第2四半期米国GDP

米商務省が28日発表した第2四半期GDP(季節調整済み、年率)速報値は、前期比年率換算で前期比2.6%増。事前予想は2.7%と前四半期の1.4%から拡大する見通しでした。

予想をわずかに下回る結果となりましたが、2%を超える水準であり、FRBの金融正常化の道筋を阻害するものではないと思いますが、為替はドル安に反応しました。最近の市場の注目点であるインフレに関して、GDPデフレータが1.0%と事前予想1.3%を下回ったことから、米債利回りが低下、このためにドル売りとなりました。

今後、バランスシート圧縮という金融正常化に向けて前進する一方、インフレ率の低下は利上げに関して懸念材料であるということが明確になってきたと思います。

まずは、いつものように、内容を確認してみましょう。

個人消費

大きなウエイトを占める個人消費ですが、2.8%増と、市場予想どおり。前四半期の1.9%増から伸びが加速しました。ただし、前期高い伸びを示した雇用コストの伸びは緩慢で、労働市場が完全雇用に向かう中でも、賃金の伸びは限定的であるため、今後、個人消費は減速する可能性もあります。

固定投資

設備投資は5.2%増。前期の7.2%からは減速しました。原油価格が回復し、40ドル超の水準を保っていることから、石油関連投資が牽引しているものと思いますが、原油価格上昇の鈍化とともに減速したと考えられます。

一方で住宅に関しては、前期の11.1%から大きく減速し、▲6.8%。しかしこれは、用地と熟練労働者がボトルネックとなっているようで、需要が弱いわけではない様子。

輸出入

輸出は、4.1%増、輸入は、2.1%増。今期もドル安傾向であったことから、通貨安が輸出を後押ししたもと思われます。これにより、2四半期連続のプラス寄与となりました。

政府支出

政府支出は0.7%のプラス寄与。前期のマイナスから転換しましたが、政策の進展が見られないことから、大幅に寄与することは今のとことないと思われます。

まとめ

  • 米国GDPは高い伸びを示し、前期の急減速が一時的であったことを示した。しかし弱い雇用コストやデフレーターにより、金利は低下し、ドル安に動いた。
  • トランプ政権の政治的行き詰まりから、景気刺激策に対して悲観的な見方があるものの、個人消費や企業投資には今のところ影響が出ていない。

イエレン議長の巧みな対話と慎重な行動により、バランスシート圧縮というマネタリーベースの縮小が迫っているにも関わらず、長期金利は上昇していません。むしろ弱いインフレに着目している状況です。

金融正常化(バランスシート圧縮)は、長期金利の上昇をもたらすと考えて、株式の売却、ドルへの逃避を行いましたが、バランスシート圧縮は市場に無視された格好です。確かにインフレ圧力は弱いと思われますので、年内の利上げは見送られるかもしれませんが、いつまでも無視できるとも思えません。

ドルポジションはもう少し様子を見たいと思います。株式についても慎重な姿勢を継続したいと思います。

 

2017年7月FOMC

7月26日、FED(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利のフェデラルファンド (FF)金利誘導目標について1-1.25%のレンジで据え置き、バランスシートの縮小を「比較的早期に」開始すると発表しました。一方で、インフレ目標値の2%を下回っている度合いについて、今回の声明から「やや」という表現が取り除かれました。

これを受けて市場では、「ハト派的」ととらえてドル安に動きました。バランスシート圧縮の開始時期に関して「9月」とか明確な時期を避け、「比較的早期」としたことで、政策の実行にバッファーをもうけたことが「ハト派」的と解釈されたようです。逆にインフレに関しては、文言の変更は「インフレの持続的アンダーシュートに懸念を強めていると受け取ったようです。

インフレに関しては、事前に議会証言の内容から予想されたものなので、さらに「ハト派」的とは思えないですが、私は市場の解釈を読めていないですね。

反省しなければなりませんが、FED自体は、バランスシートの縮小を宣言し、これを早期に行うと言っているわけですから、ここは少し当局をリスペクトしてドルの保有を継続したいと思います。

7月FOMC見通し

アメリカの金融政策は現在、金融引き締めプロセスの最中であるにも関わらず、トランプ政権によるオバマケア改廃の再とん挫、弱いインフレの継続懸念により、ドルは弱含んでいます。

