確定拠出年金の資産配分変更

2020/9/2

2019年1月以来、変更していなかった確定拠出年金の資産配分を変更した。すでにリスク回避的な配分にしていたが、コロナ禍による世界的な大規模な金融緩和、財政支出とそれに伴う株高を受けて、さらにリスク回避的なものとした。

確定拠出年金内の代表的なインデックスファンドの動き

世界的なゼロ金利政策の影響により、主要国の国債の金利はマイナスにまで沈み、さらに金利が低下することはあまり期待できない。まだ金利のある外国債券を少しのこした。株式については、実体経済からあまりに乖離していることから、最低限の保有とした。

今後、株式資産、外貨建資産の配分比率の引き上げのタイミングが非常に重要になってくるが、今回のコロナ禍の収束後の金融政策の正常化への道筋が見えることが、そのタイミングになると想定している。

確定拠出年金の資産配分

昨年の1月にお伝えした確定拠出年金の資産配分であるが、すでにリスク回避的な配分にしていることから今回の変更は行っていない。

確定拠出年金内の代表的なインデックスファンドの動き

米国の中央銀行の膨張した資産圧縮を契機として、リスク回避的な配分を推奨してきたが、ようやく昨年末あたりから世界景気にも陰りが見え始めてきた。現在、株式市場を中心に急激な下落の反発局面となっているが、あくまでも一時的な反発ととらえている。

株式などの配分比率が高い場合には、 この反発局面をとらえて比率を落とすということも良い 選択だろう。

今後、株式資産、外貨建資産の配分比率の引き上げのタイミングが非常に重要になってくるが、現在の米国FRBによる金融引き締め(政策金利引き上げ)の停止や資産圧縮(バランスシート圧縮)の停止がそのタイミングになると想定している。

世界同時株安後の動向と今後の方針

これまでリスク資産に対し弱気な立場を取っていますが、今後の方針について考えてみたいと思います。

2月初旬に始まった世界同時株安の動きですが、想定通り急落後大きなボックス圏をつくってきているように思います。

SP500

NK225

日本の株式については、為替が円高に振れており、米国に比べて下値を切り下げていますが、日本の経済にとって自力で上向くほどのドライバーがない現状からは、仕方ないのかもしれません。

麻生大臣ではないですが、TPP11発動よりも”もりかけ”問題にクローズアップするマスコミや知識人のピントのぼけた対応が象徴的です。

日本固有の問題としては、北朝鮮問題、消費増税が今後控えていますが、どれも世界経済を牽引するような話ではなく、むしろ劣後させるようなものなので、まだ当面は世界経済を念頭に置いた考えでいいのではないでしょうか。

さて、急落のきっかけとなった米国長期金利の動きですが、ここにきて低下してきております。株式の下落を受けて債券を買う動きがでたためです。

では、長期金利が低下しているので、リスク資産を今後も買っていけるのでしょうか?

基本的には米国経済は順調に推移しており、金利上昇の影響が住宅や自動車などの耐久消費財の消費行動にでてくるのはまだ先だと思います。従って、FEDは予定通り年3-4回の利上げを敢行していくものと思われます。

こうした状況では、政策金利に近い短期金利の上昇により長期金利へと上昇圧力が加わってくるのではないでしょうか。

したがって景気後退時によく現れる逆イールド(短期金利が長期金利を上回る状態)の状況はまだ先であると言えます。株式はまだ積極的に買えないと思っています。

今後の方針としては、

  • 長期金利が3%を超える状況。
  • 米国の消費動向に金利上昇の影響が現れ、FEDの引き締め策が緩和される状況。
  • 株式の大幅な下落により、FEDの引き締め策が緩和される状況。

以上のいずれかの状況までは、現状のリスクオフポジションを維持したいと思います。今後3-6か月後を想定していますが、リスクオフポジションでのリターンはそれほど大きくとれるとは思っていないので、ある程度利益が出てきたら、順次利益確定したいと考えています。大きくリターンを取るのは、その後の金融緩和ポジション(リスクオンポジション)でと期待しています。

確定拠出年金のポジション

昨年の7月にお伝えした確定拠出のポジションですが、すでにリスク回避的なポジションにしているため、変更はありません。

確定拠出年金の運用

少しリスク回避のタイミングが早かったことが反省点です。次のリスクオンのタイミングに集中して、挽回したいと思います。

GPIF基本
ポートフォリオ
自分の平常時
ポートフォリオ
現状の
ポートフォリオ
国内債券 35% 20% 10%
グローバル債券 15% 20% 10%
新興国債券 5% 0%
国内株式 25% 25% 15%
グローバル株式 25% 25% 15%
新興国株式 5% 0%
短期資産 0% 0% 50%

