第3四半期米国GDP

米商務省が27日発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、前期比年率換算で3.0%増。

事前予想の2.6%を上回る結果となりましたが、米国10年債利回りは2.4%近傍まで若干低下しました。為替レートも、円ドルで114.2から113.7まで低下しました。在庫投資が支え、肝心の個人消費が伸び悩んでいることが嫌気されたようです。

ただし、全体としては堅調であり、個人消費も前四半期からは減速したものの、まずまずのペースで拡大していることから、12月のFOMCでの利上げの期待が高まるものと思います。

まずは、いつものように、内容を確認してみましょう。

個人消費

大きなウエイトを占める個人消費ですが、2.4%増と、前全四半期の3.3%から減速。ハリケーン被害による自動車の買い替えが貢献した模様。一方でサービスへの支出は大きく減速。賃金の伸びが限定的であるため、個人消費は大きな伸びは期待できない可能性もあります。

固定投資

設備投資は3.9%増。前期の6.7%からは減速しました。機器や知的財産への投資は前期並みの伸びでしたが、構造物への投資が減速しました。原油価格(WTI:54ドル)がじわじわ上昇していることから、石油関連の投資が今後は牽引するかもしれません。

一方で住宅に関しては、前期に引き続きマイナスの寄与となり、▲6.3%でした。引き続き、用地と熟練労働者がボトルネックとなっているようです。

輸出入

輸出は、2.3%増、輸入は、▲0.8%減。今期もドル安傾向であったことから、通貨安が輸出を後押ししたもと思われます。これにより3四半期連続のプラス寄与となりました。

政府支出

政府支出は▲0.1%のマイナス寄与。前期に引き続きマイナスとなりました。未だ政策の進展が見られないことから、大幅に寄与することは今のとことないと思われます。

まとめ

  • 米国GDPは予想を上回る伸びを示したが、国内最終需要の減速を受けて、金利低下、ドル安に動いた。
  • 在庫投資と純輸出を差し引いた国内最終需要は1.8%増と、前期の2.7%増から急減速した。
  • トランプ政権の景気刺激策の進展の遅れを考慮すると、個人消費や企業投資は比較的健闘しているとも考えられる。

9月のFOMCによりバランスシート圧縮というマネタリーベースの縮小が決定され、米国長期金利は徐々に上昇し、併せて為替レートもドル高に動いています。国内最終需要の減速を受けて一時的に金利低下、ドル安に反応しましたが、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めの姿勢は変わらないと考え、金利高、ドル高の動きは継続すると思います。

トランプ米大統領は、FRBの次期議長の指名について、ジェローム・パウエルFRB理事を指名する方向に傾いているということで、現在の金融政策スタンスが維持されるとの観測が広がっています。やはり大統領は、なるべく低金利を維持したいのでしょう。

急激な金利上昇が抑えられるということは、株式も最後の局面として暫く走る可能性もありますが、この水準からの買いはあくまで短期勝負になると思っています。

ドルポジションは継続保有。一旦落とした株式ポジションについては、悩ましいですが、慎重な姿勢を継続したいと思います。

衆議院選挙 結果

与党圧勝

まだ未開票があり、4議席が未定ですが、概ね選挙の結果が判明しました。
終わってみれば、野党第一党であった民進党の選挙前分裂により、与党が圧勝する結果となりました。

これで第四次安倍内閣がスタートすることになります。自民党にとっては笑いの止まらない結果でしょうね。多数の立候補者を擁立した希望の党の人気が急速にしぼみ、かわりにあまり候補者をたてなかった立憲民主党が人気を集める結果となったわけで、選挙戦は非常に楽ではなかったかと推測します。

また、意外に票を集めた立憲民主党の人気も、そう長くはないと想像します。義理人情で集めた部分が多いと思いますので、今後の参院民進党、希望の党、無所属議員の間で行われる民進党の遺産争いを見て熱がさめる可能性があると思います。

上昇する株式市場

さて市場への影響ですが、与党圧勝を受けて上昇しております。海外市場の高値更新、円安と外部環境の好転もあり、買い安心感が広がっているようです。

米国におけるバランスシート圧縮開始で株価の調整を予想した私にとっては、困った状況です。米国長期金利は、2.39%と警戒ラインの2.7%までは幾分余地がありますので、しばらくは高値圏での推移が続く可能性が高いですね。

次はFRB議長決定

しかしながら、米国の金利上昇トレンドは継続するものと考えていますので、この水準から株式の見方を変える必要はないと考えています。問題は次期FRB議長が誰になるかだと思います。トランプ大統領は、近日中に決定するという見通しを示しています。

