株を買っていけるか。コロナ感染とリスク資産投資。

2020/03/31

とうとうアメリカのコロナの感染者数が中国を大きく超えてきた。しかしながら米国各州での外出禁止などの措置により、感染者の伸び率は鈍化してきている。ヨーロッパでも依然拡大しているが、総じて伸び率は10%台とひところに比べて鈍化して推移している。ヨーロッパでは感染者数の爆発という最悪期を脱しつつあるのではないだろうか。

さてリスク資産の買いのトリガーとしていたアメリカのコロナ感染のピークという判断であるが、未だにピークとは確認できない。しかしながら、伸び率の鈍化が確認できれば、ウィルスの自然な拡大に対して人為的に制限を与えているということであり、ピークに近いということを示している。アメリカの伸び率は40%台から20%台へと低下してきており、ピークに近付いているのではないだろうか。SARSやMERSのときと同様に市場のボトムとピークは必ずしも一致しないので、そろそろ買い始める時期にきていると思う。

米国では、244兆円の経済対策が上院で可決し、下院での決議を待っている状況だが、市場はすでに織り込み、安値から20%超も戻してきている。買うタイミングとしては、積極的に買っていくタイミングではない。

米国株式

従って、経済の悪化を知らせるニュースやコロナ関連のニュースで急落する局面での買いを心がけたい。米国の感染ピークが確認できる辺りまでの時間軸(2週間くらい)での買い入れを行いたいと思う。

何を買うか

やはり米国の株式である。今後予想される経済の悪化に耐えうる企業(資金繰りに問題がない。)を買いたいと思う。大型株から徐々に小型株へ分散していくことを考えて、下記の2銘柄あたりから始める。

GOOGLE(高値から24%下落)
AMAZON(同10%)

さらにリスク資産としては、最も下落している原油も長期的には買い場であろう。ロシアとサウジアラビアのチキンレースにより、大きく下落しており、米国のシェール企業の採算ライン(大体40ドルくらい)を大きく下回っている。減価償却費を除いた採算ラインはもう少し低いだろうが、20ドル台が継続する場合には負債の返済に窮するところもでてくるだろう。そうしたニュースはむしろ原油価格にとってはプラスに作用するのではないか。

原油価格

またサウジアラビアの財政均衡価格は80ドルとも言われ、ロシアの財政均衡価格は40ドル程度と言われている。どちらにしても現在の価格を大きく上回る価格であり、米国エネルギー関連の雇用を重視するトランプ大統領にとっても原油価格の是正は大きな関心事であることは間違いない。こちらも段階的に買っていきたい

日本株は?

コロナ感染に関しては、日本はこれまで不思議なほど健闘してきたが、小池知事の記者会見でも示されたように、感染者数の上昇率が拡大してきた。ヨーロッパやアメリカでも見られたような動きで、今後感染者が大幅に増加する可能性もある。当然、経済活動にも大きな制約がかかるため、米国株式が回復していっても、日本株が低迷することが考えられる。買いを入れるタイミングとしては米国よりも後ずれになるだろう。

 

デフレを考える

遂にFED(連邦準備制度)は、バランスシートの拡大に向かうことになった。パウエル議長はこれを「量的緩和」ではないとし、あくまで短期金融市場の安定化を図るものだとしている。

そもそも短期金融市場の安定化とは何か。すなわち短期金融市場であるレポ市場の金利の急騰を抑えるためである。レポ市場とは、金融機関などが国債を担保としてオーバーナイトなどの短期で資金を借りるための市場である。この市場の金利が急騰したということは、資金の供給量が、国債の担保に対して負不足しているということあり、これを補うためにFEDが短期国債を買って市場に資金を流し込むということである。

あまりに市場に国債及び資金が大量に出ているいるためにちょっとしたバランスの変化に金利が暴走し、これを抑えるためにさらにジャブジャブにするという手段にでたということである。

量的緩和再開?

短期国債の買い入れと長期国債の買い入れの差こそあれ、両市場は密接に関係しているために、実質FEDが量的緩和を再開したようなものである。これにより、日本、欧州、米国が量的緩和を再開したと言えるのではないだろうか。

しかも世界的に株式市場は高値近辺であるし、失業率も低いにも関わらずである。ではなぜ、各国の中央銀行は量的緩和を行うのか。

デフレの恐怖

現在、日米欧をはじめとする各国の中央銀行は、インフレ目標を持ち、ほとんど原理主義的にインフレ2%を唱えている。かつてはインフレファイターとして名をはせたドイツですらインフレを望んでいる。デフレは経済にとって非常に不都合なものであり、インフレを前提としてきた色々な制度(年金、財政など)の破壊を意味するからだろう。

デフレとは

デフレとは物の価値の低下、相対的には貨幣価値の上昇であるから、実質金利と実質債務が増加する現象である。この原因は、先進国において高齢化が進み、労働人口が減少し、年金生活者及び社会保障を担う労働者が消費を減少させることによるものだと思う。消費、つまり需要の減少は、低い経済成長と価格低下を促すため、デフレの原因となるのである。