注1)GPIF基本ポートフォリオ:GPIF(Government Pension Investment Fund 年金積立金管理運用独立行政法人)が策定しているポートフォリオ。
注2)自分の平常時のポートフォリオ:私、オーバーフィフティが、現在想定している基本ポートフォリオです。

個人の主観によるものですから、あくまでもご参考に。今後も変更のたびにお伝えしていこうと思います。

確定拠出年金の運用

最近、iDeCo(イデコ)というワードを見たり聞いたりしたことはないでしょうか?
個人型確定拠出年金の略称だそうです。なんだかイケてない気もしますが、これまでサラリーマンの方たちに導入されていた確定拠出年金が、一般の人たちにも利用できるようになりました。

今回は、確定拠出年金を取り巻く環境や制度、運用方法について考えてみたいと思います。豊かな老後を送るためにも大事だと思います。

老後の資金を考える

 

個人型確定拠出年金(iDeCo)

2017年1月1日以降、専業主婦、公務員、企業年金のあるサラリーマンも個人型に加入できるようになりました。

毎月の掛け金は全額所得控除、投資利益の税額控除、受け取り時の税額控除など、税制上非常に有利なものなので、有効に活用すべきだと思います。

 

企業年金の変化

従来は、大企業の年金基金を中心に企業型確定拠出年金(DCプラン)が導入されてきました。これが個人型にも展開されたということですね。

このDCプランですが、どういった背景で導入されたのでしょうか。

企業にとって、従来、導入されていた確定給付年金制度(DBプラン)は、退職給付会計の対象となることから、積立不足を会社の債務として認識しなくてはなりませんでした。

このため、企業業績に影響を与えないように、退職給付債務が生じない確定拠出年金(DCプラン)の導入を促進しています。つまり、従業員へ運用リスクを移転しているということですね。

企業型DCプランの管理料は企業負担、ただし個人型確定拠出年金は、管理料(年間5,000円程度)がかかります。(サラリーマンが退職し、個人型に移管した場合も含みます)

この場合、原則60歳まで引き出すことができないのに、元本確保型商品で運用しては、利回りで管理料を確保できません。

また、企業型DCプランの掛け金は、企業が拠出するわけですが、これに合わせて自身の給与から一定の限度額内で上乗せして拠出することができます。

企業が支払う掛け金にマッチングして自身のお金を追加することができるというわけです。この掛け金は、全額所得控除することができますので、所得税率にもよりますが、大きな節税効果があります。

毎月の給与から老後のために貯蓄をしている人は、ぜひ使うべきだと思います。なんせ累進課税の所得税率リターンが得られるのと同じだからです。

累進課税が20%だったら、20%の投資リターンが得られるということです。大きなリターンですよね。

 

金融リテラシー

さて運用リスクが移転された側、つまり受給者の金融についての知識は、どうでしょうか。

金融庁では、2012年11月に有識者・関係省庁・関係団体をメンバーとする「金融経済教育研究会」を設置して今後の金融経済教育のあり方について検討を行い、2013 年4 月に研究会報告書を公表しました。

この報告書の中で、「生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシ-」が示されました。

この中で金融経済情勢に応じた金融商品選択については、以下の理解が求められています。

  • 金融商品(預貯金、株式、債券、投資信託、保険、外貨建て商品、各種ローン等)の基本的な内容および性質について、理解している
  • 景気の動向、金利の動き(上昇・低下)、インフレ・デフレ、為替の動き(円高・円安)が、金融商品(預貯金、株式、債券、投資信託、外貨建て商品、ローン4等)の価格、実質価値、金利(利回り)等に及ぼす影響について、理解している
  • さまざまな金融商品の性質、リスクとリターンを理解し、金融経済情勢を踏まえて自己責任の下で運用することができる

結構しんどいレベルですよね。学校教育にもカリキュラムとして組み込む必要があると思います。

しかし、こういう教育を受けていない中高年はどうしましょう。

これらのレベルをクリアーするには、かなりの経験と勉強が必要です。しかも市場は勉強したとおりには動きません。

 

