マクロン候補の優勢が確実化したとの報道も市場にとっては前向きなものです。今晩の雇用統計次第ですが、おおむね6月利上げに向けて市場は強気を維持し、ドル円もドル高に推移していくのではないかと見ています。

利上げと政策の切れ目

したがって現在の米株のロングは維持しますが、あえてここからドル円のロングを持つのはリスクが高いと考えています。対日貿易赤字が拡大し、ロス商務長官が「米国はもはやこの膨張した貿易赤字に耐えられない」と表明しているからです。日本を名指しで批判しており、不均衡の是正を理由に2国間協議へ圧力をかけたとみられます。

6月利上げから減税策が具体化する8月以降の期間は、危険な期間になる可能性が高いと考えていますので、6月利上げに向けてリスク志向が高まる局面では、その後のリスクオフ志向見据えてポジションをとって行きたいと思っています。

米国利上げは何回か?

にわかに3月FOMCでの利上げ観測が高まってきました。おそらく週末の雇用統計も、昨日のADP統計の結果から、利上げをサポートするものとなると予想します。

FEDは昨年まで利上げを匂わしながら、ハト派の態度を示し、市場予想を裏切る形で利上げを見送ってきました。昨年末にようやく2回目の利上げを行いました。何がトリガーだったのでしょうか? それはトランプ大統領の誕生とそれに伴う市場の反応でしょう。トランプ大統領の経済政策を織り込む形で市場金利が上昇したため、FEDは遅ればせながら利上げしたわけです。

今回は、タカ派的な発言を多発し、利上げの素地を作ってきました。FEDがイニシアチブを取り戻したかったのでしょう。さて市場は何回の利上げをおりこんでいるのでしょうか?下記はその期待値です。

0回: 1%

1回: 12%

2回: 31%

3回: 34%

4回: 17%

だいたい2-3回が、市場の織り込みですね。株式市場はこの利上げに耐えられるでしょうか。おそらく3回の利上げには耐えられないと考えています。

ただ、トランプ大統領は金利上昇を望んでいないのではないでしょうか。巨額のインフラ投資のためには、超長期の国債の発行が不可欠ですし、株式の暴落は避けたいでしょう。3月の利上げ以降のFED及びトランプ大統領の発言には注意していこうと思います。

 

実質金利、為替と金

なかなかドル円レートがドル高に向かいません。トランプ大統領のツイート介入もないし、米国の経済指標は良いものが発表されている。FOMCの議事録ではタカ派的な内容のものが多いにも関わらず、ドル円は膠着状態になっています。

当初の予想では、こうした状況では118円程度までドル高が進み、米国10年債金利は、2.5%を超えるものと考えていました。

フランスの選挙の見通しが、混沌としていることも原因の一つですが、やっぱり金利が上がってこないことが原因でしょう。

2/24日現在、ドル円:112.75、米国10年債金利:2.376%です。米国の金利上昇が一服する一方で、インフレ率は2%を超えており、実質金利が低下しています。実質金利の低下はドル安要因であり、実質金利の低下で上昇するのは、金価格です。下図のとおり年明けから上昇しています。

トランプ政権の減税・インフラ投資などの積極財政に期待した金利の上昇の行き過ぎの調整、保護主義的な政策が前倒しされる一方で、積極財政の内容が見えてこないことが要因だと思います。2月末に「おどろくべき減税」を発表するとのことですが、内容が漏れてこないことから考えると、政権内でもめている可能性がありますね。

経済見通しの前提である減税の内容、規模に注目したいと思いますが、若干不透明が増していますので、ドル円の買い持ち、ロシア国債の買い持ち、米国株の買い持ちのうち、ターゲット達成した米株を一旦売却したいと思います。