候補は、イエレン元議長、ケビン・ウォルシュ元理事、ジョン・テイラー教授、ジェローム・パウエル理事、元ゴールドマンサックスのゲイリー・コーン氏あたりでしょうか。ハト派になるかタカ派になるかで、為替相場、株式市場への影響が大きく変わってくると思っています。

FRB議長の決定まで、現在の相場観は維持していこうと思います。

解散総選挙

久しぶりに国内政治について考えてみたいと思います。

9月28日午後、衆議院が解散されました。「10月10日公示、22日投票」の日程となり、「アベノミクス解散」2014年12月14日以来、約3年ぶりです。

安倍首相の解散の目的は「国難を突破するため国民の信を問う」ということで、過半数(233議席)を目標に掲げました。

株式市場は、海外市場の堅調さもあり、概ねポジティブな反応をみせましたが、これまでの経験則からのものと推察されます。

解散は総理大臣の伝家の宝刀であり、自身で適切なタイミングで行えることから、選挙後の経済政策の実行がスムーズに行くとの思惑から、株式市場は上がることが多いのです。

さて今回ですが、全体で10議席減って465議席になります。現状では、自民党が287議席、公明党が35議席、併せて322議席もあったわけですから、自公で過半数の233議席はさすがに割らないのではないでしょうか。それにしても安倍さんの目標設定がかなり低いという印象です。

希望の党に民進党、自由党、維新まで合流し、すさまじい希望の党ブームになる可能性はなきにしもあらずですけどね。

民進党、希望の党へ合流へ

今回の選挙でポジティブな点は、民進党の解党なのではないでしょうか。とにかく政策に反対しかせず、対案も出さない野党第一党に存在意義はないでしょう。政権交代の能力のない野党第一党がかわることは望ましいことだと思います。

一方で、希望の党ですが、なんだかよくわかりません。選挙公約は、「消費税増税凍結」「原発ゼロ」「憲法改正」になるんでしょうか。政党のスローガンは「寛容な改革派保守」「脱しがらみ政治」ということですが、なんだかボヤっとしてますよね。

第一、私には、小池さんは改革者のイメージがまったくないのです。あえて言えば、ポピュリズムに秀でた人物に見えます。

民進党の前原代表は「安倍政権を倒す」との一点で合流を決めたそうですが、まず民進党自体を政権交代可能な政党にすべきだったんじゃないでしょうか。もっとも民進党左派との調整が難しいので、こういう大ナタが必要だったのかもしれませんが。

議員のとっての希望の党、民衆にとっての失望の党にならないことを願います。

市場への影響は?

基本的には、日本の内需が長期的に弱いので、あくまで外需のドライバーであるアメリカ経済次第という考えは変わりません。日本の内需に与える影響ですが、やはり「消費増税」が大きいと思います。

小池新党の躍進で「消費増税見送り」の機運が高まるのであれば、株式はプラスに評価するのではないでしょうか。自民党の消費増税の使い道の変更は、全体でみればニュートラルではないでしょうか。

長期的な議論

仮に消費増税の用途変更や見送りが行われるようになった場合、どう考えればいいのでしょうか。

現在、日本のプライマリーバランス(財政の基礎的収支)はマイナスで、支出に収入が追い付かず、借金を重ね続けています。その借金も、結局、日銀が大量に買い込んでいるので金利はゼロ近辺に抑えられていて、非常に低金利で借金が続けられる状況です。

その状況の中で、収支を改善させるためや将来の社会保障費の増加に備え、収入を増やすために増税をしようとしていたわけです。ところが、これを新たな使い道に変更するということは、結局、新たな財政支出を伴う政策に、財政手立てをせずに、先に決まっていたところから、つけを回しているにすぎません。

ましてや増税を見送るというのは、低金利の状況にずっと甘えているということでしょうか。見送るのであれば、どうやってプライマリーバランスを均衡させるのかという方法も同時に提示する必要があると思います。

現在の国債残高が、国民一人当たり何百万円とかいって、メディアはあおりますが、一方で、資産も一人当たり何百万円も保有しているわけですから、残高の過多で大騒ぎすることはないと思います(でも限界はあります)。しかしながら、プライマリーバランスの赤字を減らすことは、今後の借金を考える上で非常に大事です。

日銀が長期金利をコントロールできているうちに、その方策を見出さないと、いつか金利の急上昇が起きるような気がします。