確定拠出年金の商品の構成

選択できる商品ですが、大体下記のように分類されます。

  • 元本確保型商品
  • バランス型投資信託
  • 国内株式投資信託
  • 外国株式投資信託
  • 国内債券投資信託
  • 外国債券投資信託

また、運用スタイルとして、各インデックスに連動を目指すパッシブファンド、インデックスを上回るリターンを目指すアクティブファンドという種類にも分類できます。

上のグラフは、ある確定拠出プラン運営会社のラインナップの中から、各資産の代表的なインデックスファンドのリターンを累積化したものです。運用手数料などのコストは引かれています。

日本ではリーマンショック、海外ではグローバル・フィナンシャル・クライシス(GFC)と呼ばれる、大きなショックのあとの回復が見て取れます。長期的な運用が大事というわけです。

 

確定拠出年金の商品選択

では、大切な老後資金である確定拠出年金はどうのように運用していくのでしょうか?

まず運営会社の商品ラインナップの中から投資する商品を選びます。さらに選択した商品にどれだけ投資するか決める必要があります。

毎月の拠出金がある場合は、その拠出金も同様に商品と配分を決める必要があります。

さて商品の選択ですが、まったくの個人的な考えでは、極力運用コストの低いものを選択することがもっとも良いと思っています。その点でバランス型投信(資産配分も行う)は、組み入れられている投信の運用コストの他に外枠でも運用手数料を課しているので、真っ先に対象外となります。

次に、インデックスを上回るリターンを目指すアクティブファンドですが、前の金融庁長官の講演のように日本の大手運用会社には、なかなか本物のプロフェッショナルがいません。インデックスファンドに比して高い運用手数料に見合うパフォーマンスを期待することは、難しいと言わざる負えません。

注)運営会社によっては、素晴らしいアクティブファンドを採用しているところもあります。

森信親 金融庁長官の講演

そうすると残るのは、インデックスファンドのみとなります。下記の各資産を代表するインデックスファンドの選択が良いと思います。

  • 元本確保型商品(預金または保険)
  • 日本株式インデックスファンド
  • グローバル株式インデックスファンド
  • 新興国株式インデックスファンド
  • 日本債券インデックスファンド
  • グローバル債券インデックスファンド
  • 新興国債券インデックスファンド

 

確定拠出年金の資産配分

資産配分は、各個人の状況によって最適となる配分が異なります。年齢、資産の保有状況であったり、他の年金有無、個人の嗜好など様々なことが絡んできます。

また長期にわたる資産運用においては、長期投資、分散投資を原則としてあまり市場の変動に一喜一憂することがない運用が望ましいと考えてますが、市場・経済環境の変化または個人の状況の変化に応じて、変更させることが重要と思います。

では厚生労働大臣から寄託された年金積立金の管理と運用を行うGPIF(Government Pension Investment Fund 年金積立金管理運用独立行政法人)は、どのような配分を行っているでしょうか。

GPIFは基本となる配分比率を下記のように公表しています。

国内債券 35%
国内株式 25%
外国債券 15%
外国株式 25%
短期資産 0%

公的年金の平均的な年齢をあえて個人の年齢に例えると60歳くらいなのでしょうか。下記は、現在の私、オーバーフィフティが、現在想定している基本ポートフォリオです。

国内債券 20%
国内株式 25%
グローバル先進国債券 20%
グローバル先進国株式 25%
新興国債券 5%
新興国株式 5%
短期資産 0%

GPIFに比べると、株式55%と若干高め、国内45%と低めになっています。

現在の金利水準や株式のバリュエーション等を考慮した現在の資産配分は、下記のとおりです。(→の左の数字は基本ポートフォリオの数字です。)

国内債券 20%→10%
国内株式 25%→15%
グローバル先進国債券 20%→10%
グローバル先進国株式 25%→15%
新興国債券 5%→0%
新興国株式 5%→0%
短期資産 0%→50%

現在、かなりリスク回避的なものにしています。国内債券は、10年国債金利がほぼゼロとなってからは、配分を10%としていますし、株式の配分も前回のFOMC後に変更しました。

個人の主観によるものですから、あくまでもご参考に。今後も変更のたびにお伝えしていこうと思います。

森信親 金融庁長官の講演

4/7に日本証券アナリスト協会にて「資産運用ビジネスの新しい動きとそれに向けた戦略」における講演をされました。就任当初から金融機関に対して厳しい指導をされているなと思っていましたが、この講演の中で非常に同意できる部分や参考となる部分がありましたので、少しご紹介したいと思います。