ひとたびこのような状態になると、実質金利の上昇、実質債務の拡大を嫌い、家計では消費減、企業では投資減という行動をとることになる。

これまでであれば、実質金利が上昇した場合、中央銀行が利下げを行うことで実質金利を低下させ、消費と投資の減少を抑えることができたのであるが、今はゼロ金利を通り越してマイナス金利の世界である。黒田総裁は否定するであろうが、マイナス金利は限界がある。お金を貸すのに金利を払うバカがいるわけがないというのが限界の理由だ。

デフレスパイラル

さて、金利が限界を迎えると利下げで実質金利の上昇を抑えることができなくなる。利下げができなければ、さらに消費減、投資減が進み、投資減は賃金減を生むことになり、賃金が減れば消費もさらに減る。これがデフレスパイラルという現象である。

このスパイラルを止めるために各国中央銀行は、金利をありえないほど下げ、紙幣を刷りまくって貨幣価値を低下させ、物価を引き上げようとしているわけだ。

しかし、デフレ側の要因は、人口動態やITの進化による生産性の向上という構造的なものなので、恒久的にデフレ圧力を加えてくる。結果として、中央銀行の資産と負債は拡大の一途をたどる。

財政ファイナンス?

バランスシート拡大による問題は、国債市場に大量の資金が流入することで生じる資産バブルである。流入した資金は社債市場や株式市場にも溢れ出し、経済の長期停滞にもかかわらず資産価格を高騰させる。現在の市場がまさにそれを表している。

いきつく先は?

需要サイドが一過性の問題であれば、いずれ需要は回復し、金融政策を正常化することは可能だろうが、残念ながら問題は構造的なものである。金融政策だけで解決することは不可能だろう。インフレ前提の経済政策から180度転換したような政策が必要なのではないか。

このまま中央銀行が量的緩和を続け、バランスシートが拡大し、将来の需要の先取りである長期債務を膨らませ続けることは可能だろうか?不可能だろう。つけは必ず払わなければならない。

方針

この国債バブルも他のバブルと同じようにいつまでもつのか予測は難しい。ただし、危険な状況にきているということはわかっている。こうした状況では、市場のボラティリティーが大きくなり、値幅がでるため、株式オプションの買いを検討したい。もちろん、すでに現金比率を最大限高めている。

報告が遅くなったが、米国の短期債購入を機に、日経平均の売りは21000近傍でクローズ、為替も108円にて買い戻した。結局、大きな利益をとることができなかったが、今後は、日経平均VIXの買いを行っていこうと思う。

債券運用者と株式運用者

米国の長期金利が大きく低下してきている。6/8現在、10年債金利は2.084%となっており、FRBの政策金利であるFFレートの誘導目標2.25-2.50%を下回る水準である。昨日の雇用統計の悪化やトランプ政権の関税政策の懸念によるものだが、今年1月のパウエルFRB議長の豹変が大きい。昨年末の株価の大幅な下落とトランプ大統領の恫喝を受けて、突然ハト派に転換したことである。これにより利上げを想定していた市場は、反対に利下げを想定することとなったのである。

米国10年国債金利

もともと自動車販売や住宅販売に陰りが見えていた米国経済は鈍化しており、金利の動きとは整合的である。当然、金利差が大きな材料となる為替市場では円高が進んでいるが、同時にブレグジット懸念のあるポンド、ユーロ、消費増税を控える円それぞれに問題を抱えるために一方的なドル安とはなっていない。

円ドルレート

ここまでは想定どおりであり、ドル売りポジションは順調に利益を膨らましている。問題は株式の動向である。

S&P500

日経平均

S&P500に比して日経平均が大きく劣後しているのは、想定通りではあるが、現在の世界景気をリードしている米国の株式市場がしぶといのだ。依然高値圏にあり、昨日のように弱い景気指標が出ても、利下げ材料として捉え、株価が上昇するという展開が続いている。

昔から債券運用者は悲観的で、株式運用者は楽観的、大抵の場合は債券運用者が正しいと言われるが、今回も同じ状況に思える。2000年のITバブル崩壊、2009年のリーマンショックの時も株式が大きく調整したのは、実際に利下げが起こってからであり、景況感の悪化が知れ渡ってから株価は調整したのである。であるならば今回も実際に利下げが行われるたびに株価は調整し、日経平均の売り建てが大きく収益に貢献してくるのは、9月のFOMCのころかもしれない。

他のリスク資産もハイイールド債を見る限り、依然高値圏にあると言える。やはり実体経済の悪化が伴わなければ、グローバルな過剰流動性環境の中では、行き場(金利)を求める資金はリスク指向を高めてしまうのだろう。

