第一四半期日本GDP

トランプ大統領のロシアへのISISに関する機密情報漏洩問題や司法介入により、弾劾へ警戒が高まってきました。インテリジェンスの扱いに関して本当に素人ということを露呈してした形です。減税などの経済政策の進展の遅れから、米国株式も大きく下落し、円高が進んでいます。VIX指数も過去最低水準にあり、株式市場に対してかなり楽観が支配していた状況でのこのニュースですから、大きな調整のきっかけになるかもしれません。もっともトランプ大統領が弾劾された場合、ペンス副大統領がかわりに務めることになりますから、トランプ大統領よりも議会のコントロールはうまくできるのではないでしょうか。この問題は改めて検討してみたいと思います。

日本GDP速報

内閣府が2017年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値を発表しました。依然、世界経済のドライバーは米国経済だと考えていますのでそれほど重視してはいないですが、一応概観してみようと思います。

GDPは、5四半期連続のプラス成長の2.2%。事前予想(1.8%)を上回りました。牽引役は、個人消費と輸出。ただし名目成長ではマイナス0.1%とまったく実感のない景気ということが言えます。

個人消費は、0.8%、輸出は、1.4%の高い寄与、昨年来の円安や活発な海外経済が大きく貢献したようです。政府支出や住宅投資は相変わらず振るわず。設備投資も振るわなかった。

個人消費の高い貢献は意外でした。生鮮食料品の価格高騰の一服が消費者心理のプラスに寄与したのかもしれません。しかしながら賃金の伸びが見られない中で、高い伸びの継続には疑問が持たれます。やはり輸出だのみといったとこでしょうか。つまり為替レート→米国金利→米国経済の動向に左右される展開に変更はないと考えています。

自動車株とFA・半導体製造装置関連株

年始よりポジションをとっておりましたFA関連株と半導体製造装置株のロングと自動車株のショートですが、このうちFA関連株のロングと自動車株のショートの一部をクローズしました。FA関連株の目標に達したことと自動車株の2018年業績見通しが発表されたことが、クローズの理由です。

人手不足!

ポジションは複数の銘柄で構築していますが、代表的な銘柄で株価を振り返ってみます。

どちらかというと自動車株のショートが利益をもたらしてくれました。自動車株は米国の金利上昇が、自動車ローン金利の引き上げを通じて下方圧力を増すとの考えからです。先週、トヨタは来期もコンセンサスを超える減益予想を発表しましたが、株価は大きく下げませんでした。株価に織り込まれてきていたということもポジション解消の理由の一つです。

米国の経済指標は、遅効性のある雇用統計以外鈍化を示すものが増えてきていますが、依然、6月の利上げ確率は75%程度織り込まれており、利上げの可能性は高いと思われます。自動車株の停滞はまだ続くかもしれませんので、半導体製造装置株のヘッジとしての部分は残しています。

有機EL、3D-NANDの本格化に伴う半導体製造装置のピークはまだ来ていないと考えていますが、業績のモーメンタムが鈍化するまで、または高値を更新しているNASDAQが5%以上の調整をした場合にはクローズしようと思っています。

米国のAI関連は今だ強気で保有していきます。

人口知能(AI)

2017年5月FOMC

5月3日、FED(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利の維持を決定しました。政策の維持は予想どおりです。問題となるのは現状の景気の認識がどうのようなものかということでしょう。70%程度織り込まれている6月の利上げを示唆するものになっているでしょうか。

第一四半期GDPどおりの声明文

発表された声明文の内容は、「実体経済は減速したが、労働市場は改善を続けており、失業率は減少している。個人消費の勢いは強くないが、消費を支えるファンダメンタルズは強固。企業投資は強まっている。」となっており、第一四半期のGDPの結果をほぼなぞったものとなっています。6月のFOMCでは、今後何もなければ利上げをしますよっというニュアンスではないかと思います。この結果を受けて市場はやや金利上昇、為替はややドル高へと動きました。

ファンダメンタルズは強固?

GDPでの高い雇用コストの伸びが、消費を支えるファンダメンタルズは強固と言わしめていると思われますが、金利上昇の悪影響による自動車販売の鈍化にみられるように、それほど強固だとは思えません。GFC(グローバル・フィナンシャル・クライシス)によってゆがめられた季節調整のアヤがどの程度影響しているかわかりませんが、それほど楽観していられるものではないと思います。第一に企業の投資活動の上昇は、原油価格上昇の影響が大きいと思われるます。原油相場は現在50ドルあたりで安定していることから、さらなる投資活動の活発化は期待できないのではないかと考えています。

市場は利上げを織り込みに

昨日、オバマケア代替法案が下院で可決したというニュースがありました。これにより減税策が前進するという期待も盛り上がることになるでしょう。また、フランス大統領選挙の討論会の結果、マクロン候補の優勢が確実化したとの報道も市場にとっては前向きなものです。今晩の雇用統計次第ですが、おおむね6月利上げに向けて市場は強気を維持し、ドル円もドル高に推移していくのではないかと見ています。

