米国株の反発

米国株が大きく反発している。既に昨年12月初旬の下落前の水準まで戻してきた。FRBの金融政策の緩和期待や対中経済対話の進展期待が大きなドライバーとなっている。

SP500

一方で日本株の戻りは米国株ほどに戻っていない。

日経平均

米国には金融緩和余地がある一方、日銀の金融政策にはもう手が残っていないことや、米国の金融緩和による円高圧力を警戒せざるを得ない。

日本株の空売りを行っている立場としては、この日本株の劣後に救われてはいるが、今後、大本の米国株式がのように推移するのかが重要になってくる。

米国の政府機関閉鎖の影響で、経済指標の発表が遅れているが、先日発表された小売売上高が歴史的に大きく低下したことなどからすると、徐々に実体経済の悪化が表面化しつつあると考えていいだろう。

現在のマーケットでは、これらの悪材料はむしろ金融緩和の材料として捉え、売り材料としていないために、株価が大きく戻しているわけだが、いずれ限界がくるのではないか。いよいよ金融緩和に舵をきるような局面において、もう一度下落する局面が訪れる可能性が高いと踏んでいる。その際には円高もセットでやってくると想定している。

2019年1月FOMC

1月29日から30日にかけて、米国の中央銀行に相当するFED(連邦準備制度)は金融政策決定会合(FOMC)を行なった。

会合の結果は、「政策金利が相応しいかを決定するにあたっては忍耐強くあるべきだ」とし、現状の政策金利を維持するというもので、想定された範囲のものであった。

年始の段階でパウエル議長は、バランスシート圧縮に関し、「市場の混乱の要因が、バランスシートだとは思っていないが、もし違った結論に達したら、方針の変更に躊躇しない。」と発言していた。

今回から加えられたバランスシート関連の発言は、「実体経済や金融市場の今後の動向によって、バランスシート正常化の完了計画について適宜変更する用意がある。更に、将来の経済状況によってより緩和的な金融政策が必要となった場合には、バランスシートのサイズ変更を含めたすべてのツールを利用する準備がある。」となっており、若干踏み込んだトーンになった。

昨年末の世界的な株価下落の圧力に屈し、市場に安心感を与えるために、このようなハト派的な発言を加えたということだろう。その甲斐もあって会合結果を受け、株価は上昇した一方で、ドル円は下落した。事前に想定されていたにも関わらず、素直に反応したといえる。

ただし重要なことは、FEDは何もしていないということである。金利を引き下げたわけでもなく、バランスシート圧縮のスピードを変えたわけでもない。粛々と市場からは、資金が引き上げられているのである。あくまで市場がさらに下落するまでは何もしないということを示したのである。

従って、株式の売り建て(ショート)及びドル円の売りポジションの手仕舞いはまだ先だと考えている。

 

株式・為替・金利概観

トランプ政権と議会との対立から過去最長の政府機関閉鎖、弱い企業業績、経済指標にもかかわらず、年始からの株式市場は値を戻してきている。これは年末にかけての急激な下落による反動やパウエル議長のハト派発言を受けてのものであるが、このまま反騰が継続していくのか、またそのほかの資産はどう動いて行くのかを簡単に検討してみたい。

株式市場

まず株式市場であるが、これまでも述べてきたように根本的な要因は、FRBによる金融引き締め、特にバランスシートの圧縮が原因である。中央銀行による膨大な資金供給(中央銀行バブル)の正常化を進めることは、市場からのドル資金の吸収であるので、低金利環境下で利回りを追及してきたリスクマネーがリスク資産から引き上げられるのは自然なことであろう。

バランスシート圧縮は株価下落の原因ではないとしていたパウエル議長が、市場の圧力に屈し、利上げ続行やバランスシート圧縮を見直すと表明したことで市場の下落圧力は一旦緩んだが、最終的には実際に金融引き締めを停止するまで、下落圧力は継続するのではないか。

為替

イギリスのブレグジットの混乱、ユーロ圏の経済不振によりドルは相対的に大きくドル安とはなっていない。ドルよりも問題のある通貨が多いので消去法的にドルが値持ちしているということだろう。しかしながら対円で考えると、今後パウエル議長の表明通り、金融引き締め停止に向かうとするならば、米金利低下によるドル安圧力は高まっていく。日本の金利はこれ以上下がらないので対円でのドル安は進んでいくのではないか。最終的には100円割れを想定している。

債券

国内債券金利は0.05~0.10%で推移しており、今後も金利が大きく上昇することはないだろう。かといって低下にも限界があるので金融資産としての魅力はほとんどない。一方、外国債券は米国債の金利低下による価格上昇期待は大きいものの、為替での円高リスクを考えれば、魅力的ではないように思う。

総じて悲観的な見方ばかりになったが、むしろ楽しみは増してきている。株式をバーゲンで買えるチャンスや強い円で外国資産を沢山買えるチャンスがやってくる可能性が高まっているわけだから。

パウエル議長、バランスシート正常化に言及

2019年の年始から世界の金融市場は大きく動いている。いくつかの注意すべきトピックがあったので簡単に考察してみたい。

尚、今年は更新の頻度を毎週火曜日に何らかの記事を取り上げ、マーケットが大きく動く、もしくは大きなニュースが出たときには随時更新していきたい。

では、日本の株式市場から見てみる。

大発会では、前日のアップルの下方修正を受けたニューヨークの株式市場の下落から、大きく値下がりしてスタートし、パウエル議長発言や中国の金融緩和の期待から大きく値を戻し、年末水準を回復してきている。

