米国インフレ率の低迷

現在のポジションは、長期保有のバイオ株のロング、ペアトレーディング型のロング・ショートと打診的にとった電気自動車関連のロングと先物ショートポジション、ドルのロングポジションとなっています。電気自動車関連は、目標の20%程度のポジションでこれからチャンスを見て増やしていこうと思っています。

問題はドルのロングポジションですが、目標の半分程度買って様子見しています。米国のバランスシート圧縮のシナリオから、米国金利上昇、株式の調整を睨んで、ドルの買い入れ、米株の売却を行ったわけですが、裏目に出ています。最大の誤算は、米国長期金利が低下していることです。

これは最近のインフレ率が低下してきているためです。このインフレ率の低下により、バランスシート圧縮開始が予想されているにもかかわらず、物価の安定を目標とするFEDが利上げの手を緩めるのではないかといった見方から、金利が低下しています。7月には半々であった利上げの予想確率も40%程度まで下がっています。

利上げについては、バランスシート圧縮を開始するために年内の利上げが見送られる公算が高いと想定していましたが、市場の利上げ期待は維持されるものと思っていました。問題は「インフレ率の低下は今後も続くのか」ということでしょう。

クリーブランド連銀のメスター総裁によると「処方箋や携帯電話の契約プランなどの分野におけるインフレ率の低迷は、数か月居座るだろうが、こうしたものは通常、消費者物価全般におけるダウントレンドを示唆するものではない。」ということで、一時的なものであるとFEDは認識しているようです。

結論

他の経済指標や原油価格の動向との整合性から、個人的にも同意したいと思います。大きな上昇はないにしても、今後も継続して、これほどインフレ率が低迷するとは思えません。

従って、現在は北朝鮮問題によるリスク回避の円高とECBの量的緩和政策の転換期待からドルが売られやすい状況となっていますが、ドルロングの残り半分のポジションは、9月FOMCでバランスシート圧縮が開始されたときに実行したいと思います。

また米国の株式ですが、企業収益の伸びはまずまずであることから、大きな急落はないと考えています。しかしながらトランプ政権の減税、インフラ投資政策の遅れから、まだ暫くは調整が継続するものと思っています。

2017年7月FOMC

7月26日、FED(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利のフェデラルファンド (FF)金利誘導目標について1-1.25%のレンジで据え置き、バランスシートの縮小を「比較的早期に」開始すると発表しました。一方で、インフレ目標値の2%を下回っている度合いについて、今回の声明から「やや」という表現が取り除かれました。

これを受けて市場では、「ハト派的」ととらえてドル安に動きました。バランスシート圧縮の開始時期に関して「9月」とか明確な時期を避け、「比較的早期」としたことで、政策の実行にバッファーをもうけたことが「ハト派」的と解釈されたようです。逆にインフレに関しては、文言の変更は「インフレの持続的アンダーシュートに懸念を強めていると受け取ったようです。

インフレに関しては、事前に議会証言の内容から予想されたものなので、さらに「ハト派」的とは思えないですが、私は市場の解釈を読めていないですね。

反省しなければなりませんが、FED自体は、バランスシートの縮小を宣言し、これを早期に行うと言っているわけですから、ここは少し当局をリスペクトしてドルの保有を継続したいと思います。

オバマケア改廃再び

18日、米上院共和党による医療保険制度改革(オバマケア)改廃への取り組みは、新たに党内から2人の造反が出たことで頓挫しました。

減税、インフラ投資といったトランプ政権が掲げる成長戦略の実施についても不透明感が高まったことで、トランプ政権の政策実現能力に再び疑問が生じ、金利低下、ドルが売られる展開となりました。

共和党のマコネル上院院内総務は、代替法案の可決が見込めなくなったことで、まずオバマケアを廃止する法案の採決に踏み切る構えを示しましたが、これも反対する議員が出てきたことで困難な状況にあります。オバマケアの廃案は共和党の悲願であるにもかかわらず、こうした状況になるのは本当に問題だと思います。

先日のイエレン議長の議会証言でのハト派な態度、弱い物価指数、小売り売上高と米ドルにとってはネガティブな状況となっています。一方で、株式市場は利上げの遅延期待から高値を更新しています。株式が上昇しているということは、トランプ政権の政策実現能力のなさについては、株式市場参加者は織り込んでるということなのでしょうか。

米国のバランスシート圧縮に伴う、金融引き締めを警戒して、株のポジションを落としたわけですが、本当に売り場は難しいですね。今回も早く下車してしまったようです。ドルもFOMC後の水準近くまで下がってきました。ほぼ買コストの水準です。

2017年6月FOMC

米国バランスシート圧縮下での投資戦略

ただし、弱いインフレ指標、強い株価の組み合わせには違和感があります。またFRBは、年内の利上げを見送るかもしれませんが、バランスシート圧縮は進めるのではないかと思っていますので、現状のポジションを維持していきたいと思います。

 

FOMC後の金融市場

6月15日に報告したように、バイオ株のロング以外のポジションをクローズいたしました。その後、マーケットリスクを抑えたロング・ショートポジションを若干増やしていますが、中々投資アイデアが浮かんできません。待つのも相場ではありますが、しばらくは我慢といったところでしょうか。

各資産のその後の動きを確認してみます。

米国長期金利

FOMC以降にわかに上昇してきました。現在2.3%の水準です。利上げ継続とバランスシート圧縮の開始を行うということで、反発しています。トランプ政権のインフラ投資・減税期待で大きく上げた長期金利ですが、政権の混乱に伴う期待の剥落で低下してきましたが、マネタリーベースの縮小に向かって上昇してきました。

株式

いまだに高値圏にありますが、ここ数日調整しています。ハイテク銘柄の多いNASDAQや欧州市場の調整はさらに大きなものとなっています。ここにきて不穏な動きですね。長期金利の上昇は株式にとっては基本的にはマイナス。企業業績の大幅の上昇が見込めるような景気拡大期の長期金利上昇は、業績期待で株価上昇もありえますが、はたして企業業績の拡大が金利上昇に打ち勝つことができるでしょうか?