利上げと政策の切れ目

したがって現在の米株のロングは維持しますが、あえてここからドル円のロングを持つのはリスクが高いと考えています。対日貿易赤字が拡大し、ロス商務長官が「米国はもはやこの膨張した貿易赤字に耐えられない」と表明しているからです。日本を名指しで批判しており、不均衡の是正を理由に2国間協議へ圧力をかけたとみられます。

6月利上げから減税策が具体化する8月以降の期間は、危険な期間になる可能性が高いと考えていますので、6月利上げに向けてリスク志向が高まる局面では、その後のリスクオフ志向見据えてポジションをとって行きたいと思っています。

第1四半期米国GDP

米商務省が28日発表した2017年1~3月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、前期比年率換算で0.7%増。事前予想は1.0%と前四半期の2.1%から鈍化する見通しでした。予想を下回る結果となりましたが、事前の自動車販売や景況感指数などの鈍化から、弱い数字が想定されており、市場には織り込まれていたようです。為替市場に大きな変動もありませんでした。

今後、FOMCや雇用統計を控えており様子見といったところだったのでしょうか。雇用コスト指数が+0.8%となり前回の+0.5%を上回ったことで、景気拡大が維持されると判断されたようです。

では、内容を確認してみましょう。

個人消費

大きなウエイトを占める個人消費ですが、0.3%増となりました。前期の3.5%増から大幅に減速しました。事前に自動車販売が減速していることが確認されていましたが、これに前期の大幅な伸びの反動が加わったと思われます。一方、雇用コストが高い伸びを示しているため、賃金の伸びによる第2四半期の回復が期待されています。

固定投資

設備投資は9.4%増。非常に高い伸びとなりました。依然、原油価格の回復による関連投資が増えたものと思われます。4四半期連続となり力強さを見せる結果でした。住宅投資は13.7%増と大幅なプラス。金利の先高観の影響からか、2四半期連続の高い伸びを示しました。企業活動は活発ということですが、原油相場の上昇も一服ということでさらなる増加も考えにくいです。

輸出入

輸出は、5.8%増、輸入は、4.1%増。前期の貿易赤字から黒字へ転換。前期は大統領選後のドル高の影響と考えていましたが、今期はドル高が是正された期間でもあり、輸出増は通貨安によるものと考えられます。

政府支出

政府支出は1.7%のマイナスとなりました。トランプ政権の政策がいまだ進んでいないので当然の結果ですね。

まとめ

・米国GDPは、急減速。しかし季節調整のバイアスの影響や高い雇用コストの伸びをはやして市場は静観。

・個人消費の減速が一時的であるか注意が必要。

・企業活動は活発だが、資源関係の投資のさらなる伸びは不透明。

・政策進展による政府支出はいまだ期待できない。

金利上昇による自動車になどの耐久消費財の消費減速や、輸出が通貨変動の影響を受けていることを考えれば、さらなる金利上昇は困難なのかもしれません。政府支出が景気を支える状況になるまでは、現状の金利水準は維持され、為替も大きくドル高で進むことはないと考えます。しばらくは、トランプ政権の経済政策の実現待ちに変更はありません。

トランプ減税

トランプ政権は26日、法人税減税や海外利益に対する税率引き下げなどの税制改革案の概要を発表しました。就任前から法人税を15%にすると言っていましたが、この概要の中でもそのまま維持されています。減税の財源として国境税を導入すると見られていましたが見送られています。ムニューチン財務長官によると財源は、経済成長に伴う歳入増や法の抜け穴をふさぐことなどによって賄われるとしています。

共和党保守派を懐柔?

一部報道では、オバマケア代替法案に反対していた共和党保守派が軟化し、オバマケア代替法案の修正に協力するとも報じられています。だとすると前に指摘したようにシリア攻撃やアフガニスタン・タリバンへの強力爆弾攻撃、対北朝鮮への強硬姿勢などで共和党保守派の懐柔に成功したのでしょう。

減税の財源は?

巨額の財源は、ムニューチン財務長官が述べている通りにはいかないと思います。税率を引き上げるか、超長期債の発行が必要になるのではないでしょうか。ならばFRBに対するトランプ大統領の変節も納得がいきます。就任前はFRBに対し、早期の政策金利の引き上げを唱えていましたが、超長期債の発行は低金利の方が、都合がいいので、現状のFRBを信任すると発言したのだと思います。

株式市場への影響

高値水準にある株式市場にとっては、減税は必要不可欠なので、この改革案の発表は良かったと思います。当面、ドル高要因である国境税の導入を見送ったことで、急激なドル高も避けられました。したがってリスクは、実現までの時間でしょう。減税への期待を維持しつつ、経済の減速に耐えることができるかということになります。フランス大統領選挙が無事通過した場合には、個人的には株式市場の大きな調整は当面はないと考えています。米株のロングを増やし、日本株ではFA関連、半導体製造装置関連のロング、自動車株のショートを継続したいと思います。ただし、超長期債の発行が決定されれば警戒せざるを得ないですので、そういった発言が政府高官から出るようであれば、見直しを行いたいます。