オバマケア改廃再び

18日、米上院共和党による医療保険制度改革(オバマケア)改廃への取り組みは、新たに党内から2人の造反が出たことで頓挫しました。

減税、インフラ投資といったトランプ政権が掲げる成長戦略の実施についても不透明感が高まったことで、トランプ政権の政策実現能力に再び疑問が生じ、金利低下、ドルが売られる展開となりました。

共和党のマコネル上院院内総務は、代替法案の可決が見込めなくなったことで、まずオバマケアを廃止する法案の採決に踏み切る構えを示しましたが、これも反対する議員が出てきたことで困難な状況にあります。オバマケアの廃案は共和党の悲願であるにもかかわらず、こうした状況になるのは本当に問題だと思います。

先日のイエレン議長の議会証言でのハト派な態度、弱い物価指数、小売り売上高と米ドルにとってはネガティブな状況となっています。一方で、株式市場は利上げの遅延期待から高値を更新しています。株式が上昇しているということは、トランプ政権の政策実現能力のなさについては、株式市場参加者は織り込んでるということなのでしょうか。

米国のバランスシート圧縮に伴う、金融引き締めを警戒して、株のポジションを落としたわけですが、本当に売り場は難しいですね。今回も早く下車してしまったようです。ドルもFOMC後の水準近くまで下がってきました。ほぼ買コストの水準です。

2017年6月FOMC

米国バランスシート圧縮下での投資戦略

ただし、弱いインフレ指標、強い株価の組み合わせには違和感があります。またFRBは、年内の利上げを見送るかもしれませんが、バランスシート圧縮は進めるのではないかと思っていますので、現状のポジションを維持していきたいと思います。

 

イエレンFRB議長の議会証言

イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は14日、上院銀行委員会で半期に一度の証言を行いました。他の連銀理事たちが、利上げ・バランスシート圧縮に前向きなタカ派的な発言をしていましたので、バランスをとることが非常に得意なイエレン議長はどのような発言をするのか注目しておりました。

最近の経済指標は、ISM製造業景況感指、ISM非製造業景況感指数と米雇用統計の非農業部門雇用者数などは良好な結果を示しましたが、賃金の伸びやインフレ率、個人消費などが伸び悩みを示しています。

こうした状況を踏まえて、「米国のインフレ率が目標を下回り続けている状況下で当局は政策引き締めを急がない」とハト派的な姿勢を見せて、特に株式市場関係者を安心させることに成功したようです。

為替は、対円で112円台まで下落、長期債金利も、2.3%前半まで低下。株式市場は高値を更新しました。

やはりイエレン議長は、バランサーでしたね。今後も市場にショックを与えないように、うまく発言をコントロールしながら、金融正常化を進めていくことを目指すのでしょう。

しかしながら、9年間続いてきた金融緩和から、インフレ率と経済成長を最適なバランスで金融引き締めをするという、非常に困難な仕事を市場と対話しながら行うというのは、非常に困難なミッションであるように思えます。明確に金融引き締めへと舵を切っているわけですから、注意深く運用していくことが大事だと思っています。ドルの安いところをとらえてドル買ポジションを増やしていこうと思っています。

 

2017年6月FOMC

6月14日、FED(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利の0.25%の引き上げを決定しました。この引き上げは、ほぼ予想どおり、むしろ関心は「バランシートの圧縮」であったと言えるでしょう。これに関して、イエレン議長は年内のバランスシートの圧縮に着手する方針を明らかにしました。最近の弱い経済指標と比較するとタカ派的な発言です。また将来の利上げを示すドットチャートは変更なく年内1-2回の利上げを見込んでいます。

反応しない長期金利

長期金利は、FOMC前に発表のあった弱い小売売上高と消費者物価指数の影響で急落し、FOMCでの利上げの発表後の戻りも限定的なものになり、2.138%(15日17時現在)で推移しています。FRBのタカ派的な行動に対して、市場はトランプ政権の経済政策の遅れに注意を払っているようです。一方で、株式市場は経済政策の遅れよりも低金利持続に注目し、高値を更新しています。前にも書きましたが、「債券の運用者は悲観的で、株式の運用者は楽観的。しかし最終的に債券運用者の方がたいてい正しい」ということでしょう。

そしてFRBもイエレン議長の任期を2018年2月3日に控えており、後継者(再任の可能性もある)のために、難しい仕事をやっておこうという動機にとらわれていると思っています。バーナンキの時もそうでした。イエレン議長は、金利正常化に固執し、経済の判断を読み違えているのではないでしょうか。いつまでこのタカ派的な姿勢を維持できるでしょうか。

バランスシート圧縮のシナリオ

さて、タカ派的なFRB、経済に悲観的な債券市場、楽観的な株式市場、このような組み合わせの結末はどうなのでしょうか。やはり株式市場の調整しかないと思っています。年後半にバランスシート圧縮をスタートさせれば、長期金利に上昇圧力がかかってきます。2008年以降の国債の買い入れによって膨らんだ残高を減らすということは、満期を迎える金額以上は買わないということなので、明らかに市場での買い手が減るわけです。トランプ大統領の当選で沸いた2.7%程度までは上昇する可能性があると思っています。一時的にドル円はドル高局面を迎えることになるのではないでしょうか。

