2017年9月FOMC

9月20日、FED(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利の現状維持、また「バランスシートの圧縮」については10月より行うことを決定しました。同時に将来の利上げを示すドットチャートは、年内1回、2018年は3回との見方を示しています。また、最近の弱いインフレの状況が年内には消える公算が大きいとの見通しを示しました。全般的にややタカ派的な発言であり、これを受けて米長期金利は上昇し、ドルが強含みました。

ドル円は、ここしばらく弱い米国のインフレ指標による長期金利の低下とともにドル安となり、北朝鮮のミサイル、核実験問題のたびに弱含む展開が続いていました。

トランプ政権と民主党

ようやく北朝鮮問題への感応度が低下し、トランプ米大統領が、ハリケーン「ハービー」の救済措置と債務上限の3カ月引き上げを一本化する民主党案への支持を表明したことにより、トランプ政権の減税、インフラ投資への期待が高まり、ドルを押し上げることになりました。

これは小さな政府を標榜する共和党保守派との決別を示した可能性があり、大きな転換となるかもしれないと思っています。なぜなら大きな政府が好きな民主党と手を握るということは、選挙公約である減税とインフラ投資の実現性が高まるからです。共和党保守派に対しても大きなプレッシャーを与えることになります。

ポジション完成

とにかくドル円の水準が112円に戻ったことは素直に喜びたいと思います。ドル円のポジションも計画通り完成しました。北朝鮮のミサイルのおかげで買いコストも低くすることができました。今後は、トランプ政権の減税の行方がどうなるかを注意深く見守っていきたいと思います。

株式市場は?

当初、バランスシート圧縮開始による金利上昇圧力から高値圏にある株式市場は、調整が必要となると予想して、ポジションを落としました。しかしながら弱いインフレ指標の影響から米国長期金利はむしろ低下し、昨日のタカ派的なFOMCの結果に対してもダウは高値をい更新してみせました。考えている危険な金利水準(2.7%程度)まではまだ距離があるので、株式の調整は先延ばしされていると考えています。株式に関しては、しばらくウォッチを継続したいと思います。

ポジションの点検

北朝鮮のミサイル・核実験をめぐって、金融市場が動揺しています。米国債券市場では10年債金利が低下し、為替もドル安に振れています。株式市場もレーバーデー明けの5日に200ドル超下げるなどしています。

ドル円

バランスシート圧縮を睨んでドル円の買いポジションを保有していますが、評価損を抱えた状況となっています。目標ポジションの50%程度の保有中なので追加のポジションをどうするか検討してみます。

そもそも今回のドル安は、米国のインフレ率が低迷する中で、FEDの態度がハト派的なものになってきたことが大きなものでした。これにより米国の金利も低下しています。

インフレ率の低迷は、処方箋、携帯電話のプランの分野での一時的なもので(クリーブランド連銀メスター総裁)、商品市況の動向などを見る限り、いずれ上昇圧力がかかってくるものと思います。

また、FEDがバランスシート圧縮を先延ばしする状況でもないように思います。ただし、ハリケーンの影響がどこまで拡大するかが懸念しています。経済の停滞をもたらすような大きな被害になるようですと、金利の低迷は避けられないからです。

ただしこのことは、債務上限問題について政権と議会の合意を促すということから、中立ではないかとも思います。債務上限問題が暗礁に乗り上げれば、米国国債の格下げを通じて、リスクオフの結果、逆に国債金利が低下することになると考えられるからです。

市場は現在、長期金利2.09%、年内の利上げ確率25%程度となっており、かなり市場はハト派に傾いています。この点でもうすでに上記の懸念は、織り込み済であると思えるので、むしろ地政学リスクでリスクオフになった場合には、ポジション積み増しの機会と捉えたいと思います。

株式市場

バランスシート圧縮に伴う金利上昇を見越して、株式の調整を予想しましたが、思わぬ金利低下により株価は持ちこたえています。金利の上昇が先延ばしされた分、株価もボックス圏で動くと想定しています。また、地政学リスクによる下落は、買いのチャンスではないかと思います。

電気自動車関連

中国での電気自動車の普及や日産の新型ノートの発売から、電気自動車関連の業績も動いてきました。株価も急騰、調整を繰り返しながら、順調に上昇しています。ただし株価が急騰している銘柄は、一部売却も行いたいと思います。

 

ジャクソンホール直前の雑感

株式市場がやや頭打ちとなっています。

ジャクソンホールでのイエレン議長、ドラギ総裁の発言を見極めたいとする向きが多い中で、トランプ政権の混乱や北朝鮮問題などの懸念材料があふれているためです。トランプ政権の混乱は、ステーヴ・バノン主席戦略官の辞任、ヴァージニア州のシャーロッツビルでの白人至上主義者と反対派との衝突によるトランプ大統領の発言、米国の債務上限問題と盛りだくさんで、政権の政策進展が懸念されます。

