暴走するトランプ大統領

とうとうコーンNEC担当補佐官の辞任に加え、ティラーソン国務長官も解任されてしまいました。
ペンシルバニア補欠選挙のために、地元の主要産業である鉄鋼・アルミニウムに関税をかけるという荒業のために、コーン氏が去ったのですが、その選挙も接戦で、民主党が勝利宣言をする始末。

その敗戦をけむに巻くために、ティラーソン長官を解任したんだと思います。まあ、ティラーソン長官は、「いずれ切られる」と思われていたので、大きなショックはありませんでしたが、まさにトランプ劇場です。

こうした状況から考えられることは、

  • 回りを固める人員が小粒になって、YESマン(ウーマン)ばかりになっていく。
  • コーン氏がさり、ゴールドマン人脈は、とうとうムニューチン長官だけになってしまった。
  • → 保護貿易のブレーキがなくなる。
  • → 対北朝鮮問題も曖昧な決着が難しくなった。対中間選挙対策でなんらかの軍事行動をとっても不思議ではない。

資本市場にとっては、リスクが増大する局面になったように思います。

保護貿易は何をもららすか?

まず第一に保護貿易の敗者は、消費者ということです。結局のところ製品価格の上昇により、インフレ圧力が加わり、ひいては長期金利に上昇圧力を加えることになります。

一方で、昨年末に決まった減税により、景気拡大期待からもインフレ懸念が高まりやすい状況です。問題は、大きな財政赤字の拡大です。貿易収支も赤字であることから、資本収支の黒字、つまり米国債を中国、日本などに引き受けてもらう必要があります。

中国などが、米国債の売却をちらつかせば、米国の長期金利は急騰することになり、世界景気にとってはダメージが大きくなります。

保護貿易圧力を米国がかければかけるほど、金利の上昇圧力がますというチキンゲームに突入していくことになります。

ドル相場も、対外債務拡大を受けて、ドル安指向を高めることになるのではないでしょうか。

米国長期金利とリスク資産

2月初旬の株式の下落は、米国長期金利の上昇がきっかけでした。現在は、予想通りボックス圏での動きとなっていますが、金利の水準は変わりなく、取り巻く状況も変わりなく、むしろ上昇圧力を増す方向です。

景気が大きく減速しなければ、よりリスクの高い資産(ハイイールド債など)の調整にとどまるかとも思っていましたが、先進国株式の大幅な調整も考慮に入れざるをえなくなりました。

株式はいまだ買えないと思っています。

 

雑感

米国長期金利は、株式の急落が起こった水準を越えて推移していますが、株式は堅調に回復してきています。

同様に、原油、金などの資源価格などの価格も回復してきています。

一方、為替は、株価が回復する局面では、ドル安の動きを見せており、金利差の動きと反対になっています。

これらの現象は、世界同時金融危機の前にも見られました。金融緩和によって大量の資金が、あらゆる資産に流れこんでいるために起こっているのだと思います。資産の価格が、膨大な余剰資金の動向によって変動しているわけです。

ということは、資金の流れが逆回転することになれば、逆の動きがすべての資産で起こることになります。また、そのトリガーは、長期金利の水準であると思います。

明らかなことは

  • 米国は、利上げのプロセスの最中であり、量的緩和の反対であるバランスシート圧縮にも取り組んでいる。
  • 欧州の緩和は、年内にも正常化を迎えると思われる。
  • 日本のゼロ金利政策は、緩和の限界に近づいている。
  • 米国のインフラ投資政策は、金利に上昇圧力を加える。

現在の世界景気の状況から、米国金利が上昇しないと考えることは不自然。つまり、いつかは、逆回転が起こると思っています。

ただし、10年近い緩和環境に慣れた投資家が、金利上昇に鈍感になっているために、なかなか資金の反転が起こらないかもしれません。 また、低インフレが継続するとして、長期金利の上昇も抑えられるかもしれません。

バブルの最後を当てることは困難なのですが、どこかの市場にそのほころびが見られることもありますので、注意深く各市場の動きを見る必要があります。

ポジションは、リスクオフ局面として取ったポジション(バリュー株のロング+グロースの株ショート、ハイイールド債のショート)は、そのままキープしています。さらに積極的に資金の流れの反転に賭けたポジションをどのようにとって行くかを、慎重に検討していこうと思います。

ポジション 現状 方針
バリュー買い・グロース売り 維持
ハイイールド債の売り 維持(資源株の買いを終了)
バイオ株の長期投資 一部ヘッジを検討

 

 

世界同時株安の経過

2018年2月初旬からの世界同時株安ですが、急落から2週間程度経過した現在の状況を外観してみたいと思います。

米国長期金利の急騰

株価急落

株式の調整は一時的か?

