米国第4四半期GDP確報値

米商務省が30日に発表した昨年第4四半期の米実質国内総生産(GDP)確定値は、上方修正されました。実質GDP確定値は前期比年率2.1%増と、速報値の1.9%増から上方修正され、予想中央値の2%を超えるものとなりました。

米国GDPで大きな部分を占める個人消費は3.5%増と、3%増から大きく修正されました。一方、輸出が下方、輸入は上方修正となり、純輸出は下方修正となりました。在庫は上方修正されました。

これを受けドル円レートは、111円近傍から111.80辺りまで上昇し、10年国債金利も2.38%から2.42%へと上昇しました。

米国のファンダメンタルは今のところ強いですね。個人消費の上振れは正直驚きですが、今後は、金利の上昇が住宅や自動車あたりに影響を少なからず与えると思います。今後はトランプ減税の進展がマーケットを支える鍵となるのではないでしょうか。

マーケットはしばらく為替、金利、株式ともボックス圏での動きとなってしまうのではないかと想定しています。

減税の財源である国境税(国境調整税)は、ドル高要因と考えられますので、具体的な内容が表面化した場合は、レンジを抜けるかもしれません。ムニューチン財務長官は、8月が目途と言っているので、まだ時間がかかるかもしれませんね。

政治家でないトランプ大統領の議会調整能力の成長を楽しみに見てみましょう。

オバマケア代替法案の延期が示すもの

共和党によるオバマケア代替法案は、23日の採決予定から24日に延期され、さらに24日の採決も見送られました。当然、民主党は大反対。共和党も下院の多数を占めているとはいえ、共和党内でも穏健派と右派と別れており、一筋縄ではいかないようです。

もともとオバマケア(医療改革法案)は無保険者を救うために無理やり、民間の保険会社に加入させるというものです。当然、そんなことをすれば保険料が増大し、割をくう富裕層からは評判が悪くなります。貧困層を救うという大義名分ですが、内容はお粗末なものです。共和党は廃止にしたいわけですが、もとに戻すには「忘れ去られた人々」を無視して無保険者にすることになりますから、撤廃ではなく手直しで対応するのですね。

しかし、共和党にはティーパーティーのような小さな政府を標榜する右派がいますので、この議員たちを説得する必要があるわけです。

さて問題は、このように上下両院で多数を握っていても、共和党政権で「減税・インフラ投資」といったトランプ政権の経済政策が進められるのか?ということです。

こうした疑念から、株式市場は下落し、為替はドル安に動いています。期待で動いてきた分、現実を見るにつけ修正をするということでしょう。

さすがトランプ大統領は、すぐさま次は減税法案だということで市場の期待をつないでいます。減税は共和党の共通理念なのでインフラ投資よりも進めやすいと思いますが、インフラ投資は、多額の予算が必要になるのでオバマケア代替法案よりも困難です。

なかなか危険な状況になってきました。FEDが空気を読まずにバックミラーだけを見て利上げに走り、民主党はとにかく反対と叫び、共和党は分裂したまま、あゆみ寄らないままだと、株式は下げるしかありません。その確率が上がっているように思います。

まだ、マクロ戦略は静観が正解なのですかね。「木を見て森を見ず」戦略で、日本株のロングショートのウエイトを上げて、しのいでいくことにします。

2017年3月FOMC

利上げ決定

大方の予想どおりFED(連邦準備制度)はFOMC会合で利上げを決定しました。2008年来で3回目の利上げとなります。

今回に関しては、事前のFEDのタカ派的な態度から、利上げに関しては織り込み済であり、市場は、結果と同時に発表される声明文に注目していました。

結果から言えば企業の投資活動に関していくらか強まったというように変更された程度で、大きくタカ派的になったとは言えませんでした。

ただし、今後の政策金利の予想推移をしましたドットプロットは、今年が3回となっており、変更がありませんでしたが、来年は2回から3回へと変化しよりタカ派的となったといえるでしょう。

一方で市場の反応ですが、米国長期金利は2.6%から2.5%と低下し、円ドルレートも113円台に下落しました。利上げが決定されたにも関わらず、市場は反対の反応を示しました。市場の予想はよりタカ派的なものを予想していたということですね。

昨年末以来、トランプ政権の経済政策を期待して、長期金利は大きく上昇し、円ドルレート、株式も上昇しました。大きく傾いた投資家のポジション調整が、今回の利上げのタイミングで行われたということだと思います。

トランプ政権の経済政策は間に合うのか?