株式市場は、トランプ政権の経済政策の遅れに目をつむって、金利低下を支えに株価を維持しています。与党共和党の同意の得られやすい法人減税の実現を期待している面もあると思います。

しかしながら、長期金利が再び上昇してきたら、さすがにもたないのではないでしょうか?また、オプションの売り(ボラティティーのショート)が大変多く、一時10%を割るところまで売られています。あまりに相場の変動に無警戒な状態です。このポジションの特徴は、下がれば下がるほどアンワインド(巻き戻し)のために売りヘッジを行うことが必要になります。これが下げを加速し、下落幅が大きなものにするわけです。

投資戦略は?

個人的には株価下落にかけるのは好きではありません。FRBが思い直して、かつてのようにハト派な姿勢に戻る可能性もあるわけですし、法人減税も、ムニューチン財務長官が示唆するように8月頃に実現性が見えてくるかもしれません。個人的にはこのシナリオを望んでいます。

従って、市場に大きな動きがあった時に収益化しやすい、逆張りのロング・ショートポジションの構築に努めようと思っています。また、ロングポジションのヘッジを長期金利の水準(2.7%を目途に)を見ながら、入れていきたいと思います。

現在、バイオ関連のロングポジションのみ保有してます。米国AI関連株のロング、日本半導体関連株、日本FA関連株のロング、日本自動車株のショートはいいタイミングでクローズできました。つきがありますが、あくまでもご参考までに。

自動車株とFA・半導体製造装置関連株

6月の利上げはあるか?

イギリス議会選挙

イギリスのメイ首相は、4月18日にもともと2020年に予定されていた総選挙を前倒しで行うと表明し、6月8日の実施を決定しました。

メイ首相は、「イギリス政府はEU離脱という国民の意思を実現しようとしているが、議会はバラバラだ」として野党等を批判。離脱を成功に導く強力な政権を作るため、選挙を行う必要があると強調していました。

EUとの離脱交渉で大変な時期に総選挙を行うことを回避するために、約束を反故にして、今回選挙を行うわけです。

当初、労働党コービン党首の人気が全くなく、与党保守党の圧勝が見込まれていましたが、メイ首相の打ち出した政策がまったく不評で、自らこける形で支持率を落としています。

選挙の結果、現在より大きく議席を増やすことができれば(3分の2超)、EUに対抗する上で、強力な政治基盤を持つことになりますが、現状程度の議席となった場合、政局運営が困難になります。約束を反故にして、勝てると踏んだ選挙で辛勝というのは相当にダメージが大きいと思います。

YouGovによる世論調査によると保守党と労働党の支持率は、42%38%となっており、4月には20%の差があったものが急激に縮小しています。昨年のブレグジットの経験から世論調査も気合が入っているのではと思います。

シナリオ

保守党が圧勝した場合はポンド高、円安、株高と想定しています。フランスの大統領選挙と同じような反応ですね。一方で辛勝もしくは敗北した場合は、ポンド安、円高、株安を想定します。

四月以降、ポンドは反発して1.3 GBP/USDをうかがう水準にありますので、圧勝した場合よりも、辛勝または敗北の場合の方が、反応が大きくなるのではないかと思います。ポンド売りで臨みたいと思います。

6月の利上げはあるか?

6月13日~14日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が行われますが、4回目の利上げの確率は依然高いと言われています。しかしながら米国長期金利は中々上昇してきません。

FOMC議事録で、「1~3月の経済の落ち込みが一時的だとわかる証拠が出るまで利上げに慎重になるべきとの意見が多く出ていたこと」などが背景だと思われます。

個人的には今週の雇用統計がある程度の水準であったなら、FEDは利上げに踏み切るのではないかと思います。この一連の利上げは、景気・物価よりも金利正常化を目指したものであるからです。

長期金利が3%程度になるまで、または超長期債の発行が具体化するまでは、株式市場に大きな急落はないと考えていました。しかしトランプ政権のロシアゲートによる不透明感に伴う減税・インフラ投資の進展の遅れから、市場の期待を支えるのは困難になるのではないでしょうか。

仮に利上げが見送られても、景気減速に対する警戒感が高まり、現在、高値圏にある株式市場は調整を余儀なくされる可能性があります。

市場が調整した場合には、大きく上昇している銘柄の下落が大きくなるものです。そうした理由から、半導体関連ロングと自動車株のショート、米国株式のAI関連のロングを手仕舞いたいと思います。

人口知能(AI)

そうしたわけで現在のポジションは、日本株のロングだけとなってしまいました。これはバイオ株なので、もちろん市場の影響は受けますが、個別の材料がいつ出てくるかわからないため、長期の成長に賭けて保有していきます。

しばらくは、年後半の戦略についてじっくり考えていきたいと思います。またご報告します。