株式の調整は一時的か?

米国長期金利の急騰に端を発した世界同時株安ですが、一旦の落ち着きを見せています。そもそも下落率でみれば、それほど大きくはないのですが、長らく低い変動性で推移していた中での、急落は大きなショックを与えました。

恐怖指数と呼ばれる投資家の想定する株式の変動率は、一時的に50%を超える水準となり、10%以内で推移していた状況から、大きなジャンプとなりました。40%を超えると大きなショックと言えるので、恐怖指数の面からでは立派な急落と言えます。

米国:恐怖指数(VIX)

さて、株価ですが現在このように推移しています。

S&P500指数

日経平均

急落の要因

そもそも株価はなぜ調整したのか? 米国長期金利の急騰が原因と言われていますが、これは金利が上がれば、株式よりも債券に投資する投資家が増え、株式の下落、金利の低下を促すからです。

事前に長期金利が2.7%-3%を危険水準としていたのは、株式の配当利回り、ハイイールド債、国債金利、経済の潜在成長率を比較し、設定したものでしたが、まさにこの水準で急落が起こったことになります。

今後の金利の動向

アメリカ経済は、前回の世界金融危機以降、順調に回復し、景気拡大局面が長く続いています。そうした中で、徐々に利上げを慎重に行い。昨年後半には、FEDはバランスシート圧縮を開始しています。サイクルとしては、景気拡大の終盤と言えます。

中央銀行は、インフレ率をコントロールするために、政策金利を上げていくわけですが、長期金利が上がりすぎて経済を失速させないようにすることが必要です。イエレン前議長は非常に慎重に行動し、市場の信認も厚かったために、株式は、適温相場(ゴルディロックス相場)を形成していました。

適温相場というのは、高すぎない金利のもと、経済の拡大を享受し、株価が上昇するという相場を意味しているわけですが、長期金利の水準が高くなってきたことや、FRB議長の交代によるFEDに対する信頼感の低下から、このタイミングでの調整になったものと思われます。

今後の金利動向ですが、インフレ動向に直結する雇用状況(低い失業率、高い賃金の伸び)から、年3-4回の利上げは不可避ではないでしょうか。バランスシート圧縮は、長期債の入札通じて、長期金利に上昇圧力をかけていくと思われます。景気の失速回避と適度なインフレ率の維持をバランスシート圧縮下で行うのは、中央銀行にとって困難なものとなると思います。パウエル議長の腕の見せ所ですね。個人的には悲観的にみていますが。

今後の株式相場の動向

暫くは、好調な企業業績、景気指標のもとで、金利との綱引きによるレンジの広いボックス相場を基本的には想定しています。

今回の急落により、株式のリスクを再認識した投資家による株式から債券へのシフトも起こるために、一本調子の上昇は考えにくいです。

一方でトランプ政権によるインフラ投資が、株式にカンフル剤を打つかもしれませんが、長期金利の上昇にも同様にカンフル剤を打つことになります。この場合には、株式投資家は楽天的なので先に株式が大きく上昇するかもしれません。絶好のリスクオフタイミングになる可能性がありますね。

目先のポイントは、3月のFOMC(金融政策決定会合)になると思います。まずはパウエル議長に注目です。

 

FRB議長にパウエル氏へ

トランプ大統領は11月2日、来年2月に任期が切れるイエレン議長の後任に、現在FRBの理事を務めるジェローム・パウエル氏を指名しました。

パウエル氏は過去5年にわたりFRBの理事をしていましたが、議長であるイエレン氏に異を唱えたことはなく、ほとんどイエレン氏の考えと同じであるように思えます。

やはりトランプ大統領は不動産業で成功したとあって、金利というものにすごく敏感であったと思います。実体としては、限りなく現状維持であり、穏やかな金利の引き上げを目指す現在の政策が継続されることになります。

