米国の景気指標 - 自動車販売

FRBが3回目の利上げを実施し、今後年内2回の利上げを織り込んでいる金融市場ですが、トランプ政権の経済政策の進展に暗雲が漂う状況において、調整を余儀なくされています。

オバマケアの修正案の延期にみられるように、トランプ政権は共和党保守派との対立から、議会を説得して政策を通すことに成功しておりません。今後は減税に取り組むとのことですが、ムニューチン財務長官は8月くらいが山場と示唆しています。

しばらくは政策の空白期間が生じますが、この間に金利上昇の影響が懸念されます。

 米国3月自動車販売

調査会社オートデータによると、自動車各社が発表した3月の米販売台数は年率1662万台と市場予想の1730万台を下回りました。トランプ大統領就任前から減速するのではないかと見ていた自動車販売ですが、少なからず金利上昇の影響がでてきたようです。

FA関連と半導体製造装置関連をロング、自動車株をショートというポジションを保有しており、反対売買のタイミングをはかっていましたが、米自動車販売の状況や政策の進展の遅延から、まだしばらくは保有しようと思います。

米国第4四半期GDP確報値

米商務省が30日に発表した昨年第4四半期の米実質国内総生産(GDP)確定値は、上方修正されました。実質GDP確定値は前期比年率2.1%増と、速報値の1.9%増から上方修正され、予想中央値の2%を超えるものとなりました。

米国GDPで大きな部分を占める個人消費は3.5%増と、3%増から大きく修正されました。一方、輸出が下方、輸入は上方修正となり、純輸出は下方修正となりました。在庫は上方修正されました。

これを受けドル円レートは、111円近傍から111.80辺りまで上昇し、10年国債金利も2.38%から2.42%へと上昇しました。

米国のファンダメンタルは今のところ強いですね。個人消費の上振れは正直驚きですが、今後は、金利の上昇が住宅や自動車あたりに影響を少なからず与えると思います。今後はトランプ減税の進展がマーケットを支える鍵となるのではないでしょうか。

マーケットはしばらく為替、金利、株式ともボックス圏での動きとなってしまうのではないかと想定しています。

減税の財源である国境税(国境調整税)は、ドル高要因と考えられますので、具体的な内容が表面化した場合は、レンジを抜けるかもしれません。ムニューチン財務長官は、8月が目途と言っているので、まだ時間がかかるかもしれませんね。

政治家でないトランプ大統領の議会調整能力の成長を楽しみに見てみましょう。

オバマケア代替法案の延期が示すもの

共和党によるオバマケア代替法案は、23日の採決予定から24日に延期され、さらに24日の採決も見送られました。当然、民主党は大反対。共和党も下院の多数を占めているとはいえ、共和党内でも穏健派と右派と別れており、一筋縄ではいかないようです。

もともとオバマケア(医療改革法案)は無保険者を救うために無理やり、民間の保険会社に加入させるというものです。当然、そんなことをすれば保険料が増大し、割をくう富裕層からは評判が悪くなります。貧困層を救うという大義名分ですが、内容はお粗末なものです。共和党は廃止にしたいわけですが、もとに戻すには「忘れ去られた人々」を無視して無保険者にすることになりますから、撤廃ではなく手直しで対応するのですね。

しかし、共和党にはティーパーティーのような小さな政府を標榜する右派がいますので、この議員たちを説得する必要があるわけです。

さて問題は、このように上下両院で多数を握っていても、共和党政権で「減税・インフラ投資」といったトランプ政権の経済政策が進められるのか?ということです。

こうした疑念から、株式市場は下落し、為替はドル安に動いています。期待で動いてきた分、現実を見るにつけ修正をするということでしょう。

さすがトランプ大統領は、すぐさま次は減税法案だということで市場の期待をつないでいます。減税は共和党の共通理念なのでインフラ投資よりも進めやすいと思いますが、インフラ投資は、多額の予算が必要になるのでオバマケア代替法案よりも困難です。

