久しぶりに国内政治について考えてみたいと思います。
9月28日午後、衆議院が解散されました。「10月10日公示、22日投票」の日程となり、「アベノミクス解散」2014年12月14日以来、約3年ぶりです。
安倍首相の解散の目的は「国難を突破するため国民の信を問う」ということで、過半数(233議席)を目標に掲げました。
株式市場は、海外市場の堅調さもあり、概ねポジティブな反応をみせましたが、これまでの経験則からのものと推察されます。
解散は総理大臣の伝家の宝刀であり、自身で適切なタイミングで行えることから、選挙後の経済政策の実行がスムーズに行くとの思惑から、株式市場は上がることが多いのです。
さて今回ですが、全体で10議席減って465議席になります。現状では、自民党が287議席、公明党が35議席、併せて322議席もあったわけですから、自公で過半数の233議席はさすがに割らないのではないでしょうか。それにしても安倍さんの目標設定がかなり低いという印象です。
希望の党に民進党、自由党、維新まで合流し、すさまじい希望の党ブームになる可能性はなきにしもあらずですけどね。
民進党、希望の党へ合流へ
今回の選挙でポジティブな点は、民進党の解党なのではないでしょうか。とにかく政策に反対しかせず、対案も出さない野党第一党に存在意義はないでしょう。政権交代の能力のない野党第一党がかわることは望ましいことだと思います。
一方で、希望の党ですが、なんだかよくわかりません。選挙公約は、「消費税増税凍結」「原発ゼロ」「憲法改正」になるんでしょうか。政党のスローガンは「寛容な改革派保守」「脱しがらみ政治」ということですが、なんだかボヤっとしてますよね。
第一、私には、小池さんは改革者のイメージがまったくないのです。あえて言えば、ポピュリズムに秀でた人物に見えます。
民進党の前原代表は「安倍政権を倒す」との一点で合流を決めたそうですが、まず民進党自体を政権交代可能な政党にすべきだったんじゃないでしょうか。もっとも民進党左派との調整が難しいので、こういう大ナタが必要だったのかもしれませんが。
議員のとっての希望の党、民衆にとっての失望の党にならないことを願います。
市場への影響は?
基本的には、日本の内需が長期的に弱いので、あくまで外需のドライバーであるアメリカ経済次第という考えは変わりません。日本の内需に与える影響ですが、やはり「消費増税」が大きいと思います。
小池新党の躍進で「消費増税見送り」の機運が高まるのであれば、株式はプラスに評価するのではないでしょうか。自民党の消費増税の使い道の変更は、全体でみればニュートラルではないでしょうか。
長期的な議論
仮に消費増税の用途変更や見送りが行われるようになった場合、どう考えればいいのでしょうか。
現在、日本のプライマリーバランス(財政の基礎的収支)はマイナスで、支出に収入が追い付かず、借金を重ね続けています。その借金も、結局、日銀が大量に買い込んでいるので金利はゼロ近辺に抑えられていて、非常に低金利で借金が続けられる状況です。
その状況の中で、収支を改善させるためや将来の社会保障費の増加に備え、収入を増やすために増税をしようとしていたわけです。ところが、これを新たな使い道に変更するということは、結局、新たな財政支出を伴う政策に、財政手立てをせずに、先に決まっていたところから、つけを回しているにすぎません。
ましてや増税を見送るというのは、低金利の状況にずっと甘えているということでしょうか。見送るのであれば、どうやってプライマリーバランスを均衡させるのかという方法も同時に提示する必要があると思います。
現在の国債残高が、国民一人当たり何百万円とかいって、メディアはあおりますが、一方で、資産も一人当たり何百万円も保有しているわけですから、残高の過多で大騒ぎすることはないと思います(でも限界はあります)。しかしながら、プライマリーバランスの赤字を減らすことは、今後の借金を考える上で非常に大事です。
日銀が長期金利をコントロールできているうちに、その方策を見出さないと、いつか金利の急上昇が起きるような気がします。