12月FOMC

次回のFOMCにおいて、おそらく利上げが行われることになります。現在、短期金融市場での12月利上げの確率は98%と想定されていますので、織り込み済といえるでしょう。

為替市場は、114円台に戻し、株価は最高値を更新中です。長期金利は、2.3%と依然低い状態が継続しています。トランプ大統領は、タカ派の次期議長案をちらつかせ、パウエル氏をよりハト派に見せる印象操作に成功したのではないでしょうか。

問題は、いつまでこの良好な関係が続くかということだと思います。金融危機後、市場や経済を支えてきた量的緩和を縮小させるわけですから、金利上昇を通じて影響が徐々に出てくると考えています。やはり長期金利の3%超えが危険ラインではないかと想定します。ジャンク債金利や株式の配当利回りとのバランスからは、その水準が上限ではないでしょうか。

当面の戦略

ドル円のロングは、継続保有。株式の警戒も継続したいと思います。はたしてこの景気拡大がいつまで続くのか、長期停滞論の再燃があるのか注目です。

2017年9月FOMC

9月20日、FED(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利の現状維持、また「バランスシートの圧縮」については10月より行うことを決定しました。同時に将来の利上げを示すドットチャートは、年内1回、2018年は3回との見方を示しています。また、最近の弱いインフレの状況が年内には消える公算が大きいとの見通しを示しました。全般的にややタカ派的な発言であり、これを受けて米長期金利は上昇し、ドルが強含みました。

ドル円は、ここしばらく弱い米国のインフレ指標による長期金利の低下とともにドル安となり、北朝鮮のミサイル、核実験問題のたびに弱含む展開が続いていました。

トランプ政権と民主党

ようやく北朝鮮問題への感応度が低下し、トランプ米大統領が、ハリケーン「ハービー」の救済措置と債務上限の3カ月引き上げを一本化する民主党案への支持を表明したことにより、トランプ政権の減税、インフラ投資への期待が高まり、ドルを押し上げることになりました。

これは小さな政府を標榜する共和党保守派との決別を示した可能性があり、大きな転換となるかもしれないと思っています。なぜなら大きな政府が好きな民主党と手を握るということは、選挙公約である減税とインフラ投資の実現性が高まるからです。共和党保守派に対しても大きなプレッシャーを与えることになります。

ポジション完成

とにかくドル円の水準が112円に戻ったことは素直に喜びたいと思います。ドル円のポジションも計画通り完成しました。北朝鮮のミサイルのおかげで買いコストも低くすることができました。今後は、トランプ政権の減税の行方がどうなるかを注意深く見守っていきたいと思います。

株式市場は?

当初、バランスシート圧縮開始による金利上昇圧力から高値圏にある株式市場は、調整が必要となると予想して、ポジションを落としました。しかしながら弱いインフレ指標の影響から米国長期金利はむしろ低下し、昨日のタカ派的なFOMCの結果に対してもダウは高値をい更新してみせました。考えている危険な金利水準(2.7%程度)まではまだ距離があるので、株式の調整は先延ばしされていると考えています。株式に関しては、しばらくウォッチを継続したいと思います。

ポジションの点検

北朝鮮のミサイル・核実験をめぐって、金融市場が動揺しています。米国債券市場では10年債金利が低下し、為替もドル安に振れています。株式市場もレーバーデー明けの5日に200ドル超下げるなどしています。

ドル円

バランスシート圧縮を睨んでドル円の買いポジションを保有していますが、評価損を抱えた状況となっています。目標ポジションの50%程度の保有中なので追加のポジションをどうするか検討してみます。

そもそも今回のドル安は、米国のインフレ率が低迷する中で、FEDの態度がハト派的なものになってきたことが大きなものでした。これにより米国の金利も低下しています。

インフレ率の低迷は、処方箋、携帯電話のプランの分野での一時的なもので(クリーブランド連銀メスター総裁)、商品市況の動向などを見る限り、いずれ上昇圧力がかかってくるものと思います。

