第1四半期米国GDP

米商務省が28日発表した2017年1~3月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、前期比年率換算で0.7%増。事前予想は1.0%と前四半期の2.1%から鈍化する見通しでした。予想を下回る結果となりましたが、事前の自動車販売や景況感指数などの鈍化から、弱い数字が想定されており、市場には織り込まれていたようです。為替市場に大きな変動もありませんでした。

今後、FOMCや雇用統計を控えており様子見といったところだったのでしょうか。雇用コスト指数が+0.8%となり前回の+0.5%を上回ったことで、景気拡大が維持されると判断されたようです。

では、内容を確認してみましょう。

個人消費

大きなウエイトを占める個人消費ですが、0.3%増となりました。前期の3.5%増から大幅に減速しました。事前に自動車販売が減速していることが確認されていましたが、これに前期の大幅な伸びの反動が加わったと思われます。一方、雇用コストが高い伸びを示しているため、賃金の伸びによる第2四半期の回復が期待されています。

固定投資

設備投資は9.4%増。非常に高い伸びとなりました。依然、原油価格の回復による関連投資が増えたものと思われます。4四半期連続となり力強さを見せる結果でした。住宅投資は13.7%増と大幅なプラス。金利の先高観の影響からか、2四半期連続の高い伸びを示しました。企業活動は活発ということですが、原油相場の上昇も一服ということでさらなる増加も考えにくいです。

輸出入

輸出は、5.8%増、輸入は、4.1%増。前期の貿易赤字から黒字へ転換。前期は大統領選後のドル高の影響と考えていましたが、今期はドル高が是正された期間でもあり、輸出増は通貨安によるものと考えられます。

政府支出

政府支出は1.7%のマイナスとなりました。トランプ政権の政策がいまだ進んでいないので当然の結果ですね。

まとめ

・米国GDPは、急減速。しかし季節調整のバイアスの影響や高い雇用コストの伸びをはやして市場は静観。

・個人消費の減速が一時的であるか注意が必要。

・企業活動は活発だが、資源関係の投資のさらなる伸びは不透明。

・政策進展による政府支出はいまだ期待できない。

金利上昇による自動車になどの耐久消費財の消費減速や、輸出が通貨変動の影響を受けていることを考えれば、さらなる金利上昇は困難なのかもしれません。政府支出が景気を支える状況になるまでは、現状の金利水準は維持され、為替も大きくドル高で進むことはないと考えます。しばらくは、トランプ政権の経済政策の実現待ちに変更はありません。

トランプ減税

トランプ政権は26日、法人税減税や海外利益に対する税率引き下げなどの税制改革案の概要を発表しました。就任前から法人税を15%にすると言っていましたが、この概要の中でもそのまま維持されています。減税の財源として国境税を導入すると見られていましたが見送られています。ムニューチン財務長官によると財源は、経済成長に伴う歳入増や法の抜け穴をふさぐことなどによって賄われるとしています。

共和党保守派を懐柔?

一部報道では、オバマケア代替法案に反対していた共和党保守派が軟化し、オバマケア代替法案の修正に協力するとも報じられています。だとすると前に指摘したようにシリア攻撃やアフガニスタン・タリバンへの強力爆弾攻撃、対北朝鮮への強硬姿勢などで共和党保守派の懐柔に成功したのでしょう。

減税の財源は?

巨額の財源は、ムニューチン財務長官が述べている通りにはいかないと思います。税率を引き上げるか、超長期債の発行が必要になるのではないでしょうか。ならばFRBに対するトランプ大統領の変節も納得がいきます。就任前はFRBに対し、早期の政策金利の引き上げを唱えていましたが、超長期債の発行は低金利の方が、都合がいいので、現状のFRBを信任すると発言したのだと思います。

株式市場への影響

高値水準にある株式市場にとっては、減税は必要不可欠なので、この改革案の発表は良かったと思います。当面、ドル高要因である国境税の導入を見送ったことで、急激なドル高も避けられました。したがってリスクは、実現までの時間でしょう。減税への期待を維持しつつ、経済の減速に耐えることができるかということになります。フランス大統領選挙が無事通過した場合には、個人的には株式市場の大きな調整は当面はないと考えています。米株のロングを増やし、日本株ではFA関連、半導体製造装置関連のロング、自動車株のショートを継続したいと思います。ただし、超長期債の発行が決定されれば警戒せざるを得ないですので、そういった発言が政府高官から出るようであれば、見直しを行いたいます。

 

フランス大統領選挙

明日、第一回目の投票結果がでますね。またしても日本市場が最初に影響を受けるマーケットになります。ブレグジット、アメリカ大統領選挙と日本人は何かと鍛えられます。さて選挙ですが、新聞報道のとおり大混戦のようです。これに合わせたISのパリ・シャンゼリゼでのテロなどもあり混沌としてきました。マーケットはEU離脱派の勝利の目が増した場合には、リスク回避ということでユーロ安、円高、株安で応じることになるでしょう。しかし、リスクはどうなるのかわからないのがリスクなので、ある程度結末が見えたところではもはやリスクではなくなります。慌てない行動を心がけたいものです。

ブレグジット

イギリスでの国民投票の結果、イギリスはEU離脱を選択しました。もともと統一通貨を導入していないし、国境が陸続きではないこともEU離脱へのハードルが低かったのかもしれませんが、何より英国人の気質が影響したのではないでしょうか。かつての大英帝国の誇りが巨大なEU官僚主義に打ち勝ったのだと思います。

フレグジット?

フランスでの問題は、若者の高い失業率が問題の一つですが、これはEUの移民政策が影響していると思います。難民を受け入れるという大義を掲げていますが、実態は安価な労働力として移民政策がとられているわけです。ドイツのように安いユーロが競争力につながるような輸出主導経済の国では、景気拡大による労働需要の拡大があり、安い労働力は必要になります。フランスの高い失業率を見ると、フランスでは国内景気が良くないわりに移民の流入が多いということなのでしょう。

 EUの未来

統一通貨、共通の移民政策の一方、個別財政という仕組みは、無理があるように思います。ましてや巨大な官僚機構を必要とするような組織には悲観的にならざるを得ません。今回、フランスがどうなるかわかりませんが、将来的には離脱していくところが出てくるのではないでしょうか? 気が付いたらドイツだけってことになったら、ユーロ(マルク)は暴騰するのでしょうかね。別な機会に検討してみたいと思います。

トランプ政権の変容

トランプ政権は、シリアに引き続き、アフガニスタンのISIL拠点にも攻撃を加えました。対北朝鮮でも強硬な姿勢を示し、半島周辺では緊張感が高まっています。これを受けて為替は、円高に推移し、株式は調整色を強める結果となっています。

アメリカファーストを唱えて大統領になったトランプ氏ですが、ここにきて大きく方針を変更しています。比較的容易に通ると思われていたオバマケアの代替法案が、共和党保守派の反対により、一度断念せざる負えなくなりました。共和党保守派の同調を得るために、シリア攻撃に踏み切ったのでしょう。また、イエレンFRB議長に対しては、当選前にさんざん再選はないとまで言っていわわけですが、ここにきて「尊敬している」とまで言い、再選も匂わすようになっています。思ったように経済政策が進まないことから、景気失速を回避するために、FRBには緩和的な姿勢を維持してほしいということなのでしょう。

トランプ大統領の最大の特徴は、こういった臨機応変さ、悪く言えばご都合主義です。これからもこうした変節があることでしょうから、予断をもって考えないことが大事ですね。

さて現状の投資環境は、当初の想定から大きくかい離したわけですが、マクロ戦略は奇跡的に損失を免れています。想定と異なるなる事態となるごとに、その都度ポジションをクローズしていったことが結果的に良かったわけです。あらためて事前に取り決めた通りに行動することの大事さを痛感しています。

今後ですが、最大の焦点は減税策(法人税)が実現するかどうかです。企業のアニマルスピリッツを掻き立てるには一番の方法であり、直接的に企業利益を増価させることが可能であるからです。この政策が実現しないと株式は今の水準を維持できないと思っています。

トランプ大統領は一度断念したオバマケア代替法案に再度取り組むために、減税を後回しにすると発言しました。これは減税の財源を確保する必要があるためですが、一連の変節により、対立している共和党保守派との和解に目途がついたということかもしれません。

であるならば減税の実現可能性があがるわけですが、実現までには時間がよりかかるということですし、緊張の高まっている北朝鮮との関係も見ていく必要があります。

予断を持たずに、キャッシュポジションを高めて事態の推移を丁寧に考察し、戦略の練り直しをして行こうと思っています。

 

米国の景気指標 - 自動車販売

FRBが3回目の利上げを実施し、今後年内2回の利上げを織り込んでいる金融市場ですが、トランプ政権の経済政策の進展に暗雲が漂う状況において、調整を余儀なくされています。

オバマケアの修正案の延期にみられるように、トランプ政権は共和党保守派との対立から、議会を説得して政策を通すことに成功しておりません。今後は減税に取り組むとのことですが、ムニューチン財務長官は8月くらいが山場と示唆しています。

しばらくは政策の空白期間が生じますが、この間に金利上昇の影響が懸念されます。

 米国3月自動車販売

調査会社オートデータによると、自動車各社が発表した3月の米販売台数は年率1662万台と市場予想の1730万台を下回りました。トランプ大統領就任前から減速するのではないかと見ていた自動車販売ですが、少なからず金利上昇の影響がでてきたようです。

FA関連と半導体製造装置関連をロング、自動車株をショートというポジションを保有しており、反対売買のタイミングをはかっていましたが、米自動車販売の状況や政策の進展の遅延から、まだしばらくは保有しようと思います。