株高、円安。それでも戦略はかわらず。

9月半ばから、日本株がなぞの上昇をしています。中国に対する関税の税率が当初よりも低いということで、織り込み済であったことから、ショートの買戻しを誘発したんだと思います。

しかし先物主導というわけではなく、しっかり現物に買いが入っていることから、大きなクジラ(GPIF)のアロケーションがあったのではないかと思っています。

日経平均

ドル円

米国株式から大きく出遅れていたことや、対中国の関税問題で影響が大きいと思われていたことから、日本株売りのポジションがたまっていたことが、この急激な上昇の燃料となったと思われます。

利上げ停止に向けた戦略

米国利上げ停止に向けた戦略の日本株売り、ドル売りポジションですが、おかげで評価損状態となっています。

まあ、大体において相場の天井が当てられないと思っています。相場の最終局面は、警戒と楽観を繰り返して、投資家の警戒が弛緩していくのが常です。

また、大きな相場の下落の前には大抵、事前に警戒のサインがでます。今回は2月の急落がそれにあたると考えていますが、その急落前の水準まで戻し、安心感が広がってきていると感じます。ジョージソロスも言っているバブル崩壊のプロセスのように思います。

米国の金利水準は、短期金利、超長期金利に遅れていた長期金利も再び3%を超えてきました。関税の影響がでてくる来年は、さらにインフレ圧力が増します。FEDの利上げもスケジュールどおり行われるでしょう。

状況は何も変わっていません。妙に高ぶることなく淡々と日本株の売りを追加していきます。

利上げ停止のシナリオ

メキシコに続きカナダが、米国とのNAFTA再交渉妥結に向けて前進したとの観測から、保護貿易圧力が和らぐとの期待から、円安、株高が進んでいます。

日本株の空売りも評価損となってきました。シナリオに大きく影響するものではないので、忍耐の期間ととらえています。

これを機会に今後の市場環境についていくつかのシナリオを考えてみます。

  1. 米国のバランスシート圧縮&利上げによる金融引き締め政策による弱気相場が先進国株式に広がる。
  2. 上記のリスクオフの状況となる前にFEDが金融引き締めを停止する。
  3. このまま金融引き締めを継続するが、適温相場が継続しリスクオンの状況が継続される。

1のシナリオが日本株空売りにとって最も適しているわけですが、2となった場合、リスクオンが継続され株高となりますが、強烈なドル安(円高)が日本株の上昇を抑制することになります。

3のシナリオが、このポジションのリスクシナリオとなりますが、現在の状況がそれにあたると思います。しかし、短期的なものにとどまるのではないかと考えます。

なぜなら、米国長期金利は上がらざる負えないと考えるからです。世界的な低金利、ドル還流の動きから、米国長期金利は3%を超えることなく安定しています。しかしながら、民間の需給が反映しやすい超長期債(20年、30年)の金利はじわじわ上昇してきています。金融引き締めの影響から住宅ローン金利の変動金利から長期固定金利への移行が、上昇圧力をかけているためです。従って、FEDによる政策金利の影響が大きい短期金利や需給の影響を受ける超長期金利が上昇する一方で、10年債金利が低位のままで推移することは考えずらいためです。

さらに関税の拡大によるインフレ上昇圧力も今後加わってくると思われますので、適温相場は長く続かないと思います。

1,2のシナリオでも利益が期待できるドル円の売り(円買い)のポジションを112円近傍で加えて、ポジションの強化を行いたいと思います。

日本株は24000円、円ドルは115円の水準までは耐えられるポジションとし、目標は株式2万円割れ、円ドル100円近傍としたいと思います。

 

トランプ、トルコ、チャイナ

2019年の米国の利上げ停止を予想して日経平均の空売りを8月2日に開始しましたが、その後、米国がトルコへの関税を強化したことによる通貨下落を背景として、マーケットもやや荒れ模様となっています。

当事国の米国の株価は、S&P500などは高値を更新するなど、気にする素振りをみせていませんが、為替が一時円高に振れるなどから、日経平均はやや弱含みました。

ただし本質的な原因はまったく別のところにあると考えています。これまでの記事を見ていただいてる方には、もうお分かりだと思いますが、米国の金融引き締め政策、特にバランスシート圧縮による資金の還流が、リスク資産から順次起こっていることが原因だと思います。

トルコリラ

トルコリラなどの新興国通貨はすでに大きく下落していました。今回の関税による下落はそれを加速させたにすぎません。通貨下落は、低貯蓄、経常赤字、高対外債務の通貨で起きやすいものです。南ア・ランド、インド・ルピー、アルゼンチン・ペソ、インドネシア・ルピアなどが代表的です。アルゼンチン>トルコ>南ア>インド>インドネシアといった順でしょうか?

