第4四半期米国GDP

米商務省が29日に発表した第4・四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率換算で前期比2.6%増だった。

事前予想の2.2%を上回る結果となった。個人消費は鈍化したものの、企業の設備投資が拡大した。

通年のGDPは3.1%増となり、トランプ大統領が目標とする3%をかろうじて上回った。予想を上回る結果にドル高に反応し、長期金利も2.7%台へと上昇したが、株価は小幅に下落した。

では、いつものように、内容を確認してみる。

個人消費

米経済の約7割を占める個人消費は2.8%増加、前期の3.5%から減速し、予想の3%を下回った。

12月小売売上高の大幅マイナスを受けて、より大きな減速を想定していた向きもあり、概ね堅調であるという評価。

固定投資

固定資産投資は3.9%増。前期の1.1%から回復した。

設備投資も6.2%増と、前期の2.5%から大きく回復。中でも機器投資は6.7%増、知的財産投資は13.1%増と高い伸びを見せた。

住宅投資は、-3.5%と4四半期連続のマイナス。住宅ローン金利に影響を与える超長期債の金利上昇が大きな圧力となっている。

輸出入

輸出は、1.6%増、前期のマイナスから回復。輸入は、2.7%増。

輸出に関しては対米報復関税を睨んだ発効前の輸出前倒しの剥落が一巡した結果。

政府支出

政府支出は、0.4%増と、小幅ながらプラスを維持した。

まとめ

  • 米国GDPは予想を上回り、底堅さを見せた。
  • 個人消費は、減速しながらも底堅さを維持している。
  • 住宅投資は、4四半期連続でマイナス成長。金利上昇の影響が大きく現れている。
  • 企業設備投資が驚くべきことに回復。前期急増した在庫投資も縮小した。

予想を上回る結果であったが、何よりも驚いたのは、懸念していた在庫調整のマイナスの効果を補って設備投資が伸びたことである。個人消費も株価の大幅な下落にも関わらず、堅調さを維持しており、正直、米国経済はしぶとい。

これを受けて金利上昇となったが、この内容では順当な動き。利上げ再開とまではいかないが、資産圧縮停止も不透明になっただろう。

このまま経済が底固く推移した場合には金利上昇、減速した場合には資産圧縮の停止、利下げとなるが、現在のマーケットは、金利上昇には目をつむり、減速しても利下げで景気を支えてくれるという都合の解釈をしている状況だ。いつまでこの状況が続くのか見ものである。

中央銀行の資産圧縮の停止に至る株価下落、ドル安を見越してポジションをとっているが、かなり含み利益を失った。しかしながら、こういうときの市場は一瞬で悲観に変わることが常なので、悲観も落胆もせずにフラットに市場を見て行こうと思う。

 

米国株の反発

米国株が大きく反発している。既に昨年12月初旬の下落前の水準まで戻してきた。FRBの金融政策の緩和期待や対中経済対話の進展期待が大きなドライバーとなっている。

SP500

一方で日本株の戻りは米国株ほどに戻っていない。

日経平均

米国には金融緩和余地がある一方、日銀の金融政策にはもう手が残っていないことや、米国の金融緩和による円高圧力を警戒せざるを得ない。

日本株の空売りを行っている立場としては、この日本株の劣後に救われてはいるが、今後、大本の米国株式がのように推移するのかが重要になってくる。

米国の政府機関閉鎖の影響で、経済指標の発表が遅れているが、先日発表された小売売上高が歴史的に大きく低下したことなどからすると、徐々に実体経済の悪化が表面化しつつあると考えていいだろう。

現在のマーケットでは、これらの悪材料はむしろ金融緩和の材料として捉え、売り材料としていないために、株価が大きく戻しているわけだが、いずれ限界がくるのではないか。いよいよ金融緩和に舵をきるような局面において、もう一度下落する局面が訪れる可能性が高いと踏んでいる。その際には円高もセットでやってくると想定している。

2019年1月FOMC

1月29日から30日にかけて、米国の中央銀行に相当するFED(連邦準備制度)は金融政策決定会合(FOMC)を行なった。

会合の結果は、「政策金利が相応しいかを決定するにあたっては忍耐強くあるべきだ」とし、現状の政策金利を維持するというもので、想定された範囲のものであった。

年始の段階でパウエル議長は、バランスシート圧縮に関し、「市場の混乱の要因が、バランスシートだとは思っていないが、もし違った結論に達したら、方針の変更に躊躇しない。」と発言していた。