FEDのトッドプロットに示されているように年内に2回の利上げが行なわれた場合、金利の上昇はどのような影響を経済に与えるでしょうか。

前期に金利上昇の影響で駆け込み需要が見られた住宅投資や、減速気味の自動車販売など、ローン金利の上昇を通じてマイナスの影響を与えると思います。

今後、ドル高がさらに進めば輸出もさらに鈍ることになるでしょう。これらを相殺させるのは、トランプ政策の目玉である減税と財政支出であるわけですが、想定よりも進捗していないと思われます。議会での決定事項ですので、大統領令のようにはいかないようですね。

これらの政策が進展しないまま、金利上昇の悪影響がでるような事態となれば、株式は調整せざるを得ないと思います。期待だけで株価が維持できるのは、それほど長い期間ではないでしょうね。

減税・財政出動の政策進展を期待するには、少しリスクがあるのではないでしょうか。今は静観しながら、政策が動き出すタイミングと円ドルレート、株式の水準を見ながら、エントリーのタイミングを探りたいと思います。

動かない

米国では無事にトランプ大統領の議会演説が終わり、FRBの3月利上げ見通しが急速に高まりました。トランプ政権でのインフラ投資や減税の期待は維持されていますが、実行されるまでのハードルがあるのも事実です。

これを受けて株式・為替市場はどうにも動かなくなってしまいました。米国債はジワリ2.5%近傍まで上昇していますが、あまり反応していません。3月FOMCでの利上げはほぼ織り込んでいる状況だと思いますので、しばらくは、こうした状況が続くのではないでしょうか。

相場としては、トランプ大統領の発言(ツーイッター)次第で動く、非常に不安定な状況ですので、大きくポジションをとることは困難です。ユーロ圏での政治状況もリスク要因です。こういった状況では、細かくポジションを調整しながら、利益を確定していくことが大切ですね。

日本株でのFA関連株、半導体関連株のロング、自動車株のショートをポジションとして保有していますが、利益のターゲットの到達したものから、順次利益確定したいと思います。

グローバルマクロ戦略では、円ドルのロングだけ保有していますが、一旦クローズしたいと思います。若干利益が出た水準ですが、仕方ありません。当初の予想よりもトランプ大統領のインフラ、減税政策の進展が遅いことがクローズの理由です。今後に再度エントリーするタイミングを探っていきたいと思います。

一般教書演説

2月28日のトランプ大統領の一般教書演説(就任初年度は議会合同演説というらしいです)に注目が集まっています。焦点は、驚くべき減税策の内容や国境税でしょう。しかもこの演説が、日本時間で3月1日(水)の午前11時から始まるということです。Brexitも大統領選挙も同じ状況でしたね。最初に日本市場が試されるというのは勘弁してもらいたいものです。

減税・国境税

トランプ大統領が言っている法人減税15%が本当に実現できるのか?ですが、税制を決めるのは議会ですから、トランプ大統領がいくら言っても、実現できるかわからないのです。

ただ、大統領が明確に方針を決めて、閣僚に共和党主流派を取り込むなど議会対策も行っていることから、何もできないと決めつけて冷めた視線を向けるのはリスクがあると思います。たぶん演説では、具体的な数字の入った内容は出てこないと思っていますが、大まかなアウトラインを示すに留まるのではないでしょうか。

減税の財源として、国境税を導入することが考えられます。消費税のない米国では国境調整税と呼ぶのかもしれませんが、輸入に課税、輸出は非課税ということになりますので、米国消費者には増税、インフレ要因になりますし、貿易赤字縮小ということから、ドル高ということになります。つまり法人税減税は、企業業績を伸ばすことから株高となり、国境税はドル高をもたらすと考えられます。

米国株はこれを期待して上がっているのですが、長期金利の上昇は途中で止まっています。市場はトランプ政権の政策について疑問視しながらも企業にはプラスと考えているということでしょうか。昔から株式投資家は楽観的で債券投資家は慎重な人が多いので、こういうことがたまにあります。大体において債券投資家の方が正しいのですが、今回はどうでしょうか。

いずれにしても、米国の金利動向が、為替、株の動向を決めると思われます。現在の金利水準は、米国株にとって高過ぎる水準ではないと思います。演説の内容にもよりますが、材料出尽くし、期待はずれで大きく株式が下落するようであれば、買い向かってもいいかなと思っています。

超長期債の発行は株式にとってはリスク?

しかし、大きなリスクとなり得るのが、ムニューチン財務長官が言及した超長期国債の発行です。この低金利を利用してインフラ投資、減税の財源として発行することは、非常に合理的で正しいことだと思いますが、発行した場合の利回り水準次第では、株式のバリュエーションとの比較から、株式からの逃避が始まるトリガーになるかもしれません。

発行に際し、当初、株式はインフラ投資、減税の実現可能性の向上から、上昇すると思いますが、その後大きな下落が待ち受けているかもしれません。これには今後も大きな注意を払っていきたいと思います。