トルコリラ(対米ドル)

通貨下落に対処するには、利上げによるインフレ抑制、IMFによる融資、国債の投資家救済策が主なものですが、トルコの独裁?になった大統領は、有効な手立てを何もしていません。くれぐれも値ごろ感だけで、トルコ通貨への投資は控えた方が賢明ですね。他の似たような通貨もまだ手出し無用と思っています。

地政学的には、トルコは要衝にあり、西側同盟国としてはトルコが、中ロへの接近することは非常に好ましくないと思います。

また、EUにとってはトルコは難民の関所となっていて、EU域内への過度な流入を抑えています。沈静化している難民問題に再び火をつけたくないドイツなどEU主要国にとってもトルコを西側にとどめたいと思われます。

これをたてにトルコの大統領は、トランプ大統領とチキンレースを行っているのでしょう。頑な大統領同士の争いの行方が興味深いです。互いのメンツを立てる方策を早急に立てるべきでしょう。

貿易戦争

8 月 23 日に、米国は対中制裁関税の第 2 弾を発動し、中国も負けずに同等の措置を取ることになりました。これにより互いに500億ドルの輸入に追加関税を課したことになります。さらに米国は来月、新たに 2000 億ドル分の追加関税を予定しています。

8 月 22-23 日には久しぶりに米中協議が行われましたが、いわゆる次官級協議なので、会合が持たれたことに意味があるでしょう。トランプ大統領としては、中間選挙に向けて攻めている印象としたいでしょうから、山場は中間選挙後にやってくるのではないでしょうか。問題は落としどころを互いに見つけられるかどうかでしょう。思いのほか政権外からも対中警戒論が高まってしまう可能性もあるためです。

結論としては、しばらく続くと見た方がいいということでしょうか。

さて、貿易戦争(保護貿易)は何をもたらすでしょうか。自国の産業が復活するなんてことは起こらないと思います。保護された産業は、本来生きながらえなかった産業です。より保護に甘えて生産性が伸びることはないでしょう。ゾンビ企業が増えて健全な企業の活力をそぐ結果になりますね。競争による生産性向上という米国経済最強の理由の一つが弱まることになるだけでしょう。

また貿易量が減り、通貨の切り下げが起こりやすくなります。製品の価格競争力を上げるにはもっとも簡単な方法です。

国境を越えたサプライチェーンシステムの変更を余儀なくされ、関税による価格上昇分を含めて価格に転嫁されていくことになります。つまり物価上昇が加速されます。

ろくなことがない政策のように思えますが、有権者への受けがいいということです。上記の問題点が露呈するには時間がかかりますし、中国株が下落する一方で、米国株が減税・規制緩和により、史上最高値近辺で保っているということで、貿易戦争は米国に有利という安心感があるためでしょう。

中国が知的財産権の保護を徹底し、特定産業への保護をやめることになれば、トランプ大統領万歳となるわけですが、中国が譲歩するとは思えないです。

上海総合指数

S&P500

2008年の金融危機から10年経過し、若いイケイケのファンドマネージャーが蔓延っていると推察してます。そろそろシャッフルが必要な時期でもあるでしょう。健全なマーケットには、多様性が必要です。

結局のところ、貿易戦争による象徴的な被害がくるまでは、貿易戦争の弊害を真剣に受け入れることはできないのではないでしょうか。そしてそれは、数年ということではなく数か月といったタームでしょう。思わぬインフレ率の上昇により、後追い的にFEDが利上げに追い込まれるかもしれません。

トランプ大統領

今のトランプ大統領の頭の中は中間選挙のことで占められていると思われます。対中貿易戦争、トルコに対する関税等々、まさに強いアメリカを有権者に見せる政策をとっています。TVで鍛えた視聴率男の面目躍如といったとこでしょう。