円ドルレート

こちらもFOMC以降ドル高に振れています。金利上昇を警戒した株安のときには、リスクマネーの巻き戻しで円高にふれますが、トレンドで見た場合は、長期金利に沿った動きになるのではないでしょうか。米国マネタリーベースの縮小とともにドル高が進むとみています。

まとめ

今のところ、FOMC後に想定した動きになってきいます。今後もFEDが政策を変更しない限りは長期金利は上昇していくのではないでしょうか。雇用が良くても賃金が伸びない状況にも関わらず、賃金上昇による消費拡大を警戒した金融引き締めは、行き詰まるとみています。

為替も基本的には、株式の大幅な調整が起こるまでは、ドル高が進むのではないでしょうか。長期金利がさらに上昇していった場合には、最終的に株価の大幅な調整もあり得ると思います。その前にFEDが引き締めを緩和するように方針転換することを望んでいます。

米国の経済状況とFEDの姿勢を確認しながら、戦略を考えていきたいと思います。

米国バランスシート圧縮下での投資戦略

FED(連邦準備制度)は、引き続き政策金利の引き上げを行い、量的緩和の反対であるバランスシートの圧縮に早ければ9月にも着手することになっています。

投資家はFEDが本当にこの強硬な姿勢を実行できるのか懐疑的に見ていますが、任期を来年に控えたイエレン議長が、金融正常化の道筋をつけることに固執する可能性があります。

こうした量的緩和の反対の行動が、各資産にどのような影響を与えるのか、事前に想定しておきたいと思います。

バランスシート圧縮とは?

FRBは米国債について、「月当たりの再投資見送り額を当初60億ドルに設定し、その後、月額300億ドルに達するまで、1年をかけて3カ月おきに60億ドル増やす計画」、「モーゲージ担保証券(MBS)については、再投資の見送り額を40億ドルから始め、月額200億ドルに達するまで1年をかけて四半期ごとに40億ドル増やす。」というバランスシートの縮小に着手する方針を表明しました。

保有する米国債を売却するのではなく、償還資金の再投資縮小を通じた緩やかな方法ですが、1年かけて縮小を継続していくとなれば、FRBの買い入れ資産に連動するマネタリーベースは前年比で減少していくことになります。

米国長期金利

10年物国債に代表される長期金利は、ストレートにマネタリーベースの減速に比例して上昇することになると思われます。さらに減税・インフラ投資の財源のために超長期債の発行を行うならば、3%を超える水準まで上がる可能性があります。

為替

円ドルレートは、日銀によって長期金利がゼロ金利に固定されていることから、米金利の上昇により、ドル高方向に動くことになります。日本のマネタリーベースと米国の動きがまったく逆になるわけですね。

原油

ドル高となれば相対的に原油安になりやすいです。また米国シェールの生産量が逓増的に増えており、大きく上昇することは難しいのではないでしょうか?

先進国株式

さて米国株式に代表される先進国の株式ですが、トランプ政権による法人税減税とインフラ投資への期待に支えられている部分が大きいと思っています。

インフラ投資に対する期待は、共和党内での反対も大きいとみられるので、期待としては大きなものではないと思いますが、減税に関してはムニューチン財務長官が8月を目途に具体化したいと言っていましたので、期待は大きいのではないでしょうか。

量的緩和と政策期待に支えられた流動性相場から業績相場へと移行することになります。

米国の企業収益が大きく伸びる状況であれば、市場全体が大きく上げたり、下げたりすることはないと思いますが、企業収益が伸び悩んでいる場合は、大きな調整もあるのではないでしょうか。

新興国株式

強いドルは、新興国からの資金流失を促すため、先進国の株式よりも大きな調整になると思います。

当然、新興国通貨も下落するので対円でのリターンは非常にダメージが大きくなるのではないでしょうか。

ジャンク債

金融市場から資金が引き上げられる状況になった場合、一番先に売られるのはリスク資産です。

ドル高による原油安の影響により、シェール企業関連のジャンク債は、さらに影響が大きくなるのではないでしょうか?

リスク資産が大きく調整する局面では、金が安全資産として期待されますが、残念ながら米国長期金利が上昇する局面では、金はむしろ売られることになると思います。

実質金利の反対に動くために、期待インフレが高まらない限り、名目金利である長期金利が上昇することは、ネガティブな影響を与えることになるのではないでしょうか。

まとめ

景気が減速する中で、バランスシート圧縮が進められた場合、かなり悲観的な状況になると思います。

FEDがどれほど本気で金融引き締めを考えているかが一番の問題ですが、本当に9月にバランスシート圧縮を進めるのであれば、円での投資では、現金保有を高めてドル現金への分散を進めることが第一歩になると思います。

その後、リスクオフの動きが発生し、FEDが金融引き締めを諦めた場合、金への投資が最初の投資になるのではないでしょうか。

株式への投資は、その時点での下落の幅と企業収益の状況を見ながら検討することになると思います。

2017年9月から2018年にかけては波乱がありそうですね。