米国ハイイールド債

一方で大型株に先行すると言われている小型株の戻りは鈍い。またGAFAといわれるプラットフォーマー企業の株価(今の若いファンドマネージャーたちのお気に入り)やNVIDIA(GPUの大手)の株価の戻りが鈍いところを見ると、市場も半信半疑なのではないかと思う。

米国RUSSEL2000

今後の方針

当初、現在の株式売り建て、ドル円ショートのポジションは、バランスシート圧縮の停止が行われるまでとしていたが、上記の動きから利下げが実際に行われるまで延長としたい。

実体経済の悪化が目に見えるようになる前に、なんらかのショックがきっかけになるかもしれない。例えば経営不安の絶えない欧州系銀行の破綻や保有しているCDSの保証先の破綻などが挙げられる。こうして想定している時点で問題ではないのかもしれないが、気が付いていない大きなリスクがあるような気がしてならない。

一方で、世界景気が、世界的な積極財政出動や金融緩和に支えられて持ち直し、株価はこのまま持ちこたえるかもしれない。この場合は速やかに損切りを行うことになるが、可能性は低いと思っている。

個人的には、景気のサイクルによる劣後企業の撤退や退場は、経済を健全に発展させるために必要なことだと考えており、日本のように低金利でゾンビ企業を生きながらえさせることは、デフレを助長させ、経済の活性化をそぐことになるので、過度な金融政策による延命には反対である。現代金融理論(MMT)の帰結が日本であるならばやめておいた方が良いと思う。

2019年3月FOMC

3月19日から20日にかけて、米国の中央銀行に相当するFED(連邦準備制度)は金融政策決定会合(FOMC)を行なった。

会合の結果は、金利については現状維持。会合参加者の今後の利上げ見通しを表にしたドットプロットによると、今年中の利上げはほぼないという結論となっている。11人が年内の利上げなし、4人が1回の利上げ、2人が2回の利上げとしている。

バランスシート圧縮については具体的な道筋が示された。「2019年5月より債券保有額の減額量を月間300億ドルから150億ドルに減額する。」「2019年9月末に債券保有量の減額を停止する。」

FOMC後、米国株はやや上昇、ドル円は下落し、その後、世界景気の不安から、金利が大幅に低下し、株価も大きく下落した。

とうとうバランスシート圧縮の停止が現実のものとなりそうだ。ドル円やその後の株価下落は、2月19日の記事に書いているとおり、FEDの緩和姿勢に対して、市場がそれを景気悪化の証左として捉え始めたのではないか。

現在のマーケットでは、これらの悪材料はむしろ金融緩和の材料として捉え、売り材料としていないために、株価が大きく戻しているわけだが、いずれ限界がくるのではないか。いよいよ金融緩和に舵をきるような局面において、もう一度下落する局面が訪れる可能性が高いと踏んでいる。その際には円高もセットでやってくると想定している。

今後の方針

当初、現在の株式売り建て、ドル円ショートのポジションは、バランスシート圧縮の停止が行われるまでとしていたが、米国の金融当局の株価下支え策や中国の刺激策のために、株式、為替とも想定ほど下落していない。こうした株価対策などが行われない方が、その後の回復も早いのであるが、日本の失われた30年からあまり学んでいないようだ。

従って、今回の調整は実際に利下げが行われるまで続くのかもしれない。市場が利下げを要求するように、株式、ドルが下落するという動きも考えられる。

いづれにしても、バランスシート圧縮が継続する9月末までに利益確定を目指したい。

2019年1月FOMC

1月29日から30日にかけて、米国の中央銀行に相当するFED(連邦準備制度)は金融政策決定会合(FOMC)を行なった。

会合の結果は、「政策金利が相応しいかを決定するにあたっては忍耐強くあるべきだ」とし、現状の政策金利を維持するというもので、想定された範囲のものであった。

年始の段階でパウエル議長は、バランスシート圧縮に関し、「市場の混乱の要因が、バランスシートだとは思っていないが、もし違った結論に達したら、方針の変更に躊躇しない。」と発言していた。

今回から加えられたバランスシート関連の発言は、「実体経済や金融市場の今後の動向によって、バランスシート正常化の完了計画について適宜変更する用意がある。更に、将来の経済状況によってより緩和的な金融政策が必要となった場合には、バランスシートのサイズ変更を含めたすべてのツールを利用する準備がある。」となっており、若干踏み込んだトーンになった。

昨年末の世界的な株価下落の圧力に屈し、市場に安心感を与えるために、このようなハト派的な発言を加えたということだろう。その甲斐もあって会合結果を受け、株価は上昇した一方で、ドル円は下落した。事前に想定されていたにも関わらず、素直に反応したといえる。

ただし重要なことは、FEDは何もしていないということである。金利を引き下げたわけでもなく、バランスシート圧縮のスピードを変えたわけでもない。粛々と市場からは、資金が引き上げられているのである。あくまで市場がさらに下落するまでは何もしないということを示したのである。

従って、株式の売り建て(ショート)及びドル円の売りポジションの手仕舞いはまだ先だと考えている。