なかなか危険な状況になってきました。FEDが空気を読まずにバックミラーだけを見て利上げに走り、民主党はとにかく反対と叫び、共和党は分裂したまま、あゆみ寄らないままだと、株式は下げるしかありません。その確率が上がっているように思います。

まだ、マクロ戦略は静観が正解なのですかね。「木を見て森を見ず」戦略で、日本株のロングショートのウエイトを上げて、しのいでいくことにします。

2017年3月FOMC

利上げ決定

大方の予想どおりFED(連邦準備制度)はFOMC会合で利上げを決定しました。2008年来で3回目の利上げとなります。

今回に関しては、事前のFEDのタカ派的な態度から、利上げに関しては織り込み済であり、市場は、結果と同時に発表される声明文に注目していました。

結果から言えば企業の投資活動に関していくらか強まったというように変更された程度で、大きくタカ派的になったとは言えませんでした。

ただし、今後の政策金利の予想推移をしましたドットプロットは、今年が3回となっており、変更がありませんでしたが、来年は2回から3回へと変化しよりタカ派的となったといえるでしょう。

一方で市場の反応ですが、米国長期金利は2.6%から2.5%と低下し、円ドルレートも113円台に下落しました。利上げが決定されたにも関わらず、市場は反対の反応を示しました。市場の予想はよりタカ派的なものを予想していたということですね。

昨年末以来、トランプ政権の経済政策を期待して、長期金利は大きく上昇し、円ドルレート、株式も上昇しました。大きく傾いた投資家のポジション調整が、今回の利上げのタイミングで行われたということだと思います。

トランプ政権の経済政策は間に合うのか?

FEDのトッドプロットに示されているように年内に2回の利上げが行なわれた場合、金利の上昇はどのような影響を経済に与えるでしょうか。

前期に金利上昇の影響で駆け込み需要が見られた住宅投資や、減速気味の自動車販売など、ローン金利の上昇を通じてマイナスの影響を与えると思います。

今後、ドル高がさらに進めば輸出もさらに鈍ることになるでしょう。これらを相殺させるのは、トランプ政策の目玉である減税と財政支出であるわけですが、想定よりも進捗していないと思われます。議会での決定事項ですので、大統領令のようにはいかないようですね。

これらの政策が進展しないまま、金利上昇の悪影響がでるような事態となれば、株式は調整せざるを得ないと思います。期待だけで株価が維持できるのは、それほど長い期間ではないでしょうね。

減税・財政出動の政策進展を期待するには、少しリスクがあるのではないでしょうか。今は静観しながら、政策が動き出すタイミングと円ドルレート、株式の水準を見ながら、エントリーのタイミングを探りたいと思います。

米国利上げは何回か?

にわかに3月FOMCでの利上げ観測が高まってきました。おそらく週末の雇用統計も、昨日のADP統計の結果から、利上げをサポートするものとなると予想します。

FEDは昨年まで利上げを匂わしながら、ハト派の態度を示し、市場予想を裏切る形で利上げを見送ってきました。昨年末にようやく2回目の利上げを行いました。何がトリガーだったのでしょうか? それはトランプ大統領の誕生とそれに伴う市場の反応でしょう。トランプ大統領の経済政策を織り込む形で市場金利が上昇したため、FEDは遅ればせながら利上げしたわけです。

今回は、タカ派的な発言を多発し、利上げの素地を作ってきました。FEDがイニシアチブを取り戻したかったのでしょう。さて市場は何回の利上げをおりこんでいるのでしょうか?下記はその期待値です。

0回: 1%

1回: 12%

2回: 31%

3回: 34%

4回: 17%

だいたい2-3回が、市場の織り込みですね。株式市場はこの利上げに耐えられるでしょうか。おそらく3回の利上げには耐えられないと考えています。

ただ、トランプ大統領は金利上昇を望んでいないのではないでしょうか。巨額のインフラ投資のためには、超長期の国債の発行が不可欠ですし、株式の暴落は避けたいでしょう。3月の利上げ以降のFED及びトランプ大統領の発言には注意していこうと思います。