12月12日、米メディアによると、米中が一部の関税引き下げと15日の追加関税の発動延期で合意した。さらに英総選挙で与党・保守党の圧勝がほぼ確実となり、英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る不透明感が払拭される見通しとなった。
これを受けて米国株式市場は高騰し、最高値を更新。続く日本市場も年初来高値を更新する展開となっている。
日経平均
米国株式
ドル円レート
米中通商交渉については、まず第一段階の合意ということで、今後も段階的に交渉が継続していくものである。今回の合意は、国内景気の浮揚に苦しむ中国と来年の大統領選挙での景気の後押しを求めるトランプ大統領の妥協の産物である。詳しい情報はまだ伝えられていないが、内容は15日の追加関税の発動延期と一部関税の引き下げが主なもののようだ。
この高値をどう考えるか?
今後も米中協議が少なからず進展し、その度に高値を更新するシナリオを考えるべきか、または協議が難航し株価が下落すると考えるかということになるが、実際、優れた政治ウオッチャーでなければ、このようなことを予測すること自体困難だろう。またそうした予測をもとに売買してもただのギャンブルにしかならない。
これまで金融市場を下記のような目線で考えてきた。
- もともと中国は米中貿易戦争で減速しているのではなく、過剰設備・過剰債務の問題を抱え、成長の限界に達しており減速は不可避であった。
- 米国の消費が世界経済を牽引している。
- 世界的な量的金融緩和政策により、欧州、日本ではマイナス金利と金利面での政策は限界に近付いているが、米国には金利低下余地がある。
- 政府部門・民間部門での債務は膨張を続けている。
米中通商交渉の進展やブレグジットの進展が、上記のような問題を大きく変化させるものとなるのかが重要であるが、メディアのニュースで伝えられるような大きなインパクトを与えるようなものには思えない。中国の経済が回復し、米国の消費もさらに拡大するまでには至らないと思う。かつての中国のようなフロンティアが必要であろう。
米国の金利
一連の動きの中で気になることは、米国の長期金利の動きである。金利低下、株高の動きから、金利上昇・株高という関係に変化してきたことである。
米国10年国債金利
将来の低下余地が拡大するという意味では良いことであるが、株式の流動性を債券が補っていると考えると、市場全体に流動性がいきわたっていない可能性があるということだ。
結論
今後の好材料も有無を考えると、今回の材料で一旦材料出尽くしとなる可能性が高いと思う。需要の先食いである債務が膨張し、金利の低下余地が少なく、流動性が十分でない中では、やはり長期的な株式の買いは見送りたい。しかしながら米国の金利低下余地と量的緩和再開余地、市場迎合的なパウエル議長の姿勢を考えると、大きな暴落は考えづらいのも確かである。本当にこわいのは政策手段が限界を迎えたところなのかもしれない。
短期的な下落を想定して、VIXの買いを12%台で行いたいと思う。