2019年の米国の利上げ停止を予想して日経平均の空売りを8月2日に開始しましたが、その後、米国がトルコへの関税を強化したことによる通貨下落を背景として、マーケットもやや荒れ模様となっています。
当事国の米国の株価は、S&P500などは高値を更新するなど、気にする素振りをみせていませんが、為替が一時円高に振れるなどから、日経平均はやや弱含みました。
ただし本質的な原因はまったく別のところにあると考えています。これまでの記事を見ていただいてる方には、もうお分かりだと思いますが、米国の金融引き締め政策、特にバランスシート圧縮による資金の還流が、リスク資産から順次起こっていることが原因だと思います。
トルコリラ
トルコリラなどの新興国通貨はすでに大きく下落していました。今回の関税による下落はそれを加速させたにすぎません。通貨下落は、低貯蓄、経常赤字、高対外債務の通貨で起きやすいものです。南ア・ランド、インド・ルピー、アルゼンチン・ペソ、インドネシア・ルピアなどが代表的です。アルゼンチン>トルコ>南ア>インド>インドネシアといった順でしょうか?
トルコリラ(対米ドル)
通貨下落に対処するには、利上げによるインフレ抑制、IMFによる融資、国債の投資家救済策が主なものですが、トルコの独裁?になった大統領は、有効な手立てを何もしていません。くれぐれも値ごろ感だけで、トルコ通貨への投資は控えた方が賢明ですね。他の似たような通貨もまだ手出し無用と思っています。
地政学的には、トルコは要衝にあり、西側同盟国としてはトルコが、中ロへの接近することは非常に好ましくないと思います。
また、EUにとってはトルコは難民の関所となっていて、EU域内への過度な流入を抑えています。沈静化している難民問題に再び火をつけたくないドイツなどEU主要国にとってもトルコを西側にとどめたいと思われます。
これをたてにトルコの大統領は、トランプ大統領とチキンレースを行っているのでしょう。頑な大統領同士の争いの行方が興味深いです。互いのメンツを立てる方策を早急に立てるべきでしょう。
貿易戦争
8 月 23 日に、米国は対中制裁関税の第 2 弾を発動し、中国も負けずに同等の措置を取ることになりました。これにより互いに500億ドルの輸入に追加関税を課したことになります。さらに米国は来月、新たに 2000 億ドル分の追加関税を予定しています。
8 月 22-23 日には久しぶりに米中協議が行われましたが、いわゆる次官級協議なので、会合が持たれたことに意味があるでしょう。トランプ大統領としては、中間選挙に向けて攻めている印象としたいでしょうから、山場は中間選挙後にやってくるのではないでしょうか。問題は落としどころを互いに見つけられるかどうかでしょう。思いのほか政権外からも対中警戒論が高まってしまう可能性もあるためです。
結論としては、しばらく続くと見た方がいいということでしょうか。
さて、貿易戦争(保護貿易)は何をもたらすでしょうか。自国の産業が復活するなんてことは起こらないと思います。保護された産業は、本来生きながらえなかった産業です。より保護に甘えて生産性が伸びることはないでしょう。ゾンビ企業が増えて健全な企業の活力をそぐ結果になりますね。競争による生産性向上という米国経済最強の理由の一つが弱まることになるだけでしょう。
また貿易量が減り、通貨の切り下げが起こりやすくなります。製品の価格競争力を上げるにはもっとも簡単な方法です。
国境を越えたサプライチェーンシステムの変更を余儀なくされ、関税による価格上昇分を含めて価格に転嫁されていくことになります。つまり物価上昇が加速されます。
ろくなことがない政策のように思えますが、有権者への受けがいいということです。上記の問題点が露呈するには時間がかかりますし、中国株が下落する一方で、米国株が減税・規制緩和により、史上最高値近辺で保っているということで、貿易戦争は米国に有利という安心感があるためでしょう。
中国が知的財産権の保護を徹底し、特定産業への保護をやめることになれば、トランプ大統領万歳となるわけですが、中国が譲歩するとは思えないです。
上海総合指数
S&P500
2008年の金融危機から10年経過し、若いイケイケのファンドマネージャーが蔓延っていると推察してます。そろそろシャッフルが必要な時期でもあるでしょう。健全なマーケットには、多様性が必要です。
結局のところ、貿易戦争による象徴的な被害がくるまでは、貿易戦争の弊害を真剣に受け入れることはできないのではないでしょうか。そしてそれは、数年ということではなく数か月といったタームでしょう。思わぬインフレ率の上昇により、後追い的にFEDが利上げに追い込まれるかもしれません。
トランプ大統領
今のトランプ大統領の頭の中は中間選挙のことで占められていると思われます。対中貿易戦争、トルコに対する関税等々、まさに強いアメリカを有権者に見せる政策をとっています。TVで鍛えた視聴率男の面目躍如といったとこでしょう。
ここにきてロシア疑惑や不適切な交際をめぐるコーエン氏の司法取引は大きな痛手ではないでしょうか。弾劾という話まででてきました。
この劣勢を考慮すると、対外的な譲歩を示すという可能性はなくなりました。少なくとも中間選挙までは、強硬な姿勢を取り続けることになりそうです。
今後の方針
新興国通貨、新興国株式、先進国の小型株など順に値を下げてきています。残っているのは先進国株式くらいなものです。
現時点で色々なリスク要因がありますが、中でも対中貿易戦争が、FED利上げ停止へのトリガーとなる可能性が高いと思います。弱気を継続し、ポジションの積み増しを行います。
FEDが利上げを見送ったり、バランスシートの圧縮を緩めることが終了の条件ですが、はたして株式の下落なしに、これを行うことができるのか勝負です。もちろん、ロスカットは入れますけど。