7月25-26日にFOMC会合が開催されますが、今回の会合で利上げはあるのでしょうか? 前回FOMCでの将来の利上げを示すドットチャートは、内1-2回の利上げを見込んでいましたが、イエレン議長の議会証言でのハト派な態度、弱い経済指標から、今回の利上げは見送られると予想します。金利先物市場による織り込まれている利上げ確率は、数パーセントとなっており、市場も今回の利上げはないと考えています。

従って、今回の会合でもバランスシート縮小に関して更なる言及があるのかが注目点です。前回の会合では、バランスシート圧縮を年内にスタートさせるということが示されました。

バランスシート圧縮とは、FEDが保有する債券の残高を段階的に縮小させるというものです。通貨安、株高をもたらしてきた量的緩和の逆を始めるということになります。

米国バランスシート圧縮下での投資戦略

ところが市場は最近のドル安傾向にみるように、このバランスシート圧縮に関して無視しているように思います。もしバランスシート圧縮に関して前向きな姿勢が再び示された場合には、ドル高に反応することになると思います。

来年退任するイエレン議長が、最後の仕事として金利正常化に道筋をつけるという思惑から、個人的には、たとえ、年内利上げを見送ったとしてもバランスシート圧縮に着手するという風に考えています。前回FOMC後にポジションをとったドル円ロングをどうするかを考える上でも、このバランスシート圧縮に関する言及に注目しています。

オバマケア改廃再び

18日、米上院共和党による医療保険制度改革(オバマケア)改廃への取り組みは、新たに党内から2人の造反が出たことで頓挫しました。

減税、インフラ投資といったトランプ政権が掲げる成長戦略の実施についても不透明感が高まったことで、トランプ政権の政策実現能力に再び疑問が生じ、金利低下、ドルが売られる展開となりました。

共和党のマコネル上院院内総務は、代替法案の可決が見込めなくなったことで、まずオバマケアを廃止する法案の採決に踏み切る構えを示しましたが、これも反対する議員が出てきたことで困難な状況にあります。オバマケアの廃案は共和党の悲願であるにもかかわらず、こうした状況になるのは本当に問題だと思います。

先日のイエレン議長の議会証言でのハト派な態度、弱い物価指数、小売り売上高と米ドルにとってはネガティブな状況となっています。一方で、株式市場は利上げの遅延期待から高値を更新しています。株式が上昇しているということは、トランプ政権の政策実現能力のなさについては、株式市場参加者は織り込んでるということなのでしょうか。

米国のバランスシート圧縮に伴う、金融引き締めを警戒して、株のポジションを落としたわけですが、本当に売り場は難しいですね。今回も早く下車してしまったようです。ドルもFOMC後の水準近くまで下がってきました。ほぼ買コストの水準です。

2017年6月FOMC

米国バランスシート圧縮下での投資戦略

ただし、弱いインフレ指標、強い株価の組み合わせには違和感があります。またFRBは、年内の利上げを見送るかもしれませんが、バランスシート圧縮は進めるのではないかと思っていますので、現状のポジションを維持していきたいと思います。

 

イエレンFRB議長の議会証言

イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は14日、上院銀行委員会で半期に一度の証言を行いました。他の連銀理事たちが、利上げ・バランスシート圧縮に前向きなタカ派的な発言をしていましたので、バランスをとることが非常に得意なイエレン議長はどのような発言をするのか注目しておりました。

最近の経済指標は、ISM製造業景況感指、ISM非製造業景況感指数と米雇用統計の非農業部門雇用者数などは良好な結果を示しましたが、賃金の伸びやインフレ率、個人消費などが伸び悩みを示しています。

こうした状況を踏まえて、「米国のインフレ率が目標を下回り続けている状況下で当局は政策引き締めを急がない」とハト派的な姿勢を見せて、特に株式市場関係者を安心させることに成功したようです。

為替は、対円で112円台まで下落、長期債金利も、2.3%前半まで低下。株式市場は高値を更新しました。

やはりイエレン議長は、バランサーでしたね。今後も市場にショックを与えないように、うまく発言をコントロールしながら、金融正常化を進めていくことを目指すのでしょう。

しかしながら、9年間続いてきた金融緩和から、インフレ率と経済成長を最適なバランスで金融引き締めをするという、非常に困難な仕事を市場と対話しながら行うというのは、非常に困難なミッションであるように思えます。明確に金融引き締めへと舵を切っているわけですから、注意深く運用していくことが大事だと思っています。ドルの安いところをとらえてドル買ポジションを増やしていこうと思っています。