また、FEDがバランスシート圧縮を先延ばしする状況でもないように思います。ただし、ハリケーンの影響がどこまで拡大するかが懸念しています。経済の停滞をもたらすような大きな被害になるようですと、金利の低迷は避けられないからです。

ただしこのことは、債務上限問題について政権と議会の合意を促すということから、中立ではないかとも思います。債務上限問題が暗礁に乗り上げれば、米国国債の格下げを通じて、リスクオフの結果、逆に国債金利が低下することになると考えられるからです。

市場は現在、長期金利2.09%、年内の利上げ確率25%程度となっており、かなり市場はハト派に傾いています。この点でもうすでに上記の懸念は、織り込み済であると思えるので、むしろ地政学リスクでリスクオフになった場合には、ポジション積み増しの機会と捉えたいと思います。

株式市場

バランスシート圧縮に伴う金利上昇を見越して、株式の調整を予想しましたが、思わぬ金利低下により株価は持ちこたえています。金利の上昇が先延ばしされた分、株価もボックス圏で動くと想定しています。また、地政学リスクによる下落は、買いのチャンスではないかと思います。

電気自動車関連

中国での電気自動車の普及や日産の新型ノートの発売から、電気自動車関連の業績も動いてきました。株価も急騰、調整を繰り返しながら、順調に上昇しています。ただし株価が急騰している銘柄は、一部売却も行いたいと思います。

 

ジャクソンホール直前の雑感

株式市場がやや頭打ちとなっています。

ジャクソンホールでのイエレン議長、ドラギ総裁の発言を見極めたいとする向きが多い中で、トランプ政権の混乱や北朝鮮問題などの懸念材料があふれているためです。トランプ政権の混乱は、ステーヴ・バノン主席戦略官の辞任、ヴァージニア州のシャーロッツビルでの白人至上主義者と反対派との衝突によるトランプ大統領の発言、米国の債務上限問題と盛りだくさんで、政権の政策進展が懸念されます。

トランプ大統領はなかなか一筋縄ではいかないですね。ただし、熱烈な支持者であるラストベルトの人々の支持を失わないように行動するというところは一貫しています。

さて最近の投資行動について振り返ってみると

5月中旬 FA関連株ロングと自動車株のショートをクローズ
5月末  米国AI関連株ロング、半導体関連株のロング、自動車株のショートをクローズ
6月下旬 米ドルのロング開始
7月初旬 確定拠出年金の株式アローケーションの引き下げ
8月初旬 電気自動車関連ロング、先物ヘッジを開始

自動車株とFA・半導体製造装置関連株
6月の利上げはあるか?
米国バランスシート圧縮下での投資戦略
確定拠出年金の運用
電気自動車関連

これらの投資行動の背景は、目標に達したということもありますが、基本的には株式に弱気で米ドルは強気というとこからきていました。

バランスシート圧縮に伴う金利上昇というシナリオに沿った行動と言えます。しかし、実際には、冒頭のトランプ政権の混乱やインフレ率停滞のために、金利は低下しています。

 

このために現在米ドルのロングポジションは評価損を抱えているわけですが、FRBのバランスシート圧縮の姿勢は変わらないと思いますし、来年以降の利上げ姿勢も変更ないと考えています。

やっぱり中央銀行は、次の景気後退局面での手段を確保したいでしょうからね。またインフレ率についても、強い資源価格の動向から上昇圧力がかかるのではと思っています。

みんなが注目しているジャクソンホールでの発言ですが、むしろ「金融の安定」というテーマからすると、むしろ金融正常化に向けた姿勢を示すかもしれません。金利の上昇、少しだけ期待してみたいと思います。為替はどう動くでしょうかね。

8/26追記 金融政策への言及はありませんでした。そんな中で金利が低下したのは私みないなのが多かったからなのか? まだ暫く我慢といったところでしょうか。