まず、震源となった米国株です。

SP500

下落の半分以上戻してきました。今回の急落がオプション市場のボラティリティの売りポジションの急激な買戻しのせいで、おおきな急落となったという認識が伝わり、ファンダメンタルズは強いという安心感のもと戻してきたように思います。また世界的にドル安となって、米国企業の競争力が増すといったことも支援材料のようです。

次は日本株

日経平均

米国株に対して劣後するも、やや戻してきています。米国との差は、ドル円レートが大きく円高に振れていることが原因でしょう。

では、ドル円を見てみましょう。

ドル円レートは、急落前から円高が進んでいましたが、急落後も円高が進行する結果となっています。リスクオフ局面ではリスク資産の還流を見込んだ円高や、トランプ政権のドル安志向が影響しているのでしょう。

当初の震源地とされた米国長期金利はどうでしょうか。

株式が急落したときは、一時低下しましたが、現在は、2.9%前後と急落前よりも上昇しています。

 

世界同時株安は一時的なものだったのか?

米国のファンダメンタルズは強固であり、企業業績は好調であるため、急落は一時的なものであろうという話や、今回はプログラムトレーディングの暴走で下落幅が大きくなったもので、本来それほど下げるべきものではなかったという話を聞きます。

しかしながら、本質的な問題は、現在が金融引き締め局面であり、長期金利の上昇が資金シフトをもたらしているということだと考えています。確かに現時点の世界経済は堅調ですが、これはバックミラーを見ているにすぎません。さらなる金利の上昇が景気の減速をもたらすことは間違いないと思います。

金融引き締め局面では、中央銀行が経済をオーバーキルとならないように、インフレ率をコントロールすることが大事です。インフレ率が急激に上がり、慌てて金利を引き上げれば、株式の大きな調整をもたらすことになりますし、うまく減速させてコントロールできるような状況になれば、株式の調整は軽微なものにとどまります。

個人的には、バランスシートの圧縮化で、長期金利の急上昇を抑えることができるか疑問に思っていますので、株式には警戒的になっているわけです。

願わくば、リスク資産に向かっていた資金が、ハイリスク商品(ジャンク債など)からの資金流出にとどまり、株式の調整は軽微になるよう、長期金利の上昇が抑えら推移してもらいたいです。

したがって、リスクオフポジションは継続保有し、長期金利の水準が3%を超えてくるのかどうかに注視していこうと思っています。

 

 

第4四半期日本GDP

2017年10-12月 日本GDP速報

内閣府が2017年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値を発表しました。

GDPは、8四半期連続のプラス成長の0.5%(前期比年率換算)。事前予想(0.9%)をやや下回りました。

前期マイナスに転落した個人消費が持ち直し、好調な輸出、設備投資が下支えしました。

個人消費は、1.0%と前期のマイナスから回復し、設備投資は、0.4%、輸出は、1.6%となり、プラスを維持しています。政府支出や住宅投資は、それぞれ▲0.1%、▲0.3%とマイナスになりました。

個人消費は、前期の夏場の天候不順の影響がなくなったため、回復しましたが、賃金の伸びが見られない中、足元の野菜高騰の影響が響いてきそうです。賃金の伸びが明確に見られてくるまでは、個人消費の高い貢献は期待できないと考えています。

好調な設備投資、輸出は、米国を中心とした世界景気の拡大の恩恵を受けたものと思われます。米国の長期金利上昇による影響が、米国の個人消費に影響を与えるか、今後には注意が必要だと思います。

好調な米国のGDPから、より高い輸出、設備投資の寄与を見込んでいましたが、少し物足りないものになりました。

基本的には、緩やかな拡大基調が続くと思っていますが、これまでと同様に国内の市場に影響を与えるような数字は出てこないと考えています。

運用戦略

今後の市場への影響は、引き続き米国株式市場、為替市場の動向次第でしょう。米国の長期金利の上昇に端を発した株式の調整ですが、第2段階の投資家のリスク調整(リスクオフ)の段階にきているとみています。