米国株式

さらに年始に大きく動いたのは、為替市場であった。アップルの下方修正からリスクオフの動きが懸念され、一時的に強烈な円高となった。プログラム売買による一方的な動きによるフラッシュクラッシュと呼ばれる現象が見られたようだ。

ドル円レート

年始のマーケットを動かしたトピックとしては以下のものが挙げられる。

  • アップルの下方修正
  • 中国人民銀行(中央銀行)の金融緩和
  • パウエル議長のバランスシート正常化に言及

まずアップルであるが、中国における売上の低迷から業績が下方修正された。これにより特に為替市場でリスクオフの動きを誘発したが、メディアによる”アップルショック”との煽りを受けたものではなかっただろうか。もともと中国の景気は減速しており、アップルの高価格戦略の不味さや米中貿易戦争の影響による自国製品へのシフトから想定されたものだと感じている。本質的には、中国の景気は減速しているということである。

次の中国人民銀行(中央銀行)の金融緩和であるが、 過去1年で5回目となる預金準備率の引き下げはサプライズではないが、1%ポイントの引き下げ幅は予想よりも大きかった。 これも中国の景気減速が想像以上に深刻であることの傍証だと思われる。トランプ政権にとっては、米中貿易協議を前に大きな譲歩を得られる可能性が増したと言えるだろう。現段階ではこの緩和のニュースは中国の景気減速の確認と言えるだけで、貿易協議が大きく進展し、景気減速に歯止めがかかる状況になるまでは 、株式を買う材料になり得ない。ただし、全人代を控えた中国が大幅な譲歩を見せるとも思えないのだが。

さて、最後はパウエル議長の発言である。昨年末のFOMCでは「バランスシート圧縮は問題ではない」と発言し、市場の期待を裏切っていたが、今回は、「市場の混乱の要因が、バランスシートだとは思っていないが、もし違った結論に達したら、方針の変更に躊躇しない。」とし、バランスシート圧縮の方針の変更の可能性に触れたのである。

発言自体よくわからないのだが、このタイミングで触れたということは、トランプ大統領にも解任をチラつかせられ、 株価の大幅な下落を背景にやむなく発言したと言える。

逆に言うと、この株価水準では、バランスシート圧縮の停止はしないということを表明したわけで、さらに下落した場合に方針の変更もあり得るということである。

こうした後追い発言は、大抵逆の動きになるものであるが、 この発言で株式が反発しているのは、昨年末からの下落スピードが急激であったために、短期的な反発の口実になっているからではないだろうか。

本質的には、バランスシート圧縮(金融引き締め)がリスクオフの原因であり、金利の上昇や株価の下落がようやく実体経済に悪影響を与え始めた状況になっているということである。あくまでバランスシート圧縮を停止するまで、現在のリスクオフ戦略(株の空売り、ドル円の売り)を継続したい。

FOMCとその後の市場動向

アメリカの中央銀行である連邦準備制度(FED)は、金融政策決定会合であるFOMCを開催した。政策金利を0.25%引き上げ、政策金利を2.00%-2.25%とし、今後の金融政策の指針であるドットチャートでは、前回3回としていた来年の利上げ回数を2回に修正した。

市場は利上げは織り込んでいたものの、よりハト派的(より引き締めに対して柔軟)な態度への転換を期待していたために、急落する結果となった。

米国株式(S&P500)

市場が望んでいたのは、利上げ回数の減少といった程度のものではなく、利上げの停止、バランスシート圧縮の停止の可能性まで踏み込んだものであったのではないだろうか。

むしろパウエル議長は、バランスシート圧縮の方針は変わらないとしており、記者からの質問に答える形とはいえ、火に油を注いだ形となった。

また、FOMCを受けて長期金利が低下したため、ようやく為替もドル安へと動いた。

円ドルレート

米国国債10年金利

米国株式の急落、円高を受けて日本の株式市場も当然のように下落している。

日経平均

ようやく今年8月から始まった株式の弱気戦略が利益を生み出してきた。米国長期金利が3%を超えたところで最初の売り建てを行い、高値更新する中で淡々と積み増しを行ってきた成果が現れてきた。得られた経験としてはピンポイントでの天井を的中することは困難であるが、天井圏であるということが予測できているかどうかが重要であるということだろう。その中で短期的な含み損に怯むことなく、市場環境を見定めていくことに集中したことが良かったと感じている。

今後の方針
現段階では、FEDにバランスシート圧縮の停止の意思がないことが、確認できたことから、当面はこの弱気相場が継続して行くのではないだろうか。今後、利上げ停止→バランスシート圧縮停止というアクションを市場がせがむように下落すると想定している。当面、日本株の売り建て、ドル円の売り建てポジションはキープしていきたい。

下値の目途としては、株式市場が大きく下落してバリュエーション上割安な状況、例えばバフェット指数で1を割る状況(株式時価総額/名目GDP<1)となる水準が目標かもしれない。現在の水準から20%程度下落する必要はあるが。