ここにきてロシア疑惑や不適切な交際をめぐるコーエン氏の司法取引は大きな痛手ではないでしょうか。弾劾という話まででてきました。

この劣勢を考慮すると、対外的な譲歩を示すという可能性はなくなりました。少なくとも中間選挙までは、強硬な姿勢を取り続けることになりそうです。

今後の方針

新興国通貨、新興国株式、先進国の小型株など順に値を下げてきています。残っているのは先進国株式くらいなものです。

現時点で色々なリスク要因がありますが、中でも対中貿易戦争が、FED利上げ停止へのトリガーとなる可能性が高いと思います。弱気を継続し、ポジションの積み増しを行います。

FEDが利上げを見送ったり、バランスシートの圧縮を緩めることが終了の条件ですが、はたして株式の下落なしに、これを行うことができるのか勝負です。もちろん、ロスカットは入れますけど。

 

 

2019年利上げ停止に向けて空売り開始

再度、米国長期金利が3%を超えました。前提としていた条件を満たしましたので、2019年の利上げの行き詰まりを見越した株価指数の空売りを開始しました。

ただし売り建てしたのは、ダウ下落の影響とそれに伴う円高の影響が大きい日経平均です。さらに停滞気味の中国経済の影響、米中貿易戦争の影響もより大きいと思われます。

ポジションとしては、一応手を付けた程度にしています。本格的に積み増すのは秋以降の予定、期間としては、来年の初旬程度までを予定しています。

第2四半期米国GDP

米商務省が27日に発表した第2・四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率換算で前期比4.1%増となりました。

事前予想の4.2%を下回る結果となりましたが、個人消費が前期から大きく回復し、輸出も牽引しました。予想を下回ったことや事前にトランプ大統領が良い結果を示唆していたために、織り込まれていた模様で、為替はややドル安に反応しましたが、総じて金融市場には大きな動きをもたらしませんでした。

では、いつものように、内容を確認してみましょう。

個人消費

米経済の3分の2以上を占める個人消費ですが、4.0%増と前期の0.5%から大きく回復しました。昨年まで好調な伸びを記録していましたので、前期の停滞から前年末並みに回復したことになります。

前にも述べましたが、GFC(グローバル・フィナンシャル・クライシス)以降、季節調整の影響で第1四半期に鈍化する傾向があり、正確に経済実態を表していない可能性もあると指摘しましたが、その可能性が高いのではないでしょうか。

内容では、自動車、医療費、公益費、食品、宿泊の支出が増えた模様です。減税の効果や好調な雇用状況が金利上昇の悪影響を抑えているのだと思います。

固定投資

固定資産投資は7.3%増。前期の11.5%から減速しました。

設備投資も3.9%増と、前期の8.5%から大きく減速しました。金利上昇に加えて、貿易戦争への懸念が企業の投資計画に影響を与えたのではないでしょうか。保護貿易の影響が大きいのは、企業経営者へのマインドに与える影響が大きいのだと思います。

住宅に関しても、-1.1%と前年比マイナスです。用地と熟練労働者のボトルネックから住宅供給不足が継続しているようです。これも自動車などの耐久消費財と同様に金利の影響を大きく受けます。

輸出入

輸出は、9.3%増、輸入は、ほぼ横ばいの0.5%増。トランプ政権による関税拡大による対米報復関税を睨み、発効前に輸出が前倒しされたようです。この好調な結果をそのまま鵜呑みにするのは危険だと思います。

政府支出

政府支出は、2.1%増。前期の1.5%から拡大しました。主な要因は軍事費。議会による債務上限の引き上げが行われたので、増加したのではないでしょうか。

まとめ

  • 米国GDPは予想を下回ったが、個人消費、輸出がけん引い、高い伸びを見せた。
  • 個人消費は、回復。減税・好調な雇用環境の効果が金利上昇の影響を抑えている。
  • 貿易戦争の影響から、輸出の駆け込みが見られ、持続的であるとは考えられない。
  • 同様に、貿易摩擦を懸念した企業設備投資の陰りがみられる。

 

金利の上昇に加えて、貿易戦争という悪手が加わりました。減税の効果と良好な雇用環境とのせめぎあいになると思います。

FEDは年内2回の利上げを実施するものと想定しますが、金利の上昇・保護貿易の影響から、来年前半には、GDPにも影響が現れてくるものと考えます。したがってFEDの想定する来年に3回の利上げは、実現不可能なのではないでしょうか。