今回から加えられたバランスシート関連の発言は、「実体経済や金融市場の今後の動向によって、バランスシート正常化の完了計画について適宜変更する用意がある。更に、将来の経済状況によってより緩和的な金融政策が必要となった場合には、バランスシートのサイズ変更を含めたすべてのツールを利用する準備がある。」となっており、若干踏み込んだトーンになった。

昨年末の世界的な株価下落の圧力に屈し、市場に安心感を与えるために、このようなハト派的な発言を加えたということだろう。その甲斐もあって会合結果を受け、株価は上昇した一方で、ドル円は下落した。事前に想定されていたにも関わらず、素直に反応したといえる。

ただし重要なことは、FEDは何もしていないということである。金利を引き下げたわけでもなく、バランスシート圧縮のスピードを変えたわけでもない。粛々と市場からは、資金が引き上げられているのである。あくまで市場がさらに下落するまでは何もしないということを示したのである。

従って、株式の売り建て(ショート)及びドル円の売りポジションの手仕舞いはまだ先だと考えている。

 

株式・為替・金利概観

トランプ政権と議会との対立から過去最長の政府機関閉鎖、弱い企業業績、経済指標にもかかわらず、年始からの株式市場は値を戻してきている。これは年末にかけての急激な下落による反動やパウエル議長のハト派発言を受けてのものであるが、このまま反騰が継続していくのか、またそのほかの資産はどう動いて行くのかを簡単に検討してみたい。

株式市場

まず株式市場であるが、これまでも述べてきたように根本的な要因は、FRBによる金融引き締め、特にバランスシートの圧縮が原因である。中央銀行による膨大な資金供給(中央銀行バブル)の正常化を進めることは、市場からのドル資金の吸収であるので、低金利環境下で利回りを追及してきたリスクマネーがリスク資産から引き上げられるのは自然なことであろう。

バランスシート圧縮は株価下落の原因ではないとしていたパウエル議長が、市場の圧力に屈し、利上げ続行やバランスシート圧縮を見直すと表明したことで市場の下落圧力は一旦緩んだが、最終的には実際に金融引き締めを停止するまで、下落圧力は継続するのではないか。

為替

イギリスのブレグジットの混乱、ユーロ圏の経済不振によりドルは相対的に大きくドル安とはなっていない。ドルよりも問題のある通貨が多いので消去法的にドルが値持ちしているということだろう。しかしながら対円で考えると、今後パウエル議長の表明通り、金融引き締め停止に向かうとするならば、米金利低下によるドル安圧力は高まっていく。日本の金利はこれ以上下がらないので対円でのドル安は進んでいくのではないか。最終的には100円割れを想定している。

債券

国内債券金利は0.05~0.10%で推移しており、今後も金利が大きく上昇することはないだろう。かといって低下にも限界があるので金融資産としての魅力はほとんどない。一方、外国債券は米国債の金利低下による価格上昇期待は大きいものの、為替での円高リスクを考えれば、魅力的ではないように思う。

総じて悲観的な見方ばかりになったが、むしろ楽しみは増してきている。株式をバーゲンで買えるチャンスや強い円で外国資産を沢山買えるチャンスがやってくる可能性が高まっているわけだから。

確定拠出年金の資産配分

昨年の1月にお伝えした確定拠出年金の資産配分であるが、すでにリスク回避的な配分にしていることから今回の変更は行っていない。

確定拠出年金内の代表的なインデックスファンドの動き

米国の中央銀行の膨張した資産圧縮を契機として、リスク回避的な配分を推奨してきたが、ようやく昨年末あたりから世界景気にも陰りが見え始めてきた。現在、株式市場を中心に急激な下落の反発局面となっているが、あくまでも一時的な反発ととらえている。

株式などの配分比率が高い場合には、 この反発局面をとらえて比率を落とすということも良い 選択だろう。

今後、株式資産、外貨建資産の配分比率の引き上げのタイミングが非常に重要になってくるが、現在の米国FRBによる金融引き締め(政策金利引き上げ)の停止や資産圧縮(バランスシート圧縮)の停止がそのタイミングになると想定している。