「マルキールとエリスは、インデックス投信は、一般的に、アクティブ型投信よりもリターンは高いと指摘しています。米国では、企業のファンダメンタル価値を評価する投資家の層が厚いため、市場の効率化が進み、インデックス戦略が有効に機能していると言われていますが、10 年以上存続している日本の株式アクティブ型投信281本の過去10年間の平均リターンは信託報酬控除後で年率 1.4%であり、全体の約三分の一が信託報酬控除後のリターンがマイナスとなっていました。ちなみに、この 10 年間で日経平均株価は年率約3%上昇しており、インデックス投信が一般的にアクティブ型投信に比べリターンが高いとのマルキールとエリスの主張は、日本株投信についても当てはまるように思えます。」

アクティブ型の投信の多くが買い付け時に販売手数料を取っており、さらにインデックス型投信に劣後することになります。なかなか本物のアクティブ型投信を見つけるのは困難ですね。

「日本の投信運用会社の多くは販売会社等の系列会社となっています。投信の運用資産額でみると、実に 82%が、販売会社系列の投信運用会社により組成・運用されています。系列の投信運用会社は、販売会社のために、売れやすくかつ手数料を稼ぎやすい商品を作っているのではないかと思います。これまでの売れ筋商品の例をみても、ダブルデッカー等のテーマ型で複雑な投信が多く、長期保有に適さないものがほとんどです。こうした投信は、自ずと売買の回転率が高くなり、そのたびに販売手数料が金融機関に入る仕組みになっています。」

金融機関に資産運用の相談に行くってことは、鴨ネギのようなものなのですね。金融機関が真の意味での顧客本位のビジネスモデルに転換してほしいですが、顧客側もある程度の金融知識を持つことも大事ですね。

「日本で売れ筋商品となっているテーマ型投信は、売買のタイミングが重要な金融商品といえます。当然、安く買って高く売ることが基本となりますが、継続的に適切な売買のタイミングを見極めることが出来る投資家は、プロの中にも少ないはずです。先ほど申し上げたアクティブ型投信のパフォーマンスが、このことを裏付けています。個人が買う株式投信の売れ行きを過去に遡ってみても、株価のピークで株式投信が最も売れる傾向にあります。本年2月の我が国における純資産上位 10 本の投信をみてみると、これらの販売手数料の平均は 3.1%、信託報酬の平均は 1.5%となっています。世界的な低金利の中、こうした高いコストを上回るリターンをあげることは容易ではありません。日本の家計金融資産全体の運用による増加分が、過去 20 年間でプラス 19%と、米国のプラス 132%と比べてはるかに小さいことは、こうした投信の組成・販売のやり方も一因となっているのではないでしょうか。」

まったくその通りですね。テーマ型が戦略の大部分を投資家が選択するという意思決定を強いられている割に手数料が非常に高いと感じています。そのテーマに深い知識と市場の状況を理解している人以外はあまり触らない方が無難だと思います。

「皆様は、こうした状況をいつまでお続けになるつもりですか?投資商品を買っても思うようなリターンをあげられなかった顧客は、投資額を増やすものでしょうか?そうした商品を勧めた金融機関との取引をずっと続けるでしょうか?そうしたビジネスのやり方は国際的に競争力を高めていけるのでしょうか?」

森長官は本当に正論を述べられていると思います。金融庁のトップがこういった発言が出るということは、日本の金融機関は顧客本位に動いていないということを裏付けていますね。

「私の友人の欧米の運用者たちは、24 時間、365 日絶えず市場の動向を注視しており、自分の資産も賭けて投資判断を行っています。心も身体も擦り切れるくらいストレスが溜まる一方で、成功すれば大きな報酬を得ることが出来ます。このように、欧米の一流の投資運用業は、スポーツの世界と同様、究極の実力本位になっていると感じます。それと比べて日本はどうでしょうか。運用会社の社長が運用知識・経験に関係なく親会社の販売会社から歴代送り込まれたり、ポートフォリオ・マネージャーは運用者である前に○○金融グループの社員であるという意識が強く、運用成績を上げるより定年までいかに間違いをせず無事に勤めあげるかが優先されてはいないでしょうか。」

私も金融機関のファンドマネージャーの経験もあるので耳に痛いです。こうした状況を考えると、アクティブ型投信を選ぶこつは、ブティック型の資産運用会社が運用しているものを選ぶということでしょう。

森長官のさらなる今後の活躍に期待しています。

http://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20170407/01.pdf