この場合、調達通貨である円は還流することになりますので、株価下落と円高がセットになりやすいです。株価下落→円高→株価下落というジョージソロス氏が唱えている再帰理論がさく裂することになる気がします。

震源である米国市場では、第2段階のリスク調整の株式売却のフェーズの中、FRBの政策金利の動向に目が向くのではないでしょうか。従来どおりのタカ派的な姿勢が維持されれば、緩和姿勢の催促として株価が下落に向かう可能性もあります。3月のFOMCは要注目ですね。

最終的には、長期金利の上昇が、金利の上昇の影響を受けやすい自動車や住宅の分野に悪い影響を与えてくるかがポイントでしょう。むしろ”いつ”影響が出てくるかではないでしょうか。

この影響による株式の下落が第3段階だと思っています。年後半になるかもしれませんね。

現在のリスクオフポジション(バリュー株のロング+グロースの株ショート、ハイイールド債のショート+資源株のロング)のうち、資源株のロングを手仕舞い、よりショートバイアス(売り持ち)を高めていこうと思います。

株式の調整は一時的か?

米国長期金利の急騰に端を発した世界同時株安ですが、一旦の落ち着きを見せています。そもそも下落率でみれば、それほど大きくはないのですが、長らく低い変動性で推移していた中での、急落は大きなショックを与えました。

恐怖指数と呼ばれる投資家の想定する株式の変動率は、一時的に50%を超える水準となり、10%以内で推移していた状況から、大きなジャンプとなりました。40%を超えると大きなショックと言えるので、恐怖指数の面からでは立派な急落と言えます。

米国:恐怖指数(VIX)

さて、株価ですが現在このように推移しています。

S&P500指数

日経平均

急落の要因

そもそも株価はなぜ調整したのか? 米国長期金利の急騰が原因と言われていますが、これは金利が上がれば、株式よりも債券に投資する投資家が増え、株式の下落、金利の低下を促すからです。

事前に長期金利が2.7%-3%を危険水準としていたのは、株式の配当利回り、ハイイールド債、国債金利、経済の潜在成長率を比較し、設定したものでしたが、まさにこの水準で急落が起こったことになります。

今後の金利の動向

アメリカ経済は、前回の世界金融危機以降、順調に回復し、景気拡大局面が長く続いています。そうした中で、徐々に利上げを慎重に行い。昨年後半には、FEDはバランスシート圧縮を開始しています。サイクルとしては、景気拡大の終盤と言えます。

中央銀行は、インフレ率をコントロールするために、政策金利を上げていくわけですが、長期金利が上がりすぎて経済を失速させないようにすることが必要です。イエレン前議長は非常に慎重に行動し、市場の信認も厚かったために、株式は、適温相場(ゴルディロックス相場)を形成していました。

適温相場というのは、高すぎない金利のもと、経済の拡大を享受し、株価が上昇するという相場を意味しているわけですが、長期金利の水準が高くなってきたことや、FRB議長の交代によるFEDに対する信頼感の低下から、このタイミングでの調整になったものと思われます。

今後の金利動向ですが、インフレ動向に直結する雇用状況(低い失業率、高い賃金の伸び)から、年3-4回の利上げは不可避ではないでしょうか。バランスシート圧縮は、長期債の入札通じて、長期金利に上昇圧力をかけていくと思われます。景気の失速回避と適度なインフレ率の維持をバランスシート圧縮下で行うのは、中央銀行にとって困難なものとなると思います。パウエル議長の腕の見せ所ですね。個人的には悲観的にみていますが。

今後の株式相場の動向

暫くは、好調な企業業績、景気指標のもとで、金利との綱引きによるレンジの広いボックス相場を基本的には想定しています。

今回の急落により、株式のリスクを再認識した投資家による株式から債券へのシフトも起こるために、一本調子の上昇は考えにくいです。

一方でトランプ政権によるインフラ投資が、株式にカンフル剤を打つかもしれませんが、長期金利の上昇にも同様にカンフル剤を打つことになります。この場合には、株式投資家は楽天的なので先に株式が大きく上昇するかもしれません。絶好のリスクオフタイミングになる可能性がありますね。

目先のポイントは、3月のFOMC(金融政策決定会合)になると思います。まずはパウエル議長に注目です。