トランプ大統領はなかなか一筋縄ではいかないですね。ただし、熱烈な支持者であるラストベルトの人々の支持を失わないように行動するというところは一貫しています。

さて最近の投資行動について振り返ってみると

5月中旬 FA関連株ロングと自動車株のショートをクローズ
5月末  米国AI関連株ロング、半導体関連株のロング、自動車株のショートをクローズ
6月下旬 米ドルのロング開始
7月初旬 確定拠出年金の株式アローケーションの引き下げ
8月初旬 電気自動車関連ロング、先物ヘッジを開始

自動車株とFA・半導体製造装置関連株
6月の利上げはあるか?
米国バランスシート圧縮下での投資戦略
確定拠出年金の運用
電気自動車関連

これらの投資行動の背景は、目標に達したということもありますが、基本的には株式に弱気で米ドルは強気というとこからきていました。

バランスシート圧縮に伴う金利上昇というシナリオに沿った行動と言えます。しかし、実際には、冒頭のトランプ政権の混乱やインフレ率停滞のために、金利は低下しています。

 

このために現在米ドルのロングポジションは評価損を抱えているわけですが、FRBのバランスシート圧縮の姿勢は変わらないと思いますし、来年以降の利上げ姿勢も変更ないと考えています。

やっぱり中央銀行は、次の景気後退局面での手段を確保したいでしょうからね。またインフレ率についても、強い資源価格の動向から上昇圧力がかかるのではと思っています。

みんなが注目しているジャクソンホールでの発言ですが、むしろ「金融の安定」というテーマからすると、むしろ金融正常化に向けた姿勢を示すかもしれません。金利の上昇、少しだけ期待してみたいと思います。為替はどう動くでしょうかね。

8/26追記 金融政策への言及はありませんでした。そんな中で金利が低下したのは私みないなのが多かったからなのか? まだ暫く我慢といったところでしょうか。 

第2四半期日本GDP

2017年4-6月 日本GDP速報

内閣府が2017年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値を発表しました。

GDPは、6四半期連続のプラス成長の4.0%(前期比年率換算)。事前予想(2.5%)を大きく上回りました。

牽引役は、内需で個人消費と設備投資。名目でも4.6%と2四半期ぶりのプラスとなっています。

個人消費は、1.9%、設備投資は、1.5%の寄与。輸出は、▲0.3%と3四半期ぶりにマイナスとなりました。政府支出や住宅投資は、それぞれ0.3%、0.2%とプラスを維持しました。

個人消費の高い貢献は驚きでした。設備投資は、FA関連企業、半導体関連企業の業績から大きく寄与するのではないかと考えていましたが、消費関連企業の決算からは、消費の高い伸びは予想できませんでした。賃金の伸びが見られない中で、個人消費の高い伸びの継続にはまだ疑問があります。

設備投資は、好調な世界経済の動向を受けてのことだと思います。世界経済は、米国の個人消費に左右されますので、この動向に注視したいですね。

米国インフレ率の低迷

現在のポジションは、長期保有のバイオ株のロング、ペアトレーディング型のロング・ショートと打診的にとった電気自動車関連のロングと先物ショートポジション、ドルのロングポジションとなっています。電気自動車関連は、目標の20%程度のポジションでこれからチャンスを見て増やしていこうと思っています。

問題はドルのロングポジションですが、目標の半分程度買って様子見しています。米国のバランスシート圧縮のシナリオから、米国金利上昇、株式の調整を睨んで、ドルの買い入れ、米株の売却を行ったわけですが、裏目に出ています。最大の誤算は、米国長期金利が低下していることです。

これは最近のインフレ率が低下してきているためです。このインフレ率の低下により、バランスシート圧縮開始が予想されているにもかかわらず、物価の安定を目標とするFEDが利上げの手を緩めるのではないかといった見方から、金利が低下しています。7月には半々であった利上げの予想確率も40%程度まで下がっています。

利上げについては、バランスシート圧縮を開始するために年内の利上げが見送られる公算が高いと想定していましたが、市場の利上げ期待は維持されるものと思っていました。問題は「インフレ率の低下は今後も続くのか」ということでしょう。

クリーブランド連銀のメスター総裁によると「処方箋や携帯電話の契約プランなどの分野におけるインフレ率の低迷は、数か月居座るだろうが、こうしたものは通常、消費者物価全般におけるダウントレンドを示唆するものではない。」ということで、一時的なものであるとFEDは認識しているようです。

結論

他の経済指標や原油価格の動向との整合性から、個人的にも同意したいと思います。大きな上昇はないにしても、今後も継続して、これほどインフレ率が低迷するとは思えません。

従って、現在は北朝鮮問題によるリスク回避の円高とECBの量的緩和政策の転換期待からドルが売られやすい状況となっていますが、ドルロングの残り半分のポジションは、9月FOMCでバランスシート圧縮が開始されたときに実行したいと思います。

また米国の株式ですが、企業収益の伸びはまずまずであることから、大きな急落はないと考えています。しかしながらトランプ政権の減税、インフラ投資政策の遅れから、まだ暫